乳がんが局所再発した70代後半の女性の夫が相談 今後の治療方針は?
今回の「がん電話相談」は、乳がんが局所再発した70代後半の女性の夫から、今後の治療方針についての相談です。がん研有明病院の院長補佐で、乳腺内科部長の高野利実医師が答えます。
高野利実医師──平成29年、左乳がんと診断され、左乳房の全摘と、わきの下のリンパ節郭清術(かくせいじゅつ)を受けました。がんは4センチ、リンパ節転移が1個あり、ホルモン受容体陽性、HER2陰性で、組織学的分類は悪性度が高いグレード3でした。ステージはⅡBとのことです。
「術後にはどのような治療を行いましたか」
──抗がん剤のドセタキセル(商品名タキソテール)と、シクロホスファミド(エンドキサン)の2剤を併用する、TC療法を4回受けました。その後、ホルモン療法として、アロマターゼ阻害薬のレトロゾール(フェマーラ)を7年服用していましたが、令和6年12月、定期検診で左わきの下に新たなリンパ節転移が見つかりました。
根治を目指すことになる
「治療は?」
──今年1月に腋窩(えきか)リンパ節を切除し、術後のホルモン療法として、フルベストラント(フェソロデックス)の筋肉注射を開始し、分子標的薬のアベマシクリブ(ベージニオ)の内服も併用しました。担当医からは根治の可能性があると言われています。
「わきの下のリンパ節転移は『遠隔転移』ではなく、『局所再発』ですので、早期がんと同様、根治を目指すことになります。早期がんの術後治療で、アベマシクリブを使用する対象は、リンパ節転移があり、①リンパ節転移の個数が4個以上②腫瘍の大きさが5センチ以上③組織学的分類がグレード3─のいずれかです」
「(今回の相談は)局所再発後ですので、厳密には術後アベマシクリブの対象ではないのですが、③が該当すると考えて使用されたようです。ただ、フルベストラントは早期がんの術後に使う薬ではありませんので、進行がんに準じた選択ともいえます」
「いい状態で長生きを」
──投与から2週間後に口内炎と全身に湿疹が出て、アベマシクリブは中止しました。本人も副作用がきつかったみたいで、もう飲みたくないと言っています。
「そうなんですね。副作用が強く出たのであれば、無理をしないほうがよいと思います。若い方であれば、根治の可能性が少しでも高くなるように、代わりの治療を考えるかもしれませんが、失礼ながら、年齢を考慮すると、今後、乳がんの再発が運命を左右する可能性は低いですので、ホルモン療法だけを続けて、乳がんの再発のことはあまり気にしないのがよさそうです」
──でも治療が不完全になるのが心配です。
「大事なのは、治療することではなく、いい状態で長生きすることです。その目標のためにうまく使うのがお薬で、目標に逆行してしまうなら、使わないほうがよいです。治療を中心に考えるのではなく、『これからどうやって過ごしていきたいか』を考えるとよいと思います。これからも仲良く過ごしてくださいね」
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「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。20日は相談の受け付けを休みます。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。