エヌビディア決算発表、ステーブルコイン、ヒト型ロボット【フィリップ証券】
日経平均株価はソフトバンクグループ<9984>を牽引役として8/19に4万3876円まで上昇後、年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長の講演を8/22に控えて調整色が窺われる。米国利下げ期待が後退するのではないかとの懸念とともに、米政府が半導体産業を強化する目的の「CHIPS法」に関連して主要半導体メーカーの株式を取得して経営に介入するのではないかとの不安、および「ChatGPT」で知られるOpenAIのアルトマンCEOがAI(人工知能)投資バブルの可能性を示唆したことも背景にある。一方、8/27に米半導体エヌビディア<NVDA>の5-7月期決算発表を控えていることから、週明け8/25以降にはAIに関する半導体やデータセンター関連インフラ銘柄が再び注目される可能性もある。
米国で米ドルの価値に1対1で連動する暗号資産であるステーブルコインに対応するための規制枠組みである「GENIUS法」が7/18に成立。日本でも8/18、フィンテック企業のJPYCが「資金移動業者」に登録され、国内初の日本円で1対1で連動するステーブルコイン(電子決済手段)を発行可能な資金移動業者となった。これを受けて、JPYCに出資しているアステリア<3853>や、ステーブルコイン決済送金基盤の構築を目指す電算システムホールディングス<4072>の株価が高騰した。ブロックチェーンと呼ばれる基盤に取引を記録することで、国際送金も含めて銀行を介さず、小口取引であっても低コストで迅速に決済できるなど金融の仕組みを根本から変える可能性を持っている。
中国・北京市で8/15-17の3日間、ヒト型ロボットの世界スポーツ大会が開催された。米モルガン・スタンレーは2月、ヒト型ロボットの開発や生産に関わる世界の上場企業100社のリストを「The Humanoid 100」にまとめた。同社はヒト型ロボット産業を以下の3つのセグメントに分類した。①ブレイン:AI(人工知能)チップ、ソフトウェア、半導体など、ロボットの知能を支える技術を提供する企業。②ボディ:アクチュエータ、センサー、バッテリーなど、ロボットの物理的構造に関わるコンポーネントを提供する企業。③インテグレーター:ロボット全体の設計や統合を担う企業である。100社の中には、ソニーグループ<6758>、日本精工<6471>、ファナック<6954>、安川電機<6506>、三菱電機<6503>、キーエンス<6861>、ハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>などの日本企業も含まれている。中国企業がコスト競争力で勝るものの、日本企業は、減速機、ベアリングなどの高精度部品で世界的な競争力を持つ点、産業用ロボットのノウハウ、ヒト型ロボットの知能や環境認識に関するAIとセンサーの技術で強みを持っている点に特徴がある。関節部品に関する減速機とベアリングの分野が注目されそうだ。
■個人の売り加速と信用倍率低下~指数が高値更新しながら需給が改善へ
2025年の投資主体別売買動向では、事業法人は一貫して買い越し、海外投資家は年初来累計で7月第2週以降に買い越しに転じて以降、買い越しを続けている。一方で、個人投資家は年初来累計で6月第4週に売り越しに転じて以降、売り越し額の拡大が加速している。 個人投資家の日本株売りは、現物株の売却や信用取引の売り決済のほか、信用取引の新規売り建て増加が考えられる。現物株を売却すれば次の買い待機資金となる。信用取引の新規売り建ては将来的には決済のための買い需要となる。個人投資家の売り越し拡大は、現物買いの待機資金増加、および信用倍率の低下によって日本株市場の需給改善につながっている。これは今後の相場見通しで考慮すべきポイントだろう。参考銘柄
デンカ<4061>
