「グータッチで気合」大阪の牙城崩れた関西吹奏楽コン高校Aレビュー:朝日新聞
30日にフェニーチェ堺(堺市)で開かれた関西吹奏楽コンクール(関西吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)高校Aの部は、午前の第1部から実力校が出演し、ハイレベルな熱演が続いた。
星林
最初に登場した星林(和歌山)は、バランスのよいサウンドで、課題曲Ⅲのマーチの主題の音型を精緻(せいち)に奏で、銀賞を受けた。自由曲の「ブリュッセル・レクイエム」(アッペルモント作曲)も、木管やシロフォンなどの細かなパッセージの動きを明快に見せる演奏。クラリネットやコントラバスクラリネットの祈りのようなメロディーが、深く心に残った。
星林=2026年8月30日午前10時6分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影尼崎双星(兵庫)は課題曲Ⅳをじっくりとうたい上げた。自由曲「紺碧(こんぺき)の波濤(はとう)」(長生淳作曲)では、フルートが思いを込めて静かにうたう旋律から、長いフレーズを経て一つの音楽を編んでいく表現が光った。上り詰めたところでのトランペットとトロンボーンの輝かしい響きも際立つ演奏。金賞に輝いた。
尼崎双星=2026年8月30日午前10時35分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影滝川第二(兵庫)も金賞。課題曲Ⅱのフレーズをしっとりとつなぐような演奏。重厚な低音とのバランスもよく、ホルンと並んだトランペットが主題を美しく溶け合わせていた。自由曲は、超絶技巧が連続する「華麗なる舞曲」(スミス作曲)に挑戦。クラリネットやフルートが着実にパッセージを奏で、ひな壇最上段のトロンボーンの主題を浮かび上がらせた。
滝川第二=2026年8月30日午前10時52分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影自由曲でバレエ組曲「ロミオとジュリエット」(プロコフィエフ作曲)を演奏した浪速高・中(大阪)は銀賞。部長でピッコロを吹いた及川紫花(すみれ)さん(3年)によると、指導する先生から「表現がうすい」とよく言われていたという。ロミオとジュリエットの物語について、部員で共有した。
及川さんは「府大会の後も、ロミオが死んでしまったときの気持ちについてみんなで語り合って、気持ちを音にのせることを意識しました」と話した。
浪速高・中=2026年8月30日午前11時45分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影市立西宮(兵庫)は「中国の不思議な役人」(バルトーク作曲)で、旋回するような速いパッセージの繰り返しにのせて、フレーズが表情を変えながら連なり、グロテスクな音楽を精緻(せいち)に作りだした。トロンボーンやテューバの響きがよく、鋭い音で切り出されるモチーフを豊かに奏でているのが光った。結果は銅賞だった。
市立西宮=2026年8月30日午後0時40分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影東海大大阪仰星は、課題曲Ⅳの各フレーズを大事に奏でながら音楽を推進していく重厚な演奏。自由曲の「大阪俗謡による幻想曲」(大栗裕作曲)も、大阪府大会の時よりもさらにコントラストを際立たせて、神楽の神秘的な空気感を作りだしていた。後半の祭りばやしの部分も、トロンボーンやミュート付きトランペットが細かな音型も正確なハーモニーを響かせながら演奏。端正でシンフォニックな響きで奏でて、金賞に輝いた。
部長でテナーサックスの八田菜愛(やつだなお)さん(3年)は「みんなが同じ音を出す場面が多い曲なので、音程をまずパートで合わせ、さらに全体でも合わせる、という細かい調整をしてきました。本番を見据えてやってきたことができた」と笑顔を見せた。
副部長でトランペットの加藤愛実さん(3年)は「府大会以降、パート全体で音量が出せるようになってより力強く吹けました」と振り返った。
東海大大阪仰星=2026年8月30日午後0時47分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影向陽中・高(和歌山)は自由曲で「脆性(ぜいせい)ノスタルジア」(冷水乃栄流作曲)を演奏。ノスタルジックな夏の記憶をサウンドスケープのように描いた作品で、クラリネットが叙情的な旋律をたっぷりとうたい上げた。バンド全体が立体的な音響で、中低音がしっかりとしたハーモニーで支えた。迫力と繊細さを兼ね備えた演奏で、銅賞を受けた。
向陽中・高=2026年8月30日午後1時5分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影金賞だった明浄学院(大阪)は、3年前に全国大会に出場した際の自由曲「紺碧(こんぺき)の波濤(はとう)」(長生淳作曲)で臨んだ。課題曲Ⅳでは、音楽の横の流れを意識した演奏で、フレーズを大きく捉え、弱音部分も大事に奏でた。クラリネットの旋律からファゴットに移っていくまでの空気の変化の美しさが際立っていた。
自由曲では、平家琵琶をイメージしたハープの低音の響きにのせて、フルートソロが雄弁に語った。イングリッシュホルンと掛け合いながら、「死の運命を受け入れつつ困難に立ち向かう英雄」の心情を表現した。
