独仏共同の次期主力戦車開発計画、共通のプラットフォーム採用を放棄か
ドイツとフランスは次期主力戦車(MGCS)計画について「単一の車体を使用する」と約束していたが、ドイツ国防省は独仏防衛・安全保障理事会後に「プラットフォームに依存しない技術を開発する」と発表し、独メディアは「もはや当初構想の断片しか残っていない」と指摘した。
参考:Deutschland und Frankreich stärken strategische Zusammenarbeit 参考:Conclusion of the Franco-German Defence and Security Council. 参考:Main Ground Combat System – Deutschland und Frankreich beerdigen die Grundidee einer gemeinsamen Entwicklung
ドイツのメルツ首相、ピストリウス国防相、ヴァーデフール外相、フランスのマクロン大統領、ヴォートラン国防相、バロー外相はネルヴェニヒ空軍基地で独仏防衛・安全保障理事会を開催し、ドイツ国防省は17日に発表した会談結果のプレスリリースの中で「戦略核協力の一環としてドイツ軍が秋に行われるフランスでの演習に参加する」「次世代戦闘機、無人システム、様々なセンサー、指揮統制システムとの情報供給や相互作用を強化する戦闘クラウド=SoSのネットワーク開発で協力する」「次期主力戦車(MGCS)計画の枠組みの中で主力戦車や有人・無人装甲車両が連携するためのプラットフォームに依存しない技術を開発する」と発表。
エリゼ宮も会談結果のプレスリリースを発表しているが、ドイツ国防省が発表したプレスリリースの方がMGCSについて踏み込んだ表現を行っており、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも18日「ドイツとフランスはMGCSの基本開発構想を放棄した」「MGCSは共通の車体をベースとしたネットワーク型の戦闘プラットフォームを共同開発する予定だったが、現在はプラットフォームに依存しない技術のみに言及しており、FCASと同様に両国は地上戦分野でも異なる道を歩み始めている」と指摘した。
ドイツとフランスはレオパルト2とルクレールを更新するため次期主力戦車=Main Ground Combat System(MGCS)計画を立ち上げ、2024年4月に署名された覚書には「MGCSプラットフォーム・ファミリー全体のベースとして単一の車体を使用する」と明記されていたが、ドイツ連邦カルテル庁は誰の目にもFCAS計画の破綻が明確になり始めた2025年12月「ラインメタルとKNDS Deutschland(実質的にはKMW)の合弁事業拡大を承認した」と発表。
この発表内容を端的に言うと「両社はプーマ事業のためPSM Projekt System&Management GmbHを設立済みだが、このPSMの事業を『次期主力戦車の暫定的な解決策開発』に拡張する」という意味で、ドイツ連邦カルテル庁もプレスリリースの中で「PSMの枠組みは新型主力戦車の開発・納入契約にも活用される」「この新型戦車はドイツとフランスが共同開発する新型戦車が2045年に納入されるまでの暫定的な解決策となる」と言及。
hartpunktも当時「ドイツ軍は2030年代初頭に現在の脅威レベルに適応し、Leopard2A8よりも近代的で追加能力を備えた主力戦車が必要になると言及してきた」「この新型戦車はMGCSまでのブリッジ・ソリューションとして機能することを目指し、運用期間は約25年を想定している」「この新型戦車で旧式のLeopard2を置き換えると予想されている」と報じたが、この新型戦車がLeopard2A8をベースに開発されるのか、0ベースで開発するのかは不明だ。
出典:Rheinmetall
フランスのヴォートラン国防相も2026年4月「現行のルクレールは2040年まで運用可能だが、MGCSプロジェクトは約10年かかる見込みで暫定的な戦車が必要になるだろう。現時点で暫定的な戦車の取得はまだ決定されていないが、KNDS DeutschlandかKNDS Franceのプラットフォームを基盤とし、フランス設計の砲塔を搭載したものになるだろう」と言及し、こちらも暫定的な戦車の具体的な構想や仕様について不明だが、両国は「FCAS計画の有人戦闘機開発を中止する」と正式発表する前からMGCSについても異なる道を歩み始めていたため、プラットフォームに依存しない技術とはSoSのネットワーク開発のことだろう。
hartpunktは今回の発表を受けて「MGCSの動向に注視していた専門家らの間では公然の事実として『両国の協力関係が円滑とは言えない状況』と見なしてきた」「両国がMGCS導入までのギャップを埋める新型戦車開発の意思を公然と示したことで、2024年4月に署名された形でのMGCS計画をこれ以上維持するのは不可能だと確実視していた」「6月にFCAS計画の有人戦闘機開発を中止すると発表したことで『MGCS計画も終わった』という声が増えていた」と指摘。
出典:AIRBUS
“MGCSの当初構想と今回会談後に発表された計画を比較すると、もはや当初構想の断片しか残っていない。この残骸を引き続き「Main Ground Combat System」と呼ぶことは、事情に通じたあらゆる人々の知性を侮辱するに等しい。ベルリンとパリが公言しなくてもドイツ国防省の声明通りまで計画が縮小されるなら「共同開発」という基本構想は葬り去られたことを意味する。今後、MGCSの残骸がどのように呼称されようとも、ドイツ軍の機甲部隊にとっては前向きな進展となるはずだ。我々はフランス側の要求に配慮することなく自国が将来性があると見なすシステムの開発を推し進める機会を得たからだ”
この結果は政治的、外交的、軍事的、産業的、そして安全保障環境の大幅な変化が相互作用したものなので「何が悪かったのか」を一言で表すのは困難だが、3つほど要因を挙げるとすれば「欧州が安全保障上のリスクに直面すると予想される時期にMGCSの量産車両は全く間に合う見込みがない」「FCASとMGCSの産業協力は密接にリンクしていた」「欧州の再軍備計画による新型戦車の需要増で単独開発でもビジネス上の機会が見込めるようになった」となり、特にドイツは莫大な資金を国防分野に投資する見込みなので共同開発によるコスト分担の必要性が大きく低下した。
出典:Bundeswehr/Jana Neumann
結局のところ「資金や需要に困らなくなったため調整に時間のかかる共同開発より、自国のニーズのみを反映させて素早く新型戦車を実用化し、Leopard2A8以降の需要を取り込んで地上戦分野のプラットフォームにおける主導権を単独で握りたい」という側面もあり、非常にビジネス的で状況の変化を反映した結果と言えるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Bundeswehr