上場した「PayPay」が初の決算発表 その中身は

 PayPayは5月7日、2026年3月期(FY2025)の通期決算を発表した。米Nasdaq上場後初の通期決算で、営業収益は前期比27%増の3807億円、調整後EBITDAは同89%増の1111億円となった。中山一郎CEOは同日のカンファレンスコールで、PayPayカードとPayPay銀行の機能を統合した「一体型カード」の発行計画も明らかにした。

 決済セグメントのGMV 19.0兆円の内訳は、PayPayアプリ経由(PayPay残高とPayPayクレジット)が約15.5兆円、物理カードのPayPayカードが約3.5兆円となった。アプリ経由のうち2割弱はECなどのオンライン決済で、残る約12.7兆円が店頭でのコード決済に当たる。経済産業省によると2025年の国内コード決済市場は16.6兆円で、PayPayの店頭分はその7割超を単独で占める計算となる。決済回数ベースでも国内キャッシュレス決済全体の約20%を占めている。

PayPayは決済回数シェアで国内キャッシュレス決済全体の約20%を占めている

 中山CEOは今期(FY2026)の成長投資の柱として、PayPayカードとPayPay銀行の機能を1枚に統合した一体型カードを発行する方針を示した。発行とマーケティングの両面で投資し、アクティブユーザーや会員数の増加につなげる考えだ。効果は今期後半から出てくるとの見通しを示した。

 PayPayはeKYC(本人確認)情報を活用した口座開設の簡便化を「eKYCパスポート」と呼び、銀行や証券への展開の起点に据えている。eKYC済みユーザー数は2026年3月末時点で4000万人を超え、登録ユーザー7300万人の半数以上を占めた。一体型カードは、物理カードでクロスセル戦略を進める施策となる。

 PayPayは6月2日、ポイント還元プログラム「PayPayステップ」の対象をeKYC済みユーザーに限定する。eKYC未完了のユーザーはポイント付与や付与率アップのカウント対象から外れる。条件変更は2026年2月に公表済みだ。

 中山CEOは「eKYC済みユーザーがGMVの大半を占めるため売上への悪影響はない」と説明した。一方、影近航CFOはポイント費用の削減効果を「最低限のみ業績予想に織り込んでいる」と述べた。FY2026のアップサイド要因として残る形だ。

Q4の主なトピックには「eKYC済ユーザー基盤の拡大」が掲げられた

 PayPayは6月2日から順次、「PayPayカード ゴールド」(年会費1万1000円)の特典を変更する。決済額に対して常時+0.5%のポイントを上乗せ付与していた特典を廃止し、年間100万円以上の利用で1万1000ポイントを付与する「年間利用特典」に切り替える。基本付与の1.0%は維持し、条件達成で年会費が実質無料となる。

 中山CEOは改定の狙いを「ゴールドカードの発行枚数に課題を感じていた。その課題を克服できるのがこのプラン」と説明し、ソフトバンクと相談して新プランを設計したと述べた。発行枚数の伸長を見込む。

 高額決済者には実質的な還元率の低下となる側面もある。プラチナカードなど上位カードの投入について中山CEOは「現時点では具体的なプランはない」と述べた。今後の数字を見て判断する方針だ。

 営業収益は前期比27%増の3807億円、第4四半期単独でも前年同期比30%増の1022億円となった。決済セグメントは同25%増の3112億円、金融サービスセグメントは同35%増の724億円となった。

FY2025通期の決算ハイライト。営業収益は前期比27%増、調整後EBITDAは同89%増となった

 調整後EBITDAは前期比89%増の1111億円、マージンは29%まで拡大した。純利益は同201%増の1178億円となったが、PayPayにおける繰延税金資産の計上に伴う一過性の税効果575億円を含む。

 決済額に対する手数料収入の比率であるテイクレートは1.65%で前期比0.05ポイント上昇した。第4四半期のオンライン決済比率上昇が主因となった。

Q4の決済セグメントGMVは前年同期比23%増の5.0兆円となり、テイクレートは1.65%に上昇した

 PayPayカードの有効発行枚数は2026年3月末時点で1686万枚に達した。2025年の純増数290万枚は、国内クレジットカード業界トップクラスの水準だ。金融関連残高は前期比23%増の5350億円となった。

PayPayカードの有効発行枚数は1686万枚に達した

 PayPay証券は連結子会社化以降初の通期営業黒字を達成した。3月のNasdaq上場と同時に、PayPay株約130億円分を国内リテール向けに販売したことも寄与した。証券口座数は前期比26%増の173万口座となった。

 PayPay銀行の預金残高は前期比23%増の2.3兆円、貸出残高は住宅ローンを中心に同34%増の1.24兆円となった。預金口座数は4月に1000万口座を突破した。同行は4月1日付で代表取締役社長に谷田智昭氏が就任し、田鎖智人氏は取締役副社長に異動した。谷田氏はPayPayカードで純増数を業界首位に押し上げた実績がある。

PayPay銀行の貸出残高は住宅ローンを中心に前年比34%増の1.24兆円となった

 2027年3月期(FY2026)の通期見通しは、営業収益4540億〜4620億円、調整後EBITDA 1345億〜1405億円としている。営業収益で前期比20%程度の増加、調整後EBITDAマージンは30%程度を見込む。

FY2026の通期業績予想は営業収益4540億〜4620億円、調整後EBITDAは1345億〜1405億円としている

 中山CEOはAI活用にも言及した。カスタマーサポート業務の自動化により「100分の1のコストになる可能性がある」とし、与信判断の高度化や不正検知への適用も進める考えを示した。

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