名鉄が広見線を一部廃止 物価高と老朽化が招くローカル線廃止第3波
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名古屋鉄道は3日、岐阜県内を走る広見線の新可児駅―御嵩駅について2029年4月1日に廃止する方針を示した。同県では第三セクターの長良川鉄道も一部廃止が取り沙汰される。ローカル線で物価高と老朽化により、第3の廃線の波が押し寄せている。
ローカル線廃線の波はこれまで、1960〜70年代のモータリゼーションの進行、2000年の法改正があった。今回はこれに続くとみられる。
「存続に向けて取り組んできた経緯を考えると、非常に残念な結果ではある」。3日に取材に応じた御嵩町の渡辺幸伸町長はこう語った。代替の交通手段としてはバスが有力で、名鉄の牧野英紀常務執行役員は「名鉄グループとして可能な限り協力したい」と説明した。
御嵩町と可児市、八百津町は自治体が鉄道設備の維持費を負担する「みなし上下分離方式」による存続を目指して名鉄と協議していた。しかし5月に人口減少で継続的な利用者増が見込めないことや、物価や人件費の高騰を考慮して協議を終了していた。
自治体は28年度末までの運行を求めており、名鉄が応えた。渡辺町長は代替交通の準備期間として「有効利用しながら、次の交通体系を作っていく」との考えだ。
同区間は07年に名鉄が単独の路線維持は困難であると表明。10年度から御嵩町は年間7000万円、可児市が3000万円を支援してきた。鉄道を利用するのは沿線に立地する高校に通う学生が多く、住民全体で見ると利用率は低い。収支改善が見込めない上、老朽化に対応する設備投資も必要となり維持は難しい状況だった。
23年12月に沿線自治体が住民向けに実施したアンケートで新可児駅―御嵩駅の利用頻度を尋ねたところ「年に数回程度」が29%、「利用していない」が60%となった。廃止となれば鉄道アクセス自体が遠のく御嵩町に限っても、44%が年に数回、40%が利用していないと回答した。
住民の移動では自動車が浸透しており、アンケートでは全体の90%が「普段から自動車を運転している」と回答。同区間は並行して国道21号とそのバイパスが通っており、東海環状自動車道の可児御嵩インターチェンジも整備されている。
車社会の進展はこれまでも岐阜県の鉄道網の縮小を招いてきた。1967年に岐阜市議会は「路面の高度利用を阻害し、都市美観をそこなうこともあり、近代都市として好ましい姿ではない」として名鉄に路面電車の廃止を求める決議をした。
東濃鉄道の駄知線は豪雨被害もあり74年に廃止、78年に笠原線も廃止した。同年には北恵那鉄道も廃止している。
2000年に鉄道事業法が改正され、路線廃止のハードルが下がると名鉄は01年に八百津線、谷汲線を廃止。05年には路面電車の名鉄岐阜市内線、06年には同県北部で、第三セクターの神岡鉄道が運営していた神岡線が廃止された。
地方のローカル線では設備の老朽化と人口減少が続き、労務費と物価の上昇は経営圧迫要因になる。岐阜県でも60〜70年代、00年代に続いてローカル線の廃線が相次ぐ「第3波」が生じる可能性がある。
広見線の新可児駅から5キロメートルほどの美濃太田駅は、第三セクター長良川鉄道の発着駅だ。
長良川鉄道の社長を務める関市の山下清司市長は25年3月に「大変に老朽化しており、維持にはさらに経費がかかる。補助金が減る状況にはならないのでは」と指摘。「ただちに廃線という状況にはない」とした上で「一部地域の廃線を視野に入れる」と説明した。
その後に北端の北濃から美濃白鳥、郡上八幡までの廃止案が浮上したが、現在は全線の活性化を優先する方針を掲げる。
国の交付金活用に向けた動きも進む。上場企業の名鉄に比べ、第三セクターはより公共性が強い。利用者が少ない一方で維持費用がかさむ長良川鉄道をどこまで支えるべきか、判断は難しい。
広見線では長年、地元自治体や住民による利用促進施策がとられてきたが形勢を逆転させるだけの乗客増は果たせなかった。
長良川鉄道は観光鉄道「ながら」の導入など運行主体による企画がヒットした実績がある。26年3月期に4億7000万円の経常赤字を計上した長良川鉄道の全線維持には、さらなるアイデアが求められそうだ。
(赤堀弘樹)
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