債券トレーダー、米雇用統計を注視-労働市場軟化の兆し探る
債券トレーダーは5月の雇用統計を注視している。市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げタイミングを見極めようと、労働市場軟化の兆しを探っている。
5日に発表された5月31日終了週の新規失業保険申請件数が昨年10月以来の高水準となったことを受けて、米国債利回りは同日一時、約1カ月ぶりの水準まで低下した。
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弱い雇用指標を受けて市場は9月の利下げをほぼ完全に織り込んだ。これまでは10月利下げが有力とみられていた。
6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合については政策金利が据え置かれるとの見方が優勢だが、6日発表の5月雇用統計にサプライズがあれば、市場は再び織り込み直しを迫られる可能性がある。
SGHマクロ・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ティム・ドゥイ氏は「FRBが夏に利下げに動くには労働市場の明確な悪化が必要だ」とした上で「しかし最新データは、労働市場は軟化傾向が続いているが崩壊してはいないことを示唆している」と指摘した。「5月の雇用統計次第で情勢は変わり得る」と付け加えた。
米金融当局者は利下げに踏み切る前にさらなる経済指標を見極める必要があるとの姿勢を示し、高止まりするインフレと景気減速のリスクのバランスを取ろうとしている。
金利スワップ市場では、FOMCが6月会合で政策金利を据え置いた後、7月に利下げを行う確率は約25%と想定されている。
9月の利下げの確率は約90%織り込まれており、年内に0.25ポイントの利下げが2回実施されるとの見方も完全に織り込まれている。
市場予想では、5月の非農業部門雇用者数は前月比12万5000人増と見込まれ、失業率は4.2%で横ばいが予想されている。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「債券をショートしていて6日発表のデータが弱ければ、足元をすくわれかねない。強い数字はノイズ(雑音)として片付けやすいが、弱い数字はそうはいかない」と警鐘を鳴らす。
債券トレーダーはこのところ、短期債が長期債を上回るパフォーマンスを見せイールドカーブがスティープ化するとの予想に賭けている。FRBが最終的に利下げに踏み切ることで短期金利が低下する一方、トランプ米大統領が提案している税制法案が財政赤字を悪化させ、長期金利の上昇を促すとの見通しに基づいてポジションを構築している。
しかし、JPモルガン・アセット・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、ケルシー・ベロ氏は、一段のカーブスティープ化には短期債の値上がり(利回り低下)が必要であり、そのためには労働市場のさらなる軟化の兆候が必要だとの見方を示した。
原題:Bond Traders Look to US Jobs Report for Signals of Fed Rate Path(抜粋)