トランプ氏が書いたとされるエプスティーン元被告への手紙、米下院委が公開
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アメリカの連邦下院監視委員会は8日、未成年女性への性的虐待で有罪とされた資産家ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に2003年に贈られた「バースデー・ブック」のコピーを公開した。その中には、ドナルド・トランプ大統領のサインが入っているとされる手紙もあり、大きな関心を集めている。
公開されたのは、元被告の50歳の誕生日に贈られた「バースデー・ブック」や、元被告が30年近く使っていた住所録、元被告の遺書、元被告とフロリダ州南部地区連邦検事局との間の2007年の不起訴合意書など多数の文書。
元被告の遺産を管理する弁護士らは、下院監視委員会から先月、提出を命じられたことを受け、関連文書を提出していた。
今回の公開に先立ち、同委員会の野党・民主党の委員らは8日、トランプ氏が描いたとされる女性の体の絵が入った、署名つきの手紙をXで公開した。
それには数行の文章が書かれており、最後の行には、「誕生日おめでとう――そして、毎日がまた新たな素晴らしい秘密であるように」と記されていた。
同委員会の民主党委員らは、この手紙の画像と共に、「トランプは2人が共有した『素晴らしい秘密』について語っている。彼は何を隠しているのか? ファイルを公開せよ!」と投稿した。
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これを受け、ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、「トランプ大統領の弁護団は積極的に訴訟対応を続けていく」と説明。「ずっと言ってきたように、トランプ大統領がこの絵を描いておらず、署名もしていないのは明らかだ」と付け加えた。
ホワイトハウスのテイラー・ブドウィッチ副首席補佐官は、トランプ氏の署名の画像数枚をXに投稿。「ニューズ・コープが小切手帳を開く時が来た。これは彼のサインではない。名誉毀損だ!」と書いた。
トランプ氏はこの件について、まだコメントしていない。
トランプ氏は、「これは私の言葉ではないし、私の話し方でもない。それに私は絵は描かない」としており、WSJ側を相手に訴訟を起こしている。同紙の記者、発行人、経営陣に総額100億ドル(約1兆4700億円)の損害賠償を求めており、被告にはニューズ・コーポレーションのオーナーのルーパート・マードック氏も含んでいる。
WSJを発行するダウ・ジョーンズは提訴された当時、「私たちの報道の厳密さと正確さに完全なる自信をもっている」とコメントした。
この日、監視委員会が公開した「バースデー・ブック」は238ページからなるもので、エプスティーン元被告の共犯者で元恋人のギレイン・マックスウェル受刑者がまとめた。イギリス人の同受刑者は、少女らの性的人身取引をエプスティーン元被告と共謀したとして、2021年に有罪とされた。
「最初の50年」と題されたこのスクラップブックには、元被告と交流のあった著名な政治家やビジネスリーダーなどさまざまな人からの手紙が含まれている。
その中には、ビル・クリントン元大統領からとみられるものもあった。その手紙は、元被告の「子どものような好奇心」に言及している。
クリントン氏の広報担当はこれまで、同氏と元被告は当時、知り合いだったが、犯罪についてクリントン氏は何も知らなかったと説明している。BBCはクリントン財団とクリントン氏の弁護士に、今回公開された文書についてコメントを求めている。
また、イギリスのピーター・マンデルソン駐米大使からの誕生日メッセージも含まれている。その中で大使は、元被告を「親友」と呼んでいる。
大使の報道官はBBCに、大使は以前から、元被告に紹介されたことを非常に後悔していると明言していると述べた。
英王室のヨーク公アンドリュー王子の名前も、この「バースデー・ブック」の中で少し触れられている。身元が明らかにされていない女性の手紙には、この女性が元被告を通じて、アンドリュー王子、クリントン氏、トランプ氏、そのほか何人かの著名人に会ったと書かれている。
この女性の手紙には、「バッキンガム宮殿の私室を見た」、「イングランド女王の玉座に座った」とも書かれている。
アンドリュー王子は、エプスティーン元被告の問題に絡んで疑惑が持ち上がり、公務を離れたが、不正行為を否定している。
下院監視委員会のジェイムズ・コーマー委員長(共和党)は、今回の文書公開にあたり声明を発表。民主党の委員らが、「(提出された)文書から都合のいい部分だけを抜き取り、情報を政治利用している」と非難した。
一方、同委員会のロバート・ガルシア委員(民主党)は、「トランプ大統領はエプスティーン関連の捜査をでたらめだとし、彼の誕生日の手紙は存在しないと主張していた」、「しかし今、ドナルド・トランプはうそをついていたことと、真実を隠すためにできる限りのことをしていることがわかっている」と述べた。
トランプ氏とエプスティーン元被告は長年、交友関係にあった。だが、フロリダにあるトランプ氏のリゾート施設マール・ア・ラーゴから元被告が従業員を引き抜いたことで、2000年代初めに両者は不仲になったと、トランプ氏は説明している。