走る美食、鉄道経営の救世主に 「レストラン列車」相次ぎ登場 南海は100年ぶり復活

地元食材などを使った料理を車内で楽しめる南海電気鉄道の「GRAN天空」=和歌山県内(柿平博文撮影)

沿線人口の減少で国内の鉄道経営が曲がり角を迎えるなか、主要各社が美食と車窓からの絶景を楽しめる「レストラン列車」を相次ぎ投入している。大幅な値上げが難しい一般列車に対し、独自の料金設定で高単価を狙える上、インバウンド(訪日客)やシニア層の観光の受け皿としても期待がかかる。新車製造を抑え、既存車両を大改造する「低投資・高リターン」のビジネスモデルが鉄道を支える新たな収益源となりつつある。

「美食が誘う、優雅な列車旅」

そうしたキャッチ・フレーズで近畿日本鉄道が近鉄名古屋-賢島(三重県志摩市)間で11月1日にデビューさせるのは、レストラン列車「Les Saveurs(レ・サヴール)志摩」。志摩観光ホテル(同市)の総料理長が監修する本格フレンチコースを車内で出すのが特徴だ。料金は最高3万6000円。

大阪・難波と高野山を結んで南海電気鉄道が約100年ぶりの復活となるレストラン列車として4月に運行を開始した「GRAN(グラン)天空」では、地元食材などを使った沿線の名店グルメが味わえる。8月までの累計乗客数は2万4000人を突破した。

鉄道各社は定期客の先細りに頭を悩ませるが、通勤・通学客らが使う一般列車の運賃改定は国の認可などが必要で、機動的な値上げは難しい。そこで活路を見いだしているのが、運賃に食事代や特別車両料金をパッケージ化したレストラン列車だ。規制に縛られない自由な価格戦略が新たな収益源となっている。

JR東日本は2013年から八戸-久慈駅間で三陸の海を眺めながら東北の食材を楽しめる「TOHOKU EMOTION」を走らせている。西武鉄道は16年から「旅するレストラン 52席の至福」を運行。秩父など沿線の食材を活用したコース料理を季節替わりで提供している。このうち11月21日に運行を企画する「長瀞(ながとろ)紅葉トレイン」は1人2万7000円。

11月から運行する近畿日本鉄道の「Les Saveurs志摩」=南雲都撮影

高単価を支えるのが、時間とお金に余裕のあるシニアと、円安を追い風に来日する訪日客だ。

JTBは「個性豊かな車両や、車窓から眺める風景はバス移動とは一味違う」と説明。旅行ジャーナリストの村上英子氏は「短時間の移動でも十分に旅情を味わえる。地方の風土や食を体験したい訪日客の志向とも合致する」と指摘する。

通勤車両など改装して費用抑える

投資リスクを抑える車両戦略も、ブームを後押しする。運行中のレストラン列車の多くは、定期運行を終えた古い車両や余剰となった特急車両の骨組みを再利用した改造車だ。「グラン天空」の前身は通勤車両で、内装の装飾に沿線ゆかりの工芸品などを使用。「レ・サヴール志摩」は特急列車を改造し、大理石調のテーブル席に革張りのいすなどで高級感を出した。

国内の観光列車を巡る集客競争は、今後さらに激化する見通しだ。現状はシニア層が中心だが、持続的な市場成長に向けてはターゲットの拡大が急務となる。

村上氏は「若年層にもハネムーン利用など十分な需要がある。より上質な体験づくりが重要で、混雑を避けて楽しめる仕組みが伸びる」と分析し、個室化やプライベート感の重視なども生き残りの鍵になるとした。(田村慶子)

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