自閉症の代替医療、19種類について国際研究チームが効果を検証

CAIMの効果は科学的に確かな証拠があると言えますか?
主要な症状に対する高質の有効性証拠は見つかっておらず、多くは証拠の質が低いと評価されています。
CAIMの安全性についてはどう考えればよいですか?
安全性の評価が不十分で、有害事象の記録が不足している介入も多いことが指摘されています。
何に注意して選択・実践すればよいですか?
根拠の質と安全性を重視し、医療者と相談しながら現実的な目標で慎重に試すことが勧められています。

自閉症の子どもや大人の生活を少しでも楽にしたい、という思いから、いわゆる補完・代替・統合医療(CAIM)に目を向けるご家族は少なくありません。 サプリメントやホルモン、音楽や動物と関わる支援、脳への微弱な電気刺激など、その種類はとても幅広いです。

実際に、人生のどこかで何らかのCAIMを使ったことがあると答える自閉症の人はとても多いと報告されています。 しかし、「本当に効くのか」「安全なのか」という問いに、科学的にどこまで答えが出ているのかは、これまで全体像が見えづらいものでした。

今回ご紹介する研究は、こうした状況を整理するために、すでに発表されている多数のメタ解析(複数の臨床研究をまとめた統計的な検討)をさらに一本に束ねて再検討した「アンブレラレビュー」という手法で、CAIMの有効性と安全性の証拠を総点検しました。 研究はフランスのパリ・ナンテール大学や国立保健医学研究所(INSERM)、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンやケンブリッジ大学自閉症研究センター、スウェーデンのカロリンスカ研究所、アメリカのイェール大学やスタンフォード大学など、欧米の複数の大学・研究機関が連携して行われた国際的な共同プロジェクトです。

研究チームは、同じ基準で文献を選び、統計のやり方をそろえ直して効果を再推定し、さらに証拠の“質”そのものを厳しく評価しています。

ここで使われた評価のツールをやさしく説明します。 まず「アムスター2(AMSTAR-2)」は、メタ解析という論文がどれくらいしっかり作られているか(方法の透明性、偏りの有無など)を点検するチェック表です。 そして「グレード(GRADE)」は、示された効果の大きさだけでなく、その裏付けとなった研究にどれくらいの弱点があるか、結果にばらつきが大きすぎないか、対象や測定が目的に合っているか、偶然の可能性をどれくらい除けるか、などを総合して“証拠の確かさ”を四段階(とても低い/低い/中等度/高い)で判断する枠組みです。

研究チームは、このGRADEの考え方をアルゴリズム化し、すべてのメタ解析に同じ物差しを当てています。

この総点検の対象になったのは、合計53本のメタ解析レポート(その中の248個のメタ解析)で、扱われた介入は19種類にわたりました。

再推定の結果、主要な症状(社会的コミュニケーション、限定的で反復的な行動など)や関連症状について、「高い質の証拠で確かな有効性を示した」CAIMは一つも見つかりませんでした。

いくつかの介入では“効いていそう”に見える結果も出ていますが、その多くは“とても低い”質の証拠に支えられたもので、結論を出すには足りません。

具体例をいくつかご紹介します。

まず、話題になりやすいオキシトシン(点鼻などで使われるホルモン)については、子ども・大人を通じて主要症状への全体的な効果はごく小さく、統計的に有意ではありませんでした。

ただし例外的に、大人の「限定的・反復的な行動」については“小さな効果”が示されました。 とはいえ、これは一部の年齢層・一部の症状に限った結果で、他の主要症状へのはっきりした改善は確認されていません。

一方で、学校年齢の子どもにおける音楽療法、動物介在の支援、経頭蓋直流刺激(tDCS)、10代における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)、大人の身体活動などで、「効果量が大きい」と計算された項目がありました。

しかし、これらはいずれも“証拠の質”が“とても低い”という判定で、研究の規模が小さい、結果に幅がありすぎる、盲検化が難しいなど、信頼性を損なう要因が重なっていました。 つまり、「数字上は大きく見える効果」でも、今の段階では確かな結論にできないのです。

関連する話題としてよく耳にするメラトニン(睡眠リズムを整える目的で用いられることが多い)については、学校年齢の子どもで睡眠の質や量を改善する“かもしれない”という結果が並びましたが、ここでも証拠の質は“とても低い”と判定されており、慎重な解釈が必要です。 安全性については、少なくともこの範囲では有害事象の明確な増加は見られませんでしたが、これも確からしさの評価が低いままです。

安全性という点は、この総点検で最も大きな空白として浮かび上がりました。 多くのCAIMで、受け入れやすさ(途中でやめずに続けられるか)、副作用や有害事象の記録がそもそも十分に報告されていませんでした。

とくに、脳刺激のように理論上リスクがあり得る介入では、思わぬ影響を見落とさないためにも、安全性の系統的な評価が今後の最優先課題です。

なぜ「はっきり効く」と言い切れるCAIMが見つからなかったのでしょうか。

研究チームは、主に二つの理由を指摘しています。

ひとつは不精確さです。 対象者の数が少なかったり、推定された効果の幅(信頼区間)が広すぎたりすると、偶然の影響を排除できず、結論が揺らぎます。

もうひとつは方法上の限界です。 たとえば、介入を受ける側・評価する側のどちらにも“何をしているか”を分からないようにする「盲検化」は、音楽や運動、動物と触れ合う支援などでは本質的に難しく、期待や先入観の影響を完全には排除できません。