フルートの眞砂玲音さん(2年)は「死ぬ覚悟をしている人が、運命を変えられないが前向きに生きる心情を表現した」。イングリッシュホルンの木村優月さん(3年)は「武将が水に飛び込む場面で、音が明るくならないようにイメージをもって吹いた。いつも通りにすべてを出し切れたと思う」と充実した表情で語った。
明浄学院=2026年8月30日午後2時18分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影一条(奈良)は課題曲Ⅳを序奏部分から力強いサウンドで始め、主題を受け渡していく流れもスムーズに演奏。濁りのない音で、内声の動きもしっかり聴かせた。
自由曲の「われらをめぐる海」(阿部勇一作曲)でも、重厚な低音とクラリネットの深い音が、この曲がテーマにした地球環境への警鐘を訴えかけた。断片的なフレーズにも豊かな響きをのせた好演で、銅賞を受けた。
一条=2026年8月30日午後3時5分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影生駒(奈良)も課題曲Ⅳを選んだ。個々のうたが化学反応を起こすように広がって、全体の音楽を推進していくような印象。自由曲の「愛と祈りの歌」(松下倫士作曲)では、アルトサックスのソロを支えるフルートの和音の彩りや、曲の終盤に、全員で奏でた立体的なサウンドの美しさが光った。結果は銀賞だった。
生駒=2026年8月30日午後3時20分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影甲子園学院中・高(兵庫)は、自由曲「交響曲第1番『悪魔の聖書』」(デイヴィッド作曲)で、光が差し込むようなクラリネットの響きの美しさが印象に残った。まっすぐな音がつくる様々な音響のめくるめく変化が、楽園のような雰囲気や厳かな空気など、イメージさせる情景を次々に変えていくような圧巻の演奏。金賞に輝いた。
部長でクラリネットの中西雫さん(3年)は「課題曲の冒頭が大事。リハーサル室でもぎりぎりまで練習をして、すべてのパートでお互いを信頼して吹きました」と話した。自由曲も「広がってしまわないよう、タイミングのズレは最後まで気にして練習した」という。演奏が終わると、ステージ上のメンバーは感極まって涙があふれた。
甲子園学院中・高=2026年8月30日午後3時34分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影例年、クラシック作品に取り組んできた洛南(京都)は、今年はスペイン音楽の世界に挑戦した。自由曲の「ドゥエンデ」(アラルコン作曲)で、タンゴのリズムにのって、一人ひとりが多彩な旋律を奏でた。ソプラノサックスがショーマンシップあふれる演奏で、こってりとソロをうたい上げる。曲の後半には、フラメンコを思わせる手拍子に合わせ、技巧的な速いパッセージを、リズムに乗って鮮やかに吹ききった。結果は銀賞だった。
コンサートマスターでファゴットの小野奏さん(3年)は「1、2年生の時はクラシック曲が多くて、今年は新鮮だった。音楽のニュアンスや空気感のつくりかたを合奏で教わり、生徒で話し合いながら練習してきた。本番はシンプルに楽しむ気持ちが一番。非常に楽しかった」と語った。
洛南=2026年8月30日午後4時10分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影市立尼崎(兵庫)は、迫力のある豊かな響きが魅力的。自由曲「ダフニスとクロエ」(ラベル作曲)の「夜明け」の場面を、縦にわき上がるようなサウンドで神々しく描いて見せた。「全員の踊り」も、細かなパッセージの一音一音をはっきりとさせつつ、流麗に奏でた。結果は銀賞だった。
エス管クラリネットのソロを奏でた喜多紗弓さん(3年)は「緊張したが、課題曲のマーチの最初の音でほっとした」。部長でファゴットの山崎絢乃さん(3年)は「(「夜明け」は)日が昇る動画を見て、みんなで統一したイメージをもって演奏した。きょうは自分も楽しくて、楽譜や指揮だけでなく周りも見ながら、明るい雰囲気で演奏できました」と笑顔で話した。
市立尼崎=2026年8月30日午後5時43分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影京都共栄学園は自由曲に「ローマの祭り」(レスピーギ作曲)を選んだ。冒頭のクラリネットの深く鋭い音と低音の重厚な響きが光った。高音で出てくるホルンの旋律も見事で、にぎやかな祭りの喧噪(けんそう)の中に浮かぶワルツも上品に奏でた。曲の終わりに熱狂しすぎることなく、濁りのない分厚い音で奏でる好演で、銀賞を受けた。
京都共栄学園=2026年8月30日午後7時18分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影◇
関西代表として、浜松市で開かれる全日本吹奏楽コンクールに進むのは3校。長年、大阪勢が独占していたが、今年はついに、その牙城(がじょう)が崩れた。
京都両洋
京都両洋が全国大会への切符を手にした。関西代表に大阪以外から選ばれるのは2010年の天理(奈良)以来。京都勢が全国に進むのは、2005年の洛南以来、21年ぶりだ。
課題曲Ⅲのマーチの冒頭から、密度の濃い音を響かせた。ボリュームの幅が豊かで、丁寧にコントロールされた演奏。自由曲「吹奏楽のための協奏曲」(高昌帥作曲)でも、冒頭から金管楽器の均質で調和の取れたハーモニーが、心に深く響いた。下行していく低音のバランスや音色も美しかった。
