永瀬拓矢九段「次につながる」 名人戦初勝利 第4局指し直し局
大分県宇佐市の宇佐神宮で18日に指された第83期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催)の第4局指し直し局で藤井聡太名人(22)を破り、名人戦で初勝利を挙げた挑戦者の永瀬拓矢九段(32)。藤井名人とのタイトル戦では、先手番での初勝利ともなった。第5局も先手番になるため、反転攻勢に弾みをつける大きな勝利になった。終局後の報道陣との主なやりとりは次の通り。【新土居仁昌、丸山進】
――今の気持ちから。
永瀬九段 途中で全然ダメにしてしまったと思っていました。昨日の段階では先後が違う形を考えていたので、準備が薄い将棋をしてしまった。指してみたい将棋をやってみたが、直前の詰めは甘かった気がします。
Advertisement――指し直し局は角換わりの相早繰り銀。6九玉(27手目)が指してみたい手だったか。
◆先ほどの「詰めが甘い」というのは6九玉の話。指してみたいと思ってはいて、工夫ではあったが、後手の選択肢がすごく多いので、本譜は本譜でとても自然で、こちらがどうするのか分からなかったです。
――7一銀(62手目)で夕方の休憩。そのあたりの形勢判断は。
◆結構まずいのかなと思った。9五香~同香~9二飛が難しいという組み立てをずっとしていたんですけど、読んでみると4一玉でうまくいかない気がしたので、9五歩からやっていったのはうかつだったかもしれません。
――夜戦に入ってから、控室では藤井名人優勢と言われていたが、どういう方針だったか。
◆8六歩(67手目)と突くところは辛抱して行った。全然ダメだと思ったんですけど、一応形が残るように指したつもりではあります。
――その後、形勢が接近し、最終盤は二転三転。どのような思いで指していたか。
◆指している時は二転三転の感触はなかった。一瞬ちょっと勝ちがありそうな気もしたんですけど、複雑でよく分からなかったです。
――一瞬勝ちがある気がしたのはどのあたりか。
◆7四金打(117手目)が変だった気がする。代えて9二銀との比較が難しかった。本譜のように、4一桂と受けられてみると、見えない形にされている気がしたのでよく分からなかったです。
――勝ちになったと思ったのは。
◆6三銀(133手目)で即詰みの形に入ったので、勝ちかなと思いました。
――タイトル戦で藤井名人に先手番でブレークすることが課題と言っていた。初勝利を挙げたことについて。
◆ただ、途中から内容としては非常に悪い将棋を指してしまったので、その点はまだ全然改善できていないと思います。
――1勝を返した。王将戦でも第4局で踏みとどまったが、第5局に向けて。
◆(次も)課題の先手番ですので、精いっぱい準備をしたいと思います。
――最終盤、激闘になり、ねじり合いを制した手応えは。
◆ねじり合いの前にこちらがダメになってしまうケースが多いので、ねじり合いになってよかったとは思うんですけど、その前の段階で均衡を崩してしまった気がするので、それがとても課題だと思います。ねじり合いの方がよいとは思うので、ねじり合いにできるように準備と棋力を付けることが求められていると思います。
――価値ある1勝。その重さをどう感じるか。
◆一局でも多く教えてもらった方が勉強になるので、それが次につながることができてよかったと思います。