こうした事情が重なって、効果の推定に偏りが入りやすくなります。

また、同じテーマを扱ったメタ解析同士でも、結論が一致しない場合が少なくありませんでした。 効果の大きさや有意差の有無、証拠の質の評価が、重なり合うメタ解析間で揺れる例が多数見られ、これも“何が本当か”を分かりにくくしている要因です。

研究チームは、この不一致を避ける助けとして、今回の総点検で得られた“最も質の高い証拠に基づく”結果だけを整理して公開するオンラインの閲覧サイトを用意し、だれもが確認できる形にしました。 https://ebiact-database.com/

では、家族や支援者はどう考えればよいでしょうか。

第一に、“効くかもしれない”という話題を目にしたときは、その根拠の“質”に目を向けることが大切です。 効果量が大きく見える数字でも、参加者が少ない研究が中心だったり、方法上の弱点が大きかったりすれば、今の段階では「確かな選択肢」とは言えません。

第二に、安全性の情報がそろっていない介入は、たとえ短期的に良さそうに見えても、慎重に扱う必要があります。

第三に、生活の中で実践しやすく、医学的にも安全性が高いものについては、医療者と十分に相談しながら、現実的な目標設定のもとで試みる、という順番が大切です。

研究者に向けた宿題もはっきり示されました。

十分な参加者数を確保し、評価者が介入内容を知らない形での測定を工夫し、アウトカム(評価指標)を標準化し、長期の有効性と安全性を追跡する――こうした基本が、CAIMの可能性を正確に測るために不可欠です。 将来、より厳密な研究から「特定の人に、特定の症状に対して、一定の効果がある」と示される介入が出てくる可能性はあります。

そのためにも、今は誇張や過度の期待ではなく、正確さを重視した積み上げが求められます。

補完・代替・統合医療への関心は、希望や実感の物語と結びつきやすい領域です。 だからこそ、数字の裏にある“どれだけ確かな数字か”を見る視点が欠かせません。

今回の大規模な総点検が示したのは、「効く」という確かな裏付けがまだ整っていないという現実と、これからの研究が満たすべき条件でした。

ご家族や支援者のみなさんが、情報の質に目を向け、医療者と対話しながら、安全と現実性を優先して選択していくこと――それが、日々の生活を少しずつ良くしていく一番の近道だと、考えます。

【この研究論文に基づく、補完・代替・統合医療(CAIM)19種類と評価のまとめ】

  • オキシトシン → ◯(成人の反復・限定的行動に“小さな効果”、GRADE中等度。ただし他の症状は効果なし)
  • 多価不飽和脂肪酸(Fatty acids) → ◯(有害事象が増えないことがGRADE中等度で確認。ただし主要症状の改善効果はなし)
  • 音楽療法(Music therapy) → △(大きな効果量が出たが証拠の質はとても低い)
  • 動物介在(Animal-assisted) → △(大きな効果量が出たが証拠の質はとても低い)
  • 経頭蓋直流刺激(tDCS) → △(大きな効果量が出たが証拠の質はとても低い)
  • 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS) → △(大きな効果量が出たが証拠の質はとても低い)
  • 身体活動(Physical activity) → △(大きな効果量が出たが証拠の質はとても低い)
  • メラトニン(Melatonin) → △(睡眠の質・量改善に大きな効果量、ただし証拠はとても低い。有害事象リスク増加は認めず)
  • ビタミンD(Vitamin D) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • スルフォラファン(Sulforaphane) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • 特定の食事療法(Specific diet) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • 感覚統合(Sensory integration) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • セクレチン(Secretin) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし、安全性も懸念あり)
  • プロバイオティクス(Probiotics) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • N-アセチルシステイン(N-Acetylcysteine) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • L-カルノシン(L-Carnosine) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • L-カルニチン(L-Carnitine) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • ハーブ療法(Herbal medicine) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)
  • 鍼(Acupuncture) → ✕(効果を裏づける十分な証拠なし)

(出典:Nature Human Behaviour DOI: 10.1038/s41562-025-02256-9)(画像:たーとるうぃず)

私は代替医療の多くには疑いの目を向けてしまいますが、

うちの子には眠れるようにメラトニンを飲ませていますし(親子ともにとても助けられました)、ここでの音楽療法とイコールではないかもしれませんが、音楽による療法は素晴らしいものだと思っています。

なので、この研究で評価が微妙であったものの多くが、効果があったとされても、これまでの研究では「証拠の質が低い」「証拠なし」が多いためであることにも注目してください。

一方で、今回の研究の対象にもされていない、危険なエセ医療には十分に注意してください。

正しい医療機関からの正しい医療を頼ってください。

自閉症の補完・代替療法。効果がないどころか危険なものも

(チャーリー)

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