・1915年設立の総合化学品会社。化学肥料・セメントの軍配印の商標が有名。電子・先端プロダクツ、ライフイノベーション、エラストマー・インフラソリューション、ポリマー・ソリューションが主要事業。 ・8/7発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比8.4%増の952億円、営業利益が同68.7%増の47億円。主な事業別営業利益は、電子・先端プロダクツ(売上比率23%)が6%増の22億円、ライフイノベーション(同8%)が88%増の8億円、ポリマーソリューション(同34%)が2億円へ黒字転換。 ・通期会社計画は、売上高が前期比7.9%増の4200億円、営業利益が同34.6%増の180億円、年間配当が同横ばいの100円。同社は世界首位の合成ゴムであるクロロプレンゴムで、赤字続きだった米国工場を停止する荒療治により利益回復を急ぐ方針。さらにAI(人工知能)半導体製造で需要増加の半導体封止材で使われる球状シリカ、次世代高速通信向けの放熱材料の成長が見込まれる。三井化学<4183>
・1997年に旧・三井化学工業と三井東圧化学が合併。ライフ&ヘルスケアソリューション、モビリティソリューション、ICTソリューション、ベーシック&グリーン・マテリアルズを主な事業セグメントとする。 ・8/7発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上収益が前期比7.6%減の4153億円、コア営業利益が同11.8%減の266億円。コア営業利益の内訳は、ライフ&ヘルスケア(売上比率13%)が5%増の62億円、モビリティ(同31%)が5%減の146億円、ICT(同17%)が45%増の90億円、ベーシック&グリーンは赤字。 ・従来未公表だった通期会社計画は、売上収益が前期比2.2%減の1兆7700億円、コア営業利益が同9.0%増の1100億円、年間配当が同横ばいの150円。同社は石油化学事業(ベーシック&グリーン・マテリアルズ)の構造改革を進め、2027年目標で分社化を検討。次世代露光装置に対応した「ペリクル」(半導体回路の原版を保護する薄い膜材料)や光学材料などの成長分野も注目される。ハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>
・1970年に長谷川歯車と米国USM社の合弁事業で設立。長野県安曇野市に穂高工場がある。減速装置とその応用製品(アクチュエータ・制御装置等メカトロ製品)関連の精密減速機事業を営む。 ・8/6発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前期比3.8%増の134億円、営業利益が前年同期の▲2億円から1億円へ黒字転換。製品別売上高は、減速装置が11%増の108億円、応用製品が17.4%減の26億円。用途別は車載が減収の一方、産業用ロボット、半導体製造装置、ギアヘッドが増収。 ・従来未公表だった通期会社計画は、売上高が前期比2.4%増の570億円、営業利益が15億円(前期600万円)、年間配当が同横ばいの20円。同社はヒト型ロボット向け精密減速機へ100億円の戦略投資を実施。2026年度に同減速機で100-200億円の売上高を目指している。同社の波動歯車減速機は世界シェア6割のほか、競合他社と比べてコンパクトであり、小型ロボット向け関節部品で優位。日本精工<6471>
・1916年設立のベアリング(軸受)メーカー。一般産業向けの軸受や精密機器関連を扱う「産業機械事業」、自動車および部品メーカー向けの軸受やステアリングなどを扱う「自動車事業」を展開。 ・7/31発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比2.4%減の1957億円、営業利益が同18.4%減の47億円。産業機械事業(売上比率46%)は2%減収、営業利益が41%減の15億円。自動車事業(同51%)は2%減収、営業利益が16%増の35億円。為替の円高推移が業績に響いた。 ・通期会社計画は、売上高が前期比4.6%減の7600億円、営業利益が同22.7%減の220億円、年間配当が同横ばいの34円。同社は超小型・高精度ベアリングや低摩擦ベアリングの開発で世界を主導。特にヒト型ロボットの関節に求められる高トルク・軽量・コンパクトな技術に強みを持つ。自動車事業を通じ、米テスラや中国自動車メーカーなどヒト型ロボット開発の先端企業を幅広く取引先とする。 ※執筆日 2025年8月22日
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)
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