難易度の高いホルンの旋律を見事に吹ききった小西冴來(さら)さん(3年)は「ずっと緊張していたが、舞台袖で周りがいっぱい励ましてくれて、何とかうまくいったかな」と笑顔。ホルンの坂田珠夏(しゅか)さん(3年)は「小西さんと本番前にグータッチをして気合を入れました。ちゃんと音が当たって、一緒に出られて良かった」と話した。
音楽部長でクラリネットの佐々木悠愛(はるか)さん(3年)は「全員で心を一つにして、温かくて楽しい音楽ができてよかった」と振り返った。全国大会に向けては「練習からミスのない、澄み切った音楽を届けたい。レベルの高い高校に並べるような演奏をしていきたい」と抱負を語った。
京都両洋=2026年8月30日午前11時4分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 京都両洋=2026年8月30日午前11時16分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影大阪桐蔭は6大会連続の関西代表となった。
課題曲Ⅱの英国調のマーチを気品あふれる音色で奏でた。一人ひとりが自在に歌いながらも、全体の音楽づくりのイメージが一致した好演だった。
自由曲「ライオン・キング」(ジマー作曲)は、情景が目に浮かぶような演奏。豊かな響きをもった音で技巧的なパッセージを流麗に奏でつつ、一人ひとりがまるで演者になったようにうたい上げることで、音楽を通じたスペクタクル・ショーを展開した。
大阪桐蔭=2026年8月30日午前10時27分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 大阪桐蔭=2026年8月30日午前10時21分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影近大付(大阪)も3大会連続の関西代表。
音楽の持つエネルギーと表現が溶け合った見事な演奏で、課題曲Ⅳの音楽表現の可能性を切り開くような解釈を示した。
自由曲「フラタニティ」(ドゥルルイエル作曲)では、重厚なサウンドでパイプオルガンのような響きが地面からわき上がってくるようだった。中間部では躍動するリズムにのって、トランペットやホルンが超絶技巧を吹きこなす。曲の終わりにも圧倒的に豊かな響きを聴かせ、曲が閉じると同時に割れんばかりの拍手が起きた。
部長でトランペットの赤松胡春さん(3年)は演奏しながら「府大会のときよりも、ホール全体の空気がすごく振動しているのを感じました。より良い演奏ができたからだと思います」と語った。
副部長でアルトサックスの渡辺悠月さん(3年)は昨年まで、舞台裏でコンクールの演奏を聴いていた。「今年やっと舞台に乗れて、みんなの思いも考えて、悔しかったことも思い出しながら、満足いく演奏ができました」
副部長でバリトンサックスの佐藤心美さん(3年)は「いつも以上に演奏しているみんなの顔がきらきらしていて、幸せ過ぎた12分間でした」と話した。
近大付=2026年8月30日午後6時27分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 近大付=2026年8月30日午後6時34分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 比叡山=2026年8月30日午前11時22分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 清教学園=2026年8月30日午後1時27分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 立命館=2026年8月30日午後1時46分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 早稲田大阪=2026年8月30日午後1時51分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 加古川東=2026年8月30日午後3時52分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 立命館守山=2026年8月30日午後4時28分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 京都橘=2026年8月30日午後4時40分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 伊川谷北・神戸学園都市=2026年8月30日午後5時57分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 関西創価=2026年8月30日午後6時10分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 県西宮=2026年8月30日午後6時40分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 甲西=2026年8月30日午後6時58分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影