トランプ氏、26年議会中間選挙にフォーカス-地方選挙の共和敗北受け

先週の一連の選挙で米民主党が圧勝したことを受け、トランプ大統領は、来年11月の議会中間選挙で与党が勝利し、自身の政権2期目の後半2年間を盤石とする取り組みを急いでいる。共和党が議会多数派を失えば何が起きるかを、大統領は痛感している。

  だが、中間選挙での与党勝利は容易ではない。4日の選挙結果は1年前の大統領選勝利以降、トランプ氏がほとんど反対に遭わずワシントンを強引につくり替えた時期とは政治・経済のパラダイムが大きく変化していることを浮き彫りにした。

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  26年の中間選挙は、トランプ氏の政治ブランドを問う一段と厳しい国民投票の様相を呈している。世論調査や共和党の選挙敗北は、有権者がトランプ氏の過激な政治手法や不安定な経済運営に疲れを見せていることを示している。

  上下両院で共和党の多数を維持するため、トランプ氏は強硬な手段に出ている。共和党知事に指示し、下院選挙区を共和党に有利な形で再編するよう求めたほか、上院共和党指導部にはフィリバスター(議事妨害)規則の撤廃を要求。選挙に広範な不正があるという根拠のない主張を掲げて、郵便投票の制限や有権者本人確認要件の厳格化を可決させようとしている。

  トランプ氏は中間選挙前に異例の共和党全国大会を開き、支持層を結集させる考えを示している。ホワイトハウス関係者によると、26年には選挙キャンペーンの一環として地方遊説を本格化させる見通しだが、現時点では政治目的の遊説は限られている。側近によれば、ニューヨーク市やバージニア州、ニュージャージー州などで共和党が敗れた要因となった生活費高騰を巡るメッセージに再びフォーカスする方針という。

  トランプ氏は6日、米国民のアフォーダビリティー(暮らし向き)の問題に絡んだ共和党の敗北について「唯一の問題は共和党がそのことを話さないことだ。共和党は話し始めて、もっと頭を使うべきだ」と記者団に述べた。

  共和党が議会多数派を失えば、民主党は勢いづいて通商、税制、移民、連邦政府職員制度などトランプ政権の政策を抑制する態勢を整える見通しだ。さらに、議会の召喚権を背景に、大統領の広範な行動を調査する権限を得て、トランプ氏にとって政治的に不都合な事実が明るみに出るリスクも生じる。

  こうした展開は、トランプ氏が党内の掌握や対立勢力への優位性を保つために誇示してきた強さのイメージを打ち砕きかねない。党がトランプ氏の後継者選びに動き出す中で、自身の政治的終焉(しゅうえん)と向き合わざるを得なくなる可能性もある。

  大統領に近い関係者の話では、トランプ氏は1期目の中間選挙の再現を何としても避けたい考えだ。当時は民主党が下院の支配権を奪い、トランプ氏の立法課題は停滞。2度の弾劾裁判の憂き目にも遭った。

  米国憲法の規定により28年の大統領選に出馬できないトランプ氏は、2期目の終盤に生じる「レームダック(死に体)」状態を回避する方策も模索している。憲法に反する形で3選を試みる案に言及したものの、最終的には不可能と認めた。

バージニア州知事選で勝利した民主党のアビゲイル・スパンバーガー氏

  民主党候補は、生活費高騰という有権者の最大の関心事に焦点を合わせ、全国各地で幅広く勝利した。これにより、トランプ氏の自由奔放な政治スタイルが抱えるリスクがあらためて浮き彫りになった。大統領は過去数週間、中国との交渉や外国首脳との会談、ホワイトハウスの改装などに注力していた。

  また今回の結果は、トランプ氏が候補者名簿に載らない場合、支持者が必ずしも投票に行かないという共和党の構造的課題をあらためて示した。同党は来年、この問題に再び直面することになる。

  トランプ氏の反応は、同氏が共和党にとって中間選挙の最適なメッセンジャーではない可能性を浮き彫りにした。トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「民主党が掲げる『アフォーダビリティー』の問題は終わった」と投稿したが、側近は物価高対策を一層重視する必要があると認めている。

  他の共和党議員からは、党指導部が有権者の懸念を軽視すれば再び有権者の反発を招くとの警告も出ている。来年の中間選挙には出梅しない同党のベーコン下院議員は「アフォーダビリティーの問題は確かにある。ガソリン価格は下がっているものの、スーパーに行く多くの人々は改善を実感していない」と述べた。

