ジャッジよりも手ごわい? WBC連覇狙う侍ジャパンに立ちはだかる大リーグの独自ルール 鬼筆のスポ魂
米大リーグ、ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(32)が2026年3月に開催される第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に初出場し、米国代表の主将を務めると発表された。大会連覇を目指す日本代表「侍ジャパン」にとっては〝本気印〟の米国代表は最強の敵だが、ジャッジのバットよりも難敵になり得る存在がある。
米国の威信かけ
ヤンキースの主砲、ジャッジは14日(日本時間15日)、現地の専門局MLBネットワークの番組に出演。前回大会決勝で米国が日本に敗れた瞬間を「つらかった」と振り返った上で、「自分も加わりたいと心から思っていた。代表として国を背負って戦えると思うと楽しみだ」とWBC出場への意欲を語った。
2大会続けて指揮を執るマーク・デローサ監督(50)は、前回大会で主将を務めたエンゼルスのマイク・トラウト外野手(33)にも連絡。ドジャースで大谷翔平投手(30)と同僚のムーキー・ベッツ内野手(32)も出場意欲を示しており、前回大会の借りを返すため、米国が威信をかけて来年のWBCに臨んでくる。
ピッチクロックへの対応は
連覇を目指す侍ジャパンは井端弘和監督(49)の下、大谷らを招集し、3月5日から東京ドームで行われる予選C組を勝ち抜いて、米フロリダ州マイアミでの決勝で凱歌(がいか)を上げたいところだが、行く手に立ち塞がるのは米国代表らライバルばかりではない。
WBC米国代表の主将に指名され、デローサ監督(右)とともに記者会見するヤンキースのジャッジ(竹濱江利子通信員撮影)次回のWBCでは大リーグのルールがそのまま採用される。日本のプロ野球と大きく違う点は「ピッチクロック」「ベースサイズ拡大」「守備のシフト制限」などだ。特にピッチクロックは前回大会では採用されておらず、日本の投手陣が対応できるかどうかが大きなポイントとなる。
投球間に時間制限を設けるピッチクロックは、試合時間の短縮を目的として23年から大リーグで導入されている。走者なしの場合、投手はボールを受け取ってから15秒以内、走者がいる場合は18秒以内に投球動作を開始しなければならない。違反すればボールが宣告される。また、打者と打者の間は30秒以内と定められ、30秒以内に投球動作を開始しないとワンボールが宣告される。打者も制限時間が残り8秒の時点で投手に注意を向けないと、ストライクを宣告される。
強化試合で採用へ
侍ジャパンは今後、11月に韓国との強化試合2試合、来年2月には宮崎で強化試合6試合が計画されており、そこで大リーグのルールを採用し、適応する考え。しかし、8試合程度で日本の投手陣はピッチクロックに対応することができるのか。
14年ぶり3度目のWBC制覇を果たし、捕手の中村悠平(手前)と抱き合って喜びを爆発させる日本代表「侍ジャパン」の大谷翔平=2023年3月21日、ローンデポ・パーク(水島啓輔撮影)現在行われているプロ野球では、投手がサイン交換に時間をかけ過ぎ、打者がじれて打席を外すシーンをよく見かける。ゆったりしたリズムに慣れている日本の投手にとっては、ピッチクロックへの適応の方が、ジャッジやトラウトよりも難敵になるかもしれない。
ドジャースの山本由伸や佐々木朗希もピッチクロックに注意を払って投球しているが、制限時間オーバーでボールを宣告されるシーンも。対策が不十分だと、思わぬ場面で足をすくわれる心配がある。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。