マスク氏とトランプ氏の蜜月関係、中東政府系ファンドには好機

米大統領選の数週間前、アブダビ投資庁のシェイク・タフヌーン・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン会長は、資産家イーロン・マスク氏と面会していた。タフヌーン氏はアラブ首長国連邦(UAE)の最も影響力ある首長家メンバーの1人だ。

  選挙結果が明らかになって数日後には、サウジアラビアの政府系ファンド(SWF)パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)のヤセル・ルマイヤン総裁が、トランプ次期米大統領とマスク氏と並んで写っている写真が公開された。

  トランプ氏側近にマスク氏が加わったことは、タフヌーン氏やルマイヤン氏など中東金融界のトップ層にとって大きな好機となる。事情に詳しい複数の関係者が見解を示した。

  トランプ氏は第1次政権で、中東の産油国と米国との関係強化を率いてきた。トランプ氏は当時、すでにこうした国々で強力なビジネスの関係を築いていた。

  機密情報に関わることを理由に関係者が匿名を条件に語ったところによると、中東のファンドはマスク氏関与を巡り、米国でのディール獲得の増加につながるとの楽観的な見方を強めている。特にバイデン政権がアクセスを厳しく制限してきたテクノロジーや人工知能(AI)といったセンシティブな分野に注目している。

  背景には、中東の政府系ファンドとマスク氏とのつながりがある。マスク氏は第2次トランプ政権で新設される「政府効率化省(DOGE)」の共同運営に当たる予定。

  ルマイヤン氏率いる資産規模9250億ドル(約143兆円)のPIFは、マスク氏が立ち上げた新興企業xAIの資金調達ラウンドに出資者として参加した実績がある。事情に詳しい関係者によると、PIFのこの投資は公表されていない。またカタール投資庁(QIA)もxAIの最近の資金調達ラウンドへの参加が報じられている。

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  こうしたファンドの多くはトランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏とも関わりがある。ブルームバーグ・ニュースは同氏のプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社アフィニティ・パートナーズがPIFから20億ドルを調達し、カタールやUAEの政府系ファンドからも投資を受けたと報じている。

  アラブ湾岸諸国研究所(ワシントン)の上級研究員ロバート・モギエルニツキ氏は「ディールメーキングを愛する実業家としてのトランプ大統領の評判は、この地域の人々の熱狂を容易に引き起こす」と指摘。「トランプ氏のブランドは湾岸地域ではなじみがある。トランプ氏の実業家としての側面は、湾岸諸国の多くの政府が近年採用するビジネス優先の外交政策アプローチと見事に調和する」と述べた。

  石油資源が豊富な中東の政府系ファンドは計約4兆ドルに上る資産を管理する。中東諸国は原油収入への依存を減らすため、テクノロジーの専門性を強化しAIの世界的ハブになろうとしている。

原題:Musk-Trump Alliance Has Gulf Wealth Funds Eyeing More US Deals(抜粋)

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