欧州司法裁、マルタのゴールデンパスポートは違法と判断
欧州連合(EU)の最高裁判所にあたる欧州司法裁判所は29日、ロシアや中東の財閥、有名人、スポーツ選手など富裕層外国人に市民権を与えるマルタの「ゴールデンパスポート」制度が、EUの市民権に関する規則に違反すると判断した。
欧州司法裁は、EU加盟国は「事前に定められた支払いや投資と引き換えに、国籍、つまり欧州市民権を付与することはできない。これは本質的に、国籍の取得を単なる商業取引に等しいものにする」と指摘した。
マルタの投資家市民権プログラムでは、最低60万ユーロ(約9700万円)の寄付金を支払うことで、同国で居住し働くための市民権を取得できる。必要な投資には住宅の購入も含まれ、任意での寄付も奨励されている。EU加盟国として、マルタのパスポート保有者は域内27カ国での居住と就労の自由が認められることになる。
2022年9月、「事前に定められた支払いを条件にEU市民権を付与する」ことは「EUの規則に定められた誠実な協力の原則と相いれない」として、欧州委がマルタのこの制度に対し、法的異議を申し立てた。
欧州の一部の国々は、欧州債務危機の際に外国投資を誘致するため居住権の販売をし始め、人気を集めた。
ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、ハンガリーも近年、富裕層にEU内の移動の自由を与える同様のプログラムを始めていた。だが、この措置はEUの執行機関、欧州委員会から批判を浴びた。欧州委は、現金と市民権を交換する政策が、EUに資金洗浄や安全保障上のリスクをもたらすと主張している。
トランスペアレンシー・インターナショナルのマイラ・マルティーニ最高経営責任者(CEO)は「数多くの事例が、こうした制度が世界中の腐敗した人物や、EU内の疑わしい個人に安全な避難場所を提供してきたことを示している」と指摘し、「判決は、マルタだけでなく他の加盟国に対しても、EU市民権の販売を抑止することになる」と述べた。
一方、米国のトランプ大統領はこのところ、裕福な外国人投資家を米国に誘致する動きを強化している。いわゆる「ゴールドカード」ビザ制度では、500万ドル(約7億1400万円)を支払う投資家に、居住権と市民権取得の道を提供する。ラトニック米商務長官は、3月に1日で1000件を超えるビザを販売したとしている。
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原題:EU Bans Sale of ‘Golden Passports’ as Trump Opens Doors (1) (抜粋)