2年半ぶりタフネススマホ「TORQUE G07」開発の裏側 「強さは、新たなる境地へ」に込めた思いとは(1/3 ページ)

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 3月にKDDI(au)から発売された京セラのタフネススマートフォン「TORQUE G07」。前モデル「TORQUE G06」から約2年半、満を持して登場した最新モデルは、歴代のTORQUEファンから寄せられた多くの要望を反映し、さらなる進化を遂げている。

 レッド、ブラック、オリーブの基本色展開に加え、別売りのアクセサリーとして、イエローとブルーの正面カバーおよび背面カバーを用意した。さらに、新たな耐泥水試験やL字落下試験のクリア、カメラセンサーの刷新、新機能「タッチプラス」の搭載など、見どころは多い。au Starlink Directへのデータ通信対応や、前モデルとのバッテリー互換性の維持など、ユーザーの利便性をとことん追求した仕様となっている。

 今回、ITmedia MobileではTORQUE G07の開発陣にインタビューを実施。G06からの進化点や開発の苦労、ユーザーの要望に対するアプローチなどについて4人に詳しく話をうかがった。

TORQUE G07の開発に携わった京セラ通信技術部ビジネスソリューション戦略部の長谷川隆氏ら開発陣に同モデルの進化点や開発の苦労について話をうかがった
  • 京セラ 通信技術部 ビジネスソリューション戦略部 マネジメント1課責任者 長谷川隆氏
  • 京セラ 通信技術部 電気技術部 第4技術課責任者 山田陽士氏
  • 京セラ 通信技術部 機構技術部 第2技術課責任者 石橋賢二氏
  • 京セラ 通信技術部 プロダクト戦略部 企画1課 福井裕二朗氏
京セラ 通信技術部 プロダクト戦略部 企画1課の福井裕二朗氏

―― このタイミングでTORQUE G07を出そうとした意図は何か聞かせてください。

福井氏 TORQUEは耐久性が特徴の機種になりますので、1回使っていただくと保有期間が長くなる傾向にあります。電池の着脱もできるため、電池がへたってきても交換すれば元の状態に戻せます。そのため、毎年新機種を出すようなモデルではないのですが、2年半ほど前にTORQUE G06を出した後、お客さまから耐久性強化などのさまざまなご要望をいただき、新機種への期待の声も多く寄せられていました。

 毎年出すものではないものの、ある程度時期が経過してからは、しっかりと新しい機種を出してお客さまの声に応えていきたいというバランスを見て、このタイミングでの発売となりました。

歴代のTORQUEシリーズ。前モデルから約2年半の月日を経て登場したTORQUE G07は、耐久性や通信機能などが進化している

―― TORQUE G06の発売から約2年半掛かった経緯や、この間に取り組んできたことをお聞かせください。

福井氏 TORQUEを実際に使われている方は、アウトドアなどのアクティブな方や、法人用途(建築業、農業など)の過酷な現場で使われている方々です。われわれはそうしたお客さまの声を丁寧に拾い上げることを大切にしており、コミュニティーサイト「TORQUE STYLE」でのやりとりや購入者アンケートを通じて、不満点や改善要望を集めてきました。

 今回のキャッチコピーは「強さは、新たなる境地へ。」としています。具体的に大きく進化したポイントは3点あります。1点目は耐久性の向上と「au Starlink Direct」への対応による「使えるフィールドの拡大」です。2点目は要望の多かったカメラ性能の強化です。3点目はカラーバリエーションの拡充で、背面パネルの着脱構造を取り入れ5色展開を実現しました。

―― TORQUE G06から進化した部分を改めて教えてください。

福井氏 大きくは先ほどの3点ですが、耐久性については今回新たに「耐泥水」に対応しました。また、耐海水に関してもG06では水深2mまででしたが、今回は水深5mまでに強化しました。耐落下性能についても、2.2mからの落下試験をクリアし強化しています。さらに、au Starlink Directのデータ通信にもフル対応しました。

TORQUE G07の基本カラーとなるレッドとブラックにオンライン限定のオリーブを加えた3色展開の背面デザインでユーザーからの期待に応える仕様となっている
TORQUE G07の前面ディスプレイはユーザーの声を反映してサイズ感と高耐久性のバランスを取った5.4型を採用し過酷な環境下でも使いやすい設計だ

