Epic Gamesのボスらが「SteamストアのAI使用開示欄は不要説」唱えるも、Valveスタッフが真っ向反論。生成AIが業界に溶け込むなかで
Valveのとあるスタッフが、SNS上にて「SteamのAI生成コンテンツの開示は不要」との意見に反論。Epic GamesのCEO発言から繋がる生成AIについての議論が、過熱を見せている。PCGamesNが伝えている。
現在、AIはさまざまな分野にて目覚ましい発展・普及を遂げている。分析からコンテンツ制作まで、多様なかたちでAIが利用されつつも、分野によってはその賛否を問う激しい議論が交わされている。ゲーム業界もご多分に漏れず、とりわけテキスト・音楽・画像・アセットなどコンテンツの生成をおこなう「生成AI」のゲーム開発への利用については各プラットフォームが注視している現状だ。生成AIを利用したゲーム作品も世に多く出ているものの、AIが人の作った作品を“盗用”するといった著作権侵害への懸念など、倫理上の問題は大きな議題として残り続けている。
『Call of Duty: Black Ops 7』、開発プロセスに生成AIを導入しているというSteamではストアページにて、そうした生成AI利用ゲームについて明示する「AI生成コンテンツの開示」欄を設けている。消費者が、ストアページで生成AIが作品に使われているか、どのように使われているのかを把握できる取り組みだ。しかし、そうした表示について“不要論”を唱える者もおり、SNS上などで議論が活発となっている。
最近もっとも注目を集めたのは、Epic GamesのCEOであるTim Sweeney氏による発言だ。Sweeney氏は、AI技術によるゲーム開発の発展に楽観的であり、概ねAI利用を推進する意見を以前より示している。同氏は11月14日、シネマティックデザイナーであるMatt Workman氏による「Steamの生成AI開示不要論」を唱えるX投稿に反応。Workman氏に賛同を示し、「将来的にほぼすべてのゲームがAIを使うだろうに、開示させることは無意味だ」との内容を投稿した。
Agreed. The AI tag is relevant to art exhibits for authorship disclosure, and to digital content licensing marketplaces where buyers need to understand the rights situation. It makes no sense for game stores, where AI will be involved in nearly all future production.
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) November 26, 2025
このSweeny氏の投稿にはまたたく間に賛否両論が寄せられることとなった。この議論の延長線上として、Workman氏の上述のX投稿に対して、Steam運営元であるValveのスタッフが、反対の意見を投じることとなる。アーティストとして『Counter-Strike 2』などに携わる、Ayi Sanchez氏だ。
Sanchez氏はWorkman氏の「生成AI開示不要論」を真っ向から否定。一連の投稿のなかで「食品の成分表示を消せというようなもの」と例えて必要性を主張した。またSanchez氏は、AIによる“文化のロンダリング”や、著作権侵害や低品質コンテンツの粗製乱造などすべきでないとコメント。人間のクリエイターによるものづくりの重要性を解き、「賢い消費者は、偽物より本物を選んでくれるはずだ」とした。
Sanchez氏のこの意見が、ふたたび議論に拍車をかけることとなった。Sweeny氏の発言時同様に、SNS上では賛否両論が激しく交わされ、Sanchez氏をリプライに巻き込み長い論戦を繰り広げるユーザーも見られる状況だ。こうした反応を受けてか、現在Sanchez氏の投稿は、同氏のXアカウントごと削除されている。
『Call of Duty: Black Ops 7』、開発プロセスに生成AIを導入しているという国内同様、海外においてもコンテンツ制作における生成AI利用の是非は、広い関心事となっていることがわかる。特に焦点とされる著作権侵害については、「ウルトラマン」の円谷プロダクションが中国にてAI生成画像による著作権侵害を訴え、被告となったAI企業に対して現地裁判所より損害賠償と防止措置の命令が下された例があるほか、著作権侵害を訴える類似の訴訟も起きている。
【UPDATE 2025/11/29 21:43】円谷プロダクションの判例について補足
その一方、ゲーム開発における生成AI・機械学習の導入も進んでおり、今後さらに活用が広まるであろう傾向も見られる。最近の例としては、人気作『ARC Raiders』が生成AIをロボットのモーションやテキスト読み上げなど一部コンテンツに利用。ただ、ヴィジュアルといった部分には生成コンテンツを利用していない、倫理観に気を配った運用をしていることも強調している。ほかには、『Call of Duty: Black Ops 7』が開発の促進のため生成AIを利用している。効率化などのために開発プロセスで生成AIを利用しているゲーム作品はほかにも枚挙に暇がない(関連記事)。
AI技術の発展に対し、EUではAI規制法の施行といった対応も進められているものの、日・米含む各国の法整備が追いついていない現状も生成AI技術を取り巻く不安定な情勢の背景にあるだろう。「生成AIが使われているか知りたい」という消費者の願いに応えるSteamの「生成AI開示」は、はたして不要と言い切れるだろうか。ゲーム開発における生成AIが、今後どのような分野と倫理のもとで運用されていくかも注視したい。