逮捕された13歳少年を移民当局が連行、説明ないまま州外の施設へ移送 米マサチューセッツ州
マサチューセッツ州エバレットで暮らしていたアルトゥール君(13)。移民税関捜査局(ICE)によって勾留された。/Courtesy Josiele Berto
(CNN) 米マサチューセッツ州ボストン郊外で13歳の少年が警察に逮捕され、直後に移民税関捜査局(ICE)に連行された。その後何の説明もないまま州外の施設に移され、家族は不安を募らせている。
ボストン郊外のエバレットに住むジョジエリ・ベルトさんに警察から電話があったのは今月9日。息子のアルトゥール君が逮捕されたので、迎えに来るようにという電話だった。
ベルトさんが警察に出向いたところ、1時間以上待たされた末に、アルトゥール君は移民税関捜査局(ICE)に連行されたと告げられた。「息子はどこへ連れて行かれたのかと尋ねても、教えられないと言われた」とベルトさんは訴える。ブラジル出身のベルトさん一家は2021年に米国へ入国し、亡命申請の手続き中。
今はただ、アルトゥール君からの電話だけを待っているというベルトさん。「息子と話はできても、そこがどんな場所で、一体何が起きているのか、当局は何も説明してくれない」とCNNに語った。
アルトゥール君が逮捕された理由が分かったのは14日だった。
エバレットのカルロ・デマリア市長は同日の記者会見で、10代の少年が先週逮捕されたと発表。この少年が「公立学校で別の少年を脅迫した」という情報がエバレット警察に寄せられたと語った。
警察はこの少年の逮捕についてICEには連絡しなかったとデマリア市長は話しているが、ICEが少年のことを知った経緯や連行した経緯については言葉を濁した。
警察のポール・ストロング署長は記者会見で「私の知る限り、未成年が(エバレット警察からICEに連行されたのは)今回が初めて」と述べた。
裁判所が勾留理由の説明を命令
ベルトさんから相談を受けた弁護士はマサチューセッツ州の連邦裁判所に訴えを起こした。裁判所は政府に対し、14日夜までにアルトゥール君の勾留を正当化する理由を説明するよう求め、そうでなければ保釈の機会を与えるよう指示した。
15日午後現在、この説明があったのかどうかは分かっていない。
ベルトさんは当初、アルトゥール君からの電話でしか居場所を確認できなかった。電話はマサチューセッツ州とバージニア州の移民施設からかかってきた。
「息子は家からも家族からも離れたことがなかったので激しく泣いていた」とベルトさんは言う。
アルトゥール君は足を骨折してまだ完治していないため、最近は学校を休んでいたという。9日はバスで友人の家へ行くとおばに告げ、バス停で逮捕された。
メディアの取材に対し、米国土安全保障省のトリシア・マクラフリン報道官はX(旧ツイッター)への投稿でこの事件に言及。アルトゥール君について「凶器を使った暴行、傷害、不正侵入、器物損壊などの前歴があり、公共の安全を脅かした」「逮捕された時は銃とナイフを所持していた」と書き込んだ。
デマリア市長はナイフの存在を確認し、逮捕がなければ「学校で悲劇が起きていたかもしれない」と述べる一方で、少年が銃は持っていなかったことを確認した。
ベルトさんは、マクラフリン報道官が言及した「前科」についてはコメントしなかった。弁護士は「訴えられた内容に関係なく、誰もが法に基づく適正手続きを受ける権利がある」「未成年であればなおさらだ」と強調している。
ICEが移民を拘束して家族にも弁護士にも知らせないまま州外の施設に移す事例は過去にもあったが、いずれも成人だった。ベルトさん側の弁護士は「子どものケースは初めて」「私が担当した中では最年少」としている。