 カメラについては、メインカメラのセンサーサイズを物理的に大きく(1/1.55型)してより多くの光を取り込めるようにし、暗所でも明るく鮮明な写真が撮影できるようナイトモードを搭載しています。マクロカメラの画素数もアップさせ、AIカメラ機能として「影消し」なども搭載しました。法人用途としても、低画素モードやバーコードスキャンといった機能を搭載しています。

メインカメラはセンサーサイズを大型化しより多くの光を取り込めるようになり暗所でも明るく鮮明な写真が撮影できる新設計のナイトモードを搭載した
マクロカメラの画素数もアップし撮影画像から影を認識して自動で消去する影消しなどのAIカメラ機能を新たに搭載して日常やアクティビティーをより便利に記録できる

 そしてアクセサリーの拡充として、今回は正面と背面のカバーを着脱可能にし、新機能の「タッチプラス」も搭載しています。

アウトドアや農作業などの過酷な現場を想定し新たに耐泥水試験をクリアしており、泥水に落としても水できれいに洗い流せるようスリット構造を取り入れている

―― 耐泥水や2.2mからの耐落下性能は、どういうニーズや利用シーンを想定したものですか。

福井氏 泥水に関しては、アウトドアや山へ行くと急な天候の変化に遭遇し、水たまりやぬかるんだ山道を歩くシーンで落として泥水につかってしまうことを想定しています。法人系でいいますと、農家の方が田んぼでの作業中に誤って落としてしまうシーンなども想定し、安心して使えるようにしました。

―― 耐泥水対応は設計上、相当難しかったですか。

石橋氏 泥水に落として防水性が保てるかどうかだけでなく、先代のG06で試験をしたところ、内部(防水エリア外)に水が入っても機能的には問題ないのですが、泥が内部に残ってしまい、表面を水で洗っても泥が詰まったままになってしまう課題に直面しました。稼働部やボタンに泥が詰まると動作に影響してしまいます。

 そのため、開発当初からデザイン担当と協議し、水で表から洗ったときに泥が外にきれいに洗い流せるような流路を作りたいと要望を出しました。スピーカー周りなども含め、洗い流しやすい形状にする配慮が思った以上に大変でした。

稼働部やボタンに泥が詰まらないよう内部に入った泥水を外部へ排出しやすい流路を作るなどデザイン担当と協議を重ねた機構設計の苦労が明かされた(出典:過去記事)
京セラ 通信技術部 電気技術部 第4技術課責任者の山田陽士氏

―― au Starlink Directへの対応については、KDDIとともに協力してアンテナの性能を高めたのでしょうか。

山田氏 キャリアからの要望というよりも、われわれ京セラからの提案になります。技術的な取り組みを説明しますと、従来のG06ではアンテナの指向性を基本的に水平方向に配置するよう設計していました。しかし、Starlinkの衛星は上(垂直方向)にいるため、水平方向のアンテナ特性のままだと送信が届かず圏外になってしまう課題がありました。そこでG07ではダイバーシティー技術を取り入れ、2本目のアンテナに上方向の指向性を持たせました。ユーザーがいろいろな持ち方をしても、電波状態のいいアンテナに切り替えることで性能が変わらないよう設計しています。

au Starlink Directへの対応では衛星を意図した上向きの指向性を持つ2本目のアンテナを搭載し端末の持ち方が変わっても安定した通信を維持できる

―― どういう基準で他社端末よりも感度が高いのでしょうか。

山田氏 接続率です。発着信試験で会話が維持できるかなどの評価において、一番いい結果が出ています。

―― KDDIさんとしてもStarlinkに力を入れていますが、タイミングとしてはベストでしたか。

山田氏 ベストなタイミングだったと思います。いち早く京セラの優位性を示せたのではないかと考えています。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


Page 2

前のページへ 1|2|3       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

―― 販路について、オープン市場や法人向けに拡大する予定はありますか。

福井氏 今回のTORQUE G07に関しては、KDDI向けの商品ですので、オープン市場への展開は予定していません。法人向けの展開については、今後取り扱う予定です。

