ビットコインの財務活用、先駆的企業が約2兆円相当の含み益計上へ

マイケル・セイラー氏が率いるストラテジー(旧マイクロストラテジー)は、4-6月(第2四半期)に約140億ドル(約2兆円)の含み益を計上する見通しとなった。ビットコインを財務戦略に取り入れた先駆的企業である同社は、アマゾン・ドット・コムやJPモルガン・チェースといった大企業の仲間入りを果たす可能性がある。

  本業であるソフトウエア事業の収益は約1億1280万ドルにとどまると、ブルームバーグ・ニュースがまとめたアナリスト調査では予想されている。ストラテジーは自社最高益を達成する見通しとなったが、これまで同社には厳しい目が向けられていた。

  著名な空売り投資家のジム・チャノス氏はセイラー氏のモデルを「金融のたわごと」と批判し、ストラテジー株を空売りしてビットコインを買う裁定取引を推奨した。これに対してセイラー氏は、チャノス氏は「理解が足りない」と反論している。

  ベンチマーク・キャピタルのアナリスト、マーク・パーマー氏は、「セイラー氏は4年余りも批判されながら、市場全体やS&P500種株価指数を大きくしのぐパフォーマンスを実現した」と述べた。セイラー氏が2020年にビットコイン購入を始めて以降、ストラテジー株は3300%余り上昇し、S&P500種の約115%高を大幅に上回っている。

  1-3月(第1四半期)はビットコインの12%下落により、ストラテジーは42億ドルの損失を計上した。同四半期に保有ビットコインの価値を時価評価する新会計手法を採用し、未実現の損益も業績に反映されるようになったためだ。

  同社は3月末時点で52万8185ビットコインを保有しており、約435億ドル相当の価値があった。ブルームバーグ・ニュースの試算によれば、その後の30%上昇と追加購入で含み益はさらに6億ドル余り増加した。同社は8月に第2四半期の業績を発表する。同社の広報担当者にコメントを求めたが、返信はなかった。

  第1四半期の損失を受けて、投資家からは複数の集団訴訟が起こされた。ストラテジー幹部による虚偽の説明と誤解を招く発言・文書が、株主に損害を与えたというのがその主張だ。同社は「これらの主張に対して断固反論する」と証券取引委員会(SEC)に文書を提出した。

  企業向けソフトウエア会社を、ビットコインをレバレッジとする企業の代表格へと変貌させたセイラー氏は、ウォール街と暗号資産(仮想通貨)業界の両方で注目されている。ファルコンXのトレーダー、ラヴィ・ドーシ氏は「世界的なインフレ環境で適切な富の保存手段が求められている中、バランスシートにビットコインを保有することの価値が理解されるようになった」と述べた。

  ビットコインを購入するための資金調達も手段が多様化し、普通株や転換社債、優先株を使った複雑な戦略が展開されるようになった。セイラー氏の戦略を模倣する企業も増え、オンラインゲームのシャープリンク・ゲーミングはイーサリアム購入を増やしている。ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズは6月30日、財務にイーサリアムを組み入れるため、2億5000万ドルを私募形式で調達した。

  「これらの企業が成功するかどうかは、まだ分からない」とパーマー氏は述べた。

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原題:Strategy Set to Join Wall Street Elite With $14 Billion Windfall(抜粋)

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