  最新の世論調査では、有権者の不満が高まっており、小差で割れている下院の奪還を目指す民主党にとって追い風となっている。CNNが先週発表した世論調査によると、トランプ氏の支持率は37%、不支持率は63%だった。また、複数の調査で中間選挙を前に民主党支持者の方が共和党支持者よりも熱意がある傾向が示されている。

  民主党全国委員会(DNC)のケン・マーティン委員長は記者団との電話会見で「民主党は来年の議会奪還に向けて全速力で前進している」と話した。

政府閉鎖

  連邦政府機関の閉鎖も国民の不満を高めている。連邦政府職員が給与を受け取れず、食料支援が滞り、航空便の欠航が相次いでいる。世論調査では、共和党が一段と大きな責任を負っているとみられているが、トランプ氏は妥協に向けた民主党との会合を拒否している。その代わりに、共和党に対しフィリバスターを廃止して政府を再開させるよう求めているものの、党指導部は必要な票が足りないと主張している。

  それでもトランプ氏の盟友は26年を前に、18年当時にはなかった明確な優位点があると強調している。共和党を自身の政策課題の下にまとめ上げており、民主党側の勢いも16年のトランプ氏勝利後ほどではない。さらに、トランプ氏は同氏関連する政治活動委員会(PAC)を通じて多額の資金を集めている。

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  一部の共和党関係者は、先週の選挙結果は全米の状況を必ずしも反映していないと指摘する。民主党が強い州での結果が中心であり、共和党は候補者の弱さに悩まされたという。

Zohran Mamdani, New York City mayor-elect.NY市長選で当選した民主党のゾーラン・マムダニ氏

  共和党系の上院指導部基金は、ブルームバーグ・ニュースが確認した資金提供者向けメモで、民主党が予想を上回る成果を上げたものの、それは24年にトランプ氏が敗れた民主党優勢州での出来事だと指摘した。その上で、中間選挙を見据え、トランプ氏が勝利した州では共和党上院議員候補が優勢であり、上院の多数を維持できる強い立場にあると説明した。

  トランプ氏は今年の選挙戦では比較的距離を置いた姿勢を取った。ニュージャージー州やバージニア州では、共和党の知事候補と共に現地で選挙活動を行わず、オンライン集会を選んだ。民主社会主義者を名乗るゾーラン・マムダニ氏へのトランプ氏の強い反発は、マムダニ氏がニューヨーク市長選で勝利する原動力の一つとなったが、共和党はこの新市長を対立軸として利用する構えでもある。

  トランプ氏は6日、フロリダ州マイアミでのイベントで「全ての米国民が直面している選択はこれ以上明確になり得ない。われわれは共産主義か常識か、そのどちらかを選ぶことになる」と述べた。

選挙区再編

  トランプ氏は26年に向けた党勢強化の一環として、共和党と民主党の両陣営による選挙区再編競争を引き起こしている。テキサス州の共和党は、通常10年に一度の見直し周期を待たずに州の区割りを改定し、同党寄りの下院議席を五つ増やした。カリフォルニア州のニューサム知事はこれに対抗し、州内で民主党が5議席を上積みできる案に有権者に承認を得て、テキサス州の動きを相殺できる形とした。

  トランプ氏はさらに、ミズーリ州やインディアナ州など共和党支配の他州にもテキサス州に倣うよう促しており、これが民主党側の反発を刺激している。党内で最も人気の高い人物の1人であるオバマ元大統領は、共和党の動きを米国民主主義への「存亡の脅威」だと非難した。

  またトランプ氏は、郵便投票問題にも再び踏み込んでいる。現在では一般化したこの投票制度を制限する大統領令を発出すると公約し、20年大統領選でのバイデン前大統領への敗北は不正投票によるものだとする根拠のない主張を繰り返している。

  ジョージ・ワシントン大学メディア・公共問題大学院のディレクター、ピーター・ローグ氏は、法案推進のための遊説は通常の政治活動だが、トランプ氏はそれ以上のことを狙っていると指摘。 「勝つための一つの方法は、ルールを自分に有利なように変えることだ」とコメントした。

原題:Trump, Reeling from Election Night, Tightens Focus on Midterms(抜粋)

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