中国の人民元切り下げ観測しぼむ-トランプ米大統領が先制パンチ

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  • 元切り下げは大規模な資本逃避のリスク-ノムラのリポート
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トランプ米大統領が中国の通貨政策に言及したことで、米中間で貿易戦争の危機が迫る中でも中国人民銀行(中央銀行)が人民元の相場安定を図る戦略を堅持し、元安誘導を避ける公算が大きくなっている。

  トランプ氏は3日、日本や中国が自国通貨を押し下げれば、米国は「極めて不当に不利な立場に置かれる」とホワイトハウスで語った。この発言は米国を刺激しないよう人民元相場を米国への対抗策とすることを人民銀に思いとどまらせる可能性がある。

  人民銀はこれまで、対中関税強化に対応するため、通貨安政策に訴えることはないと示唆。実際、昨年11月の米大統領選をトランプ氏が制した後、人民銀は元安誘導を回避している。

  みずほ銀行のアジア外国為替チーフストラテジスト、張建泰氏(香港在勤)は「元安をけん制するトランプ氏の警告を考慮し、人民銀は恐らく人民元の中心レートを安定的に維持する政策を微調整することは控えるだろう」との見方を示した。

  人民銀は毎営業日、人民元の中心レートを設定。本土市場の人民元は対ドルで中心レートからの許容変動幅が上下それぞれ2%に定められている。

  中国の成長鈍化とデフレ長期化のリスクで当局に対し大胆な景気刺激策を求める圧力が強まった昨年から、人民元切り下げの臆測が浮上していた。今年1月には、関税政策の行方によっては年末までに人民元は1ドル=7.5元、あるいは8元まで下落する可能性があると予測するアナリストもいた。

  ノムラ・シンガポールのグローバルFX戦略責任者クレイグ・チャン氏らストラテジストは元切り下げが見込めない主な理由として、大規模な資本逃避のリスクがあることと、「強大」な通貨を望む中国の習近平国家主席の願望と相反する可能性があるという2点を挙げている。

  トレーダーらは、北京で5-11日開催される全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に注目している。中国が成長目標をどの程度に定め、その達成に向けどの程度の支援を行うのか、その手がかりを得るためだ。

  チャン氏はリポートで、「2018年と19年の貿易戦争の経験から明らかなように、中国当局は最終的に今後数カ月の間に可能性が高まる大幅な関税に対応するため元の調整を認める」とも分析。「人民元の下落圧力が短期的に再び強まり得る」との予想を示した。

原題:Trump Draws Red Line to Deter China From Devaluing Currency (2)(抜粋)

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