家族旅行が一転 祭壇に並んだ5人の遺骨 「現実と思えず……」

亡くなった松本幸司さん家族5人の祭壇に手を合わせる幸司さんの姉(左)と妻恵梨子さんの兄=静岡県袋井市で2026年7月25日午後3時1分、平川義之撮影

 祭壇には仲むつまじく肩を寄せ合う家族写真とともに、遺骨を納めた箱と位牌(いはい)が五つ並ぶ。中央には、あの日5人が訪れるはずだった大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の人形や置物も飾られていた。

楽しい家族旅行のはずが……

 三重県亀山市の新名神高速道路下り線のトンネル内で3月20日未明、渋滞中の車列に大型トラックが突っ込み計6人が死亡した。車列の最後尾にいたのが、静岡県袋井市の会社員、松本幸司さん(当時45歳)の一家5人だった。

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 幸司さんが運転し、妻恵梨子さん(同42歳)と長女莉桜さん(同11歳)、長男壮真さん(同8歳)、次女彩那さん(同5歳)を乗せてUSJに向かっていた。2月生まれの莉桜さんと、3月生まれの彩那さんの誕生日祝いを兼ねた旅行だった。

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 事故は午前2時20分ごろ発生。追突の衝撃で幸司さんは運転席から車外に投げ出され、4人を乗せた車も炎上した。

聞けなかった思い出話

 恵梨子さんの兄(47)の暮らす実家に、三重県警から連絡が入ったのは午前8時半過ぎ。あまりに衝撃的な内容に、兄は当初は「警察をかたった詐欺だろう」と疑った。一方で、恵梨子さんらとは一向に連絡が取れなかった。繰り返し流れてくる事故のニュースを目にし、現実を受け入れざるを得なかった。

亡くなった松本壮真さんが着ていたと見られる衣類。事故時の火災で燃え、真っ黒に焼け焦げている=静岡県袋井市で2026年7月25日、平川義之撮影

 実家は車で20~30分の場所にあり、一家は毎週のように遊びに来ていた。出発前日も、子どもたちは「USJに遊びに行くんだ!」とうれしそうに祖母に報告していた。我が子のようにかわいがっていた兄は「次来る時には、楽しい思い出話が聞けるはずだったのに」と声を震わせる。

焼け焦げたスマホや衣類

 そして、後悔も襲う。あの日、一家は都合があり深夜に車を走らせるタイトなスケジュールだった。「『そんなに早く行かなくてもいいのに』と、ひと言引き留めていれば……」。兄は何度も自分を責めた。

 現場で見つかった遺品は一つ一つ、綿を敷き詰めた箱に保管されている。三つ並んだスマートフォンは事故時の火災で燃え、原形をとどめていない。壮真さんが着ていたと見られる衣類も真っ黒に焼け焦げていた。兄は遺品を見つめ、「今だってまだ、あの子たちがいる気がして。どうしても現実を受け止められない」と涙を流した。

「反省し、真実を話して」

犠牲になった松本幸司さん家族5人の遺族で、報道陣の取材に応じ、涙ぐむ幸司さんの姉=静岡県袋井市で2026年7月25日午後2時31分、平川義之撮影

 大型トラックを運転していた水谷水都代被告(55)=自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪で公判中=は事故直前、スマートフォンで動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の料理動画を約13秒間見ていたとされる。

 6月10日に開かれた初公判。水谷被告は起訴内容を認め、「違反に対する意識が甘くなっていた。運転中に誰かと通話をしていない時は日常的に動画などをちらちら見ていた」とする供述調書も読み上げられた。

 この日は、恵梨子さんの兄のほか、幸司さんの姉(53)も傍聴していた。検察官が遺族の悲痛な思いを読み上げた時のことだ。遺族の目には、被告の表情が淡々とした様子に見えた。2人は「涙一つ出ないのか。反省や謝罪のかけらも感じなかった」と憤る。

 31日には第2回公判が開かれる。5人の遺骨が並ぶ祭壇の前で、恵梨子さんの兄と幸司さんの姉はこう強調した。

 「5人が元気な姿で帰ってくるという願いはかなわない。それならせめて、私たちが事実を受け入れられるように、被告は反省し、真実を話してほしい」【石本万象】

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