パウエルFRB議長、利下げに含み-9月実施示唆も1回限りの可能性

米金融当局者の中で政策金利の道筋を巡り意見が割れる中、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が22日の講演で9月利下げの可能性に扉を開いたことで、利下げ推進派が優勢となりつつある。

  連邦公開市場委員会(FOMC)の次回会合は9月16、17両日に開催されるが、その後の金融政策の方向性を巡る議論はそれ以前から始まるとみられる。ただ、9月会合の後すぐに追加利下げが続く保証はない。

  サンタンデールUSキャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏によれば、当局者の間には複数回の利下げを求める声も聞かれる一方で、1回にとどめるべきとの姿勢や、利下げそのものに反対する立場を示す向きもいる。

  スタンリー氏は「9月会合で発せられるメッセージは『1回利下げして様子を見る』というものになるだろう」と予測する。

ジャクソンホール会合に出席したパウエルFRB議長(右)と植田日銀総裁、ラガルドECB総裁、ベイリー英中銀総裁

  パウエル議長はこの日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催された年次シンポジウムで講演し、労働市場のリスクの高まりに言及。「リスクのバランスが変化しており、政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と述べた。

  ホワイトハウスから利下げ圧力が続く中で、待望の利下げのシグナルを発した格好となった。トランプ大統領は「遅過ぎる」と一蹴したが、金融市場ではパウエル議長の発言を好感し、株価が急伸し、米国債利回りは低下した。

  だが、パウエル議長の発言は利下げの保証には程遠いもので、持続的なインフレリスクにも言及した。関税による消費者物価への影響は「今や鮮明」であり、「関税による物価上昇圧力がより持続的なインフレ力学をもたらす可能性もある」との警戒感も示した。

  ドイツ銀行の米国チーフエコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は「リスクは両面にあり、FOMC内で意見が割れていることを考えると、緩やかな利下げ路線が最も容易な道筋だ」と指摘。政策当局は9月にそのプロセスを開始する可能性があり、「その後の政策判断は経済指標に依存する形になる」との見方を示した。

  米金融当局は昨年秋以降に計1ポイントの利下げを実施した後、今年に入ってからは政策金利を据え置いている。関税がインフレを再燃させる懸念があったためで、インフレ率はいまだFRBの2%目標を上回っている。

  一方で、労働市場の減速リスクが鮮明になるにつれ、9月の利下げに対する賛同が広がりつつある。

  パウエル議長は発言の中で具体的な時期には言及しなかったが、労働市場については供給と需要の両面が鈍化しており、「奇妙な均衡状態にある」と指摘。また、関税が最終的にインフレにどのような影響を与えるかは、まだまったく定まっていないとしながらも、明確な答えが出る前に金利の調整が必要になる可能性を示唆した。

  来年5月にFRB議長の任期満了を迎えるパウエル氏は、政策の適切な方向性を巡り意見の分かれる政策当局者らの間でコンセンサスを形成しなければならない。6 月に公表されたFOMC予測では、政策当局者の大半が年内に少なくとも 2 回の利下げを見込んでいた。しかし、年内の利下げ回数をゼロと予想した当局者も、少数派ながら相当数に上った。

原題:Powell’s Jackson Hole Signal on Rates Seen As Good for One Cut(抜粋)

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