スペースX追撃狙う新興企業の株価が急伸-創業者がビリオネアに
ニュージーランド(NZ)の起業家ピーター・ベック氏(47)は若い頃、自作のジェットパックを背負い、ローラースケートを履いて道路を爆走していた。
ベック氏はその後、ロケット開発のスタートアップ企業ロケット・ラボUSAを創業。米ナスダックに上場した同社の株価は今や急伸している。記録的な売上高見通しや一連のロケット打ち上げ成功、トランプ次期米政権の宇宙政策に対する投資家の楽観的観測が追い風となった。
ロケット・ラボ株は2024年に入り300%余り上昇。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、ベック氏の個人資産は13億ドル(約2000億円)に膨らんだ。保有する同社株10.2%と株式売却で得た約1億ドルが資産の主な源泉だ。
それでもベック氏の資産は、宇宙産業で競合するスペースXのイーロン・マスク氏やブルーオリジンのジェフ・ベゾス氏にはるかに及ばない。世界一の富豪マスク氏の資産は3760億ドル、2位のベゾス氏は2460億ドルに上る。
ベック氏はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「ロケット・ラボがベゾス氏やマスク氏のような資本を持つことは決してないだろう」とした上で、同社は巨額の資金ではなくイノベーションと効率性に注力していくと説明した。
ロケット・ラボは米国とNZで打ち上げを行っており、年初来のミッション回数は米企業ではスペースXに次いで多い。しかし、実際のミッション回数はロケット・ラボの13回に対し、スペースXは120回超と、両社の差が如実に表れている。
しかし、ベック氏は全く気後れしておらず、ロケット・ラボはより大型のロケット「ニュートロン」の開発を進めている。打ち上げは25年の予定で、スペースXに真っ向から挑むことになる。
「ロケット・ラボのバリュエーションはスペースXの4%にも満たないが、われわれが計画を遂行し続ける限り、両社の差は引き続き縮まっていくだろう」とベック氏はみている。
ベック氏は、ライバルのマスク氏がトランプ次期大統領の耳目を集めているにもかかわらず、ロケット・ラボが次期政権下でも好調さを維持すると確信している。
新たな政権が効率性を重視することは、ロケット・ラボにとって有益だとベック氏は指摘。「われわれは終わることも、満足することも決してなく、ひたすら成長し続けていく。それは私のDNAの一部であると同時に、当社のDNAの一部でもある」と語った。
原題:SpaceX Rival’s 340% Surge Propels CEO Beck to Billionaire Club(抜粋)