トランプ関税、米消費者の反発招くリスク-共和支持者も反応冷ややか
トランプ米大統領は輸入品に新たな関税を課し、製造業者に米国への生産移転を迫るという取り組みを進めているが、それに対し、米消費者からは冷ややかな反応が示されている。
ブルームバーグ・ニュースの委託でハリス・ポールが実施した世論調査によると、米成人の約60%は、トランプ関税が物価上昇につながると予想。約44%は関税が米経済に悪影響を及ぼすと回答している。
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共和党支持者の間でも、トランプ氏の貿易政策には懐疑的な見方が多い。関税が経済的利益をもたらすとの回答は共和党支持者の約半分にとどまった。同世論調査は2月6-8日に成人2121人を対象に実施。誤差の範囲は2.4ポイントとなっている。
How do you expect the additional tariffs to impact your household expenses?
Source: Harris Poll
トランプ氏が打ち出している関税措置の多くは、実際にはまだ発動されていない。それでも今回の調査結果は、同氏の関税計画が国内で政治的反発を招くリスクがあることを示唆。この問題に対するトランプ氏のメッセージは多くの消費者の心に響いていないことも映し出している。
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トランプ氏は新たな米国の繁栄を約束し、物価上昇に対する国民の怒りに訴えることで、ホワイトハウス返り咲きを果たした。関税については、製造業の雇用を米国に戻すためだけでなく、政府の歳入を増やし、減税の財源を得るための解決策としても打ち出している。
しかしエコノミストの間では、関税は物価上昇と成長鈍化につながると指摘する声が以前から出ていた。
米経済の屋台骨を支える消費者にとって、関税から受ける影響は顕著なものとなりそうだ。ピーターソン国際経済研究所によれば、中国やメキシコ、カナダに対する関税賦課により、米国の一般的な家庭は年間1200ドル(約18万円)超の負担を強いられる可能性がある。
具体的な関税策が発表される以前から米経済に亀裂が入り始めていた面もある。インフレ率は1月に再び上昇し、米金融当局の目標である2%を上回ったままだ。消費者心理は弱まり、2月のミシガン大調査では、関税不安で長期のインフレ期待が30年ぶりの高水準となった。別の統計でも、2月の消費者信頼感指数は2021年8月以来の大幅な落ち込みを記録した。
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世論調査では、回答者の61%が、過去1カ月で食料品の値上がりが目に付いたと回答。1月の食品価格は卵を除けば小幅上昇にとどまったものの、消費者はスーパーマーケットでの価格動向に引き続き敏感であることを調査結果は示している。
How have grocery prices changed compared to last month?
Source: Harris Poll
エコノミストが指摘するトランプ関税に関する懸念の多くは企業の投資に関するものだ。通商政策に対する不透明感から、企業は設備投資や雇用計画を保留することになる。ただ、関税は個人消費にも冷や水を浴びせる可能性がある。消費者は物価上昇への懸念から慎重になることが多いからだ。
「すでに物価が高いので、消費者はインフレについてはかなり神経をとがらせている」と、ブルームバーグ・エコノミクスのイライザ・ウィンガー氏は指摘。「インフレ率に関してはどんなニュースにも消費者は敏感だ」と語った。
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原題:Trump Risks American Consumer Backlash Over Tariffs, Poll Shows(抜粋)