日本サッカー史上初のFIFA会長選へ…W杯スキャンダルへの不信感で決断、田嶋幸三氏「勝つ負けるより大切なことがある」
田嶋幸三名誉会長
日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三名誉会長が5日、東京都内で記者会見を行い、来年3月18日に行われる次回の国際サッカー連盟(FIFA)会長選挙に立候補する意向を表明した。日本からの立候補は史上初めて。4選を目指すジャンニ・インファンティーノ現会長の対立候補に名乗りを挙げた。
田嶋名誉会長によると、出馬を決めた最大の理由は今夏の北中米W杯における2つのスキャンダルだった。一つは試合中に一発退場処分を下されたアメリカ代表のFWフォラリン・バログンの出場停止に執行猶予の判断が下され、次戦出場が可能となったこと。もう一つは開催地アメリカと政治的対立関係にあるイラン代表の入国が制限されたことだ。いずれの決定にもインファンティーノ会長の後押しがあったと報じられている。
田嶋名誉会長はこれらのスキャンダルに対して「ビジネスとかお金とか、そういう時代にスポーツだけはしっかりとインテグリティを守ってやっていかないといけない。それ以外の力が加わって、ピッチの中が影響されたことを非常に残念に思っていた」と心境を吐露。田嶋名誉会長自身、10月15日のFIFAカウンシルでインファンティーノ会長に対し、2つの問題に関する説明を直接求めたという。 バログンの出場停止猶予については「間違った決断だったのではないか」と訴えたという田嶋名誉会長。「規律委員会が法律的なものについてアンタッチャブル(不可侵)で、インデペンディエント(独立した立場)だと言っているが、一般の人から見ればFIFAの決定になる。法律的にタッチしちゃいけない、タッチできないことはわかるが、あの決断が本当に正しかったのかということはしっかり伝えるべきではないか」と問うたという。 またイラン代表の入国制限については「本来であればホストカントリーのオブリゲーション(義務)として守らないといけないこと」と指摘。アメリカでは2029年にクラブW杯が予定され、2031年の女子W杯の開催地にも立候補している中、「ホストカントリーのオブリゲーションをきちんと果たせるというサインをもらっているのか否か」との確認を求めたという。 こうした田嶋名誉会長の質問に対し、インファンティーノ会長からは「まだ返事が来ていない」とのこと。そのインファンティーノ会長は次回選挙の立候補を表明しており、立候補期限も11月18日に迫っている中、田嶋名誉会長は「いろんな質問に答えないで彼だけが残るということではフェアじゃないと思った。それで自分が出ようという意思につながった」と説明。さらに「今のところインファンティーノ会長に対抗する方が見えない。自分は選挙をしないで彼がまたそのまま続けるというのが最も良くないことで、FIFAが本当に自浄作用があるのかということが試されていると思い、決断した」と出馬の動機を明かした。 FIFA会長選出馬に向けての公約は「しっかりとしたガバナンスがあり、フェアで公正なFIFAに戻るべきだ」というシンプルな主張だ。田嶋名誉会長は「もちろんお金を稼ぐことは大事。そのお金をしっかりと211の協会に配ること。それもみんなで決めていくこと。誰のお金でもなく、みんなのお金なんだということで決めていくこと」と述べ、さらに委員会機能の回復、大陸連盟との関係構築の必要性も訴えた。 FIFA会長選への出馬に向けては、単一協会からの推薦状と、5協会以上のサポートレターが求められる。日本サッカー協会(JFA)は5日、理事会で田嶋名誉会長を推薦することを満場一致で決議。残るは4協会以上のサポートレターが要件となり、田嶋名誉会長は今後、理事を務めるAFC加盟国を中心にサポートする国を模索していく構えだ。 田嶋名誉会長は会長選の展望について「勝算ということに関してはまだ達していないと思っている。ただ、まず手を挙げてその場に乗ることが大切。日本はこういう気持ちでいるんだということを宮本(恒靖)会長と一緒に外に対して発信できるというのは日本協会にとって良いと思っている。出るからには勝ちたいと思っているが、勝つ負けるよりももっと大切なことがあると思っている」と力を込めた。 日本からの会長選立候補者は初めて。日本サッカー界にとっても一大転機となる。田嶋名誉会長は「歴代の会長が日本サッカーの骨となる誠実で、健全で、高潔性のあるサッカーを守ってきた。それによって(JFA会長)選挙に勝てなかったこともあった。それをしっかり守っているからこそ、日本ってそういう国ですねという一定のリスペクトを受けてやってきた。それをしっかりと引き継いでいかなければいけないと考えた。もう一つ、日本代表チームが森保監督を始め、アンダー代表、女子、みんな世界一を目指すと公言してやっている。そう公言してやっているところでフェアに保たれる戦いが必要だと思う。ピッチの外での戦いもしていく必要があるし、自分はそこに関わっていきたいと考えている」と思いを語った。5日、JFAの宮本恒靖会長も田嶋名誉会長への支持を表明。これまでの立場についても「AFCと歩調を合わせるのが一つの立ち位置と思っていると話したが、ジャンニ・インファンティーノを支持するということを言ったわけではないというのは明確にしておきたい」と強調した。
(取材・文 竹内達也)