―― KDDIも企画に関わっているのでしょうか。

福井氏 そうですね。TORQUEは企画段階からKDDIさんと密に話をさせていただいているモデルです。

―― ドコモ向けに欲しいというような要望はありますか。また他キャリアのStarlink使用時も受信感度の恩恵は受けられますか。

福井氏 他キャリアで使いたいという要望はあります。端末自体はSIMフリーですので、auで端末をご購入いただき他社のSIMを挿して使うこと自体は可能です。

山田氏 無線の性能としてはどのキャリア向けのStarlinkであっても同じですので、仕様上は使えます。ただし、キャリアごとのサービス運用仕様に依存する部分があります。

―― 法人向けの「DuraForce」シリーズとは、どのようにすみ分けて開発しているのでしょうか。

福井氏 TORQUEはコンシューマーのお客さまがいらっしゃいますので、カメラ性能の向上やカラーバリエーションなど、コンシューマーならではの要求スペックを満たすようにしています。一方のDuraForceは法人に特化している端末ですので、そういったコンシューマー向けの過剰なスペック要求を持たせず、用途を明確に分ける形ですみ分けを行っています。

京セラ 通信技術部 ビジネスソリューション戦略部 マネジメント1課責任者 長谷川隆氏

―― TORQUE G07の価格は一括13万円を超えます(au Online Shopで一括13万1800円)。G06から3万円と少し値上げされていますが、価格の高騰はどのような背景からなのでしょうか。

長谷川氏 部材費の高騰や為替の影響に加え、追い打ちをかけるようにメモリ不足の影響を受けています。目標としては何とか10万円を切りたかったのですが、結果として収まりませんでした。

―― 採算的にはどうですか。

長谷川氏 採算はかなり厳しいというのが正直なところです。ただ、開発リーダー陣が自ら進んでチャレンジングな仕様に取り組んでくれ、当初想定していた仕様に加え、後から要望を反映してスペックを足した部分が非常に多いモデルになりました。開発費は厳しいですが、コストを調整しながらお客さまにとってもわれわれにとってもベストなところを狙えたと思っています。

―― 3月の発売から売れ行きはいいですか。

福井氏 価格が上がった影響はありますが、端末購入プログラムを利用して買い替えてくださる方も多く、好調に推移しています。

―― フィーチャーフォン(折りたたみ型タフネス端末)の要望などはありますか?

長谷川氏 要望は一定数あり、2017年に発売した「TORQUE X01」は想定通りの売れ行きでした。しかし今後の可能性については、スマホへの買い替えがかなり進み、フィーチャーフォンのユーザー層はシニアに寄っていることから、現在の市場環境では厳しい状況です。

【訂正:2026年6月30日17時45分 TORQUE X01について、事実と異なる箇所がありました。おわびして訂正いたします。】

TORQUE G07のオリーブ(写真=左)と、京セラが製造を担当した4G LTEケータイ「G'zOne Type-XX」(写真=右)

石橋氏 耐久性を持たせた折りたたみ端末は内部構造が複雑になります。技術的には現在でも設計可能ですが、高耐久のスマートフォンか高耐久のフィーチャーフォンのどちらが作りやすいか? というとスマートフォンです。

折りたたみ型のタフネス端末は内部構造が複雑になるため技術的には可能であってもスマートフォン型の方がより高い耐久性を持たせやすいという設計上の見解が示された。画像はTORQUEの名を冠した4G LTEケータイ「TORQUE X01」(出典:過去記事)

―― 今後のTORQUEの展望はいかがでしょうか。

福井氏 価格高騰や部材不足など、タフネススマートフォンを取り巻く開発・採算環境は確かに厳しさを増しています。しかし、今回のG07でも、後からStarlinkの感度向上やタッチプラスなどの仕様を熱意で追加したように、われわれの開発メンバーは非常に意欲的です。今後もユーザーの皆さまの声に真摯(しんし)に耳を傾け、他にはない「ワクワク感」を裏切らない、より進化したTORQUEを世に送り出し続けたいと考えています。

 今回のインタビューを通して、京セラの開発陣がTORQUEユーザーの声をいかに大切にし、真摯に向き合っているかを強く感じた。泥水環境を想定した内部構造の工夫や、衛星通信への対応に向けた独自のアンテナ設計など、見えない部分に隠された技術的な挑戦には驚かされる。

 コストや環境の変化といった厳しい条件下でも、「ユーザーにワクワク感を提供したい」という熱意でタッチプラスなどの新機能を実現していく姿勢こそが、長く愛されるTORQUEシリーズの根幹を支えているのだと思う。これからのさらなる進化にも大いに期待したい。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

関連記事: