珍しい二重リングの「奇妙な電波サークル」を発見、市民科学者が協力(CNN.co.jp)
(CNN) 市民科学者の協力を得て宇宙で発見された珍しい二重リングの構造は希少で謎に満ちた天体の一つだったことがわかった。 写真特集:ジェームズ・ウェッブ望遠鏡が捉えた宇宙 電波望遠鏡が捉えたこの空に浮かぶ珍しい天体は、「奇妙な電波サークル(ORC)」と呼ばれるもので、宇宙でも最も希少で謎に満ちた天体の一つだという。王立天文学会の月報に掲載された論文の筆頭著者であるムンバイ大学原子力学部のアナンダ・ホタ博士が指摘した。 ORCは磁化されたプラズマ(磁場の影響を強く受ける荷電ガス)で構成されていると考えられており、その中心に銀河が丸ごと存在するほど巨大だ。その広がりは数十万光年にも及び、しばしば天の川銀河の10~20倍の大きさに達する。だが、非常に微弱で、通常は電波によってのみ検出することができる。 新たに発見されたORCは「RAD J131346.9+500320」と名付けられた。このORCは地球から75億光年離れており、現在までに知られているORCのなかで最も遠いものとなっている。また、市民科学者によって発見された初めてのORCだ。二重のリングを持つORCとしてはこれが2例目となる。 ホタ氏は「ORCは我々がこれまでに見た中で最も奇妙で美しい宇宙構造の一つであり、銀河とブラックホールがどのように共進化するかという重要な手がかりを秘めている可能性がある」と述べた。
ORCは約6年前に初めて発見されたが、その構造はほとんど解明されていない。 ホタ氏は科学の経歴を持つ人なら誰でも参加できるオンラインコミュニティー「RAD@home Astronomy Collaboratory」のディレクター兼主任研究員だ。ホタ氏によれば、天文学者が、微弱でぼんやりとした電波の斑点のパターンを認識し、天文画像を分析できるよう、利用者を訓練しているという。 新たに発見されたORCは、オランダや欧州各地に設置された数千のアンテナを一つの巨大な電波望遠鏡として構成する低周波電波干渉計(LOFAR)のデータに現れた。 コミュニティーの参加者はORCを探すための特別な訓練は受けていなかったものの、この二重リングの構造は際立っており、LOFARを用いて初めて特定されたORCとなった。リングは交差しているように見えるが、研究者は、これは地球からの視点によるものだと考えており、実際には空間的に離れている可能性が高い。二つのリングは97万8469光年にわたり広がっている。 「この研究は、専門職の天文学者と市民科学者が協力することで、科学的発見の限界を押し広げることができることを示している」とホタ氏は述べた。 天文学者はかつて、ORCはワームホールの入り口や、ブラックホールの衝突や銀河の合体による衝撃波、あるいは高エネルギー粒子を噴出させる強力なジェットではないかと考えていた。 「銀河中心部で大規模な爆発的現象が発生したと推測される」とホタ氏は述べた。「その結果生じた衝撃波や爆風により、磁化されたプラズマの古代雲が再活性化され、電波リングとして再び輝き始めた可能性がある」 ホタ氏は、プラズマ雲は銀河の超大質量ブラックホールから放出された物質のジェットによって最初に生成された可能性が高いと説明した。新たな衝撃波が、銀河の過去の活動によって残された「煙」を照らし出したと言い添えた。 ブラックホールは星やガス、ちりを直接飲み込むわけではない。代わりに、それらの物質はブラックホールの周囲を回転する円盤に落下する。破片が高速で回転するにつれて、超高温になる。ブラックホール周辺の強力な磁場は、これらの高エネルギーで超高温の粒子を光速に近いジェットに吹き込み、ブラックホールから遠ざける。 市民科学者のチームはさらに二つの異なる銀河でORCを発見した。その一つは、鋭い曲線を描く強力なジェットの先端に位置し、約10万光年の幅を持つ電波リングを形成している。 いずれのORCも、より大きな銀河団内に位置する銀河の中にあり、超大質量ブラックホールから噴出するジェットが周囲の高温プラズマと相互作用し、それが電波リングの形成に寄与している可能性があるとホタ氏は述べた。