AIでノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビス氏のスピーチ : 読売新聞
「デジタル生物学」の時代へ
2024年のノーベル化学賞を受賞した英グーグル・ディープマインド社の最高経営責任者デミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏。たんぱく質の立体構造を予測する人工知能(artificial intelligence)モデル「アルファフォールド」の開発についての講演も終盤だ。AI技術の現在と将来に話は移る。
レンズを動かしてより広い範囲を見る「ズームアウト」は日本語でもよく使われる。ここでは比喩として用いられ、take a step back も同義語として登場する。
zoom は古くは大きな深い音を表し、20世紀には飛行機の音や素早い動きにも広がった。カメラの望遠レンズも、リングを回した時の素早い動きからそう呼ばれるようになったようだ。また、車がビュンと走る様子も子どもは zoom と表現すると、米国出身の同僚は教えてくれた。
反対に、対象を拡大して見るのは zoom in で、目的語を伴う場合は前置詞 on を付ける。focus on … や close in on … なども同じ意味で、まとめて覚えよう。
講演中、何回も登場した combinatorial search(組み合わせ探索)については、木のように枝分かれした図をスライドに映し、幹から大中小の枝に至るたくさんの組み合わせから最適な解を見つけることだと説明する。囲碁でも化学反応でも基本は同じだという。
さて、AIの活用で今後、生物学は新しい段階に入るとハサビス氏は話す。
“So that means, you know, if we may be entering perhaps this new era of what I like to call ‘digital biology.’ I’ve always thought biology at its most fundamental level can be thought of as an information processing system.” (つまり、私たちは「デジタル生物学」と言える新しい時代に入っているのかもしれません。個人的には、生物学は根本的には情報処理システムだと考えていました)
生命の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)は、遺伝情報の保存庫であり、DNAから作られる多様なたんぱく質や体の組織も、刺激(入力)に対する反応(出力)という情報処理を行っている。専門家ならではの本質を捉えた表現だ。
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