敵ジェット推進無人機の増加により突破数は過去最大:ウクライナ迎撃戦闘2026年9月分の傾向(JSF)

 2026年9月にウクライナ空軍司令部が報告したロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計で6388飛来以上(ドローン6305機+巡航ミサイル56発+弾道ミサイル27発以上)でした。先月の8月(分析記事)は合計で5216飛来以上(ドローン5084機+巡航ミサイル47発+弾道ミサイル85発以上)でしたので、ドローンが1.24倍に増えています。

 なおミサイルの飛来数は8月11日以降にウクライナ空軍司令部の毎朝の集計報告から弾道ミサイルの情報は意図的に除外するよう発表基準が変更(記事)されており、もはやミサイル飛来数は分からなくなっています。ただし8月は弾道ミサイルだけでなく巡航ミサイルの情報も一部秘匿されていましたが、9月は巡航ミサイルについては従来通りの発表に戻っています。

 このため、ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃については弾道ミサイル系については数の推移はもう分からないので、ドローンと巡航ミサイルの数についてのみ分析の対象となります。

○2026年9月:6388飛来以上5288排除以上

各種ミサイル:83飛来以上65撃墜以上2未到達

  • 高速ミサイル:7飛来以上(27飛来以上)20撃墜以上2未到達 
  • 低速ミサイル:56飛来45撃墜 ※阻止率80% 

※高速ミサイルは27排除(25撃墜+2未到達)は少なくとも確定しているので、27飛来も少なくとも確定しており、27飛来以上と見做せる。ただし発表では7飛来分しか報告されていない。

※高速ミサイル:超音速以上を発揮する弾道ミサイルと転用ミサイル(地対空ミサイルの対地攻撃転用など)を纏めて「高速ミサイル」と分類する。

※低速ミサイル:亜音速巡航ミサイル。高速ミサイルとの比較の意味での低速。

各種ドローン:6305飛来5223排除 ※阻止率83%

  1. 自爆無人機と囮無人機:6287飛来5179排除
  2. バンデロール徘徊弾薬:18飛来以上44撃墜以上(無人機と混在)

※プロペラ推進無人機:自爆無人機のシャヘド131(ゲラン1)とシャヘド136(ゲラン2)、囮無人機のガーベラとパロディ。

※ジェット推進無人機:既に飛来ドローンの半数はジェット型のゲラン4とゲラン5であり(ゲラン3は失敗作で量産停止)、特にゲラン5は細長い形状で事実上の低コスト巡航ミサイル。なおジェット型は全て自爆無人機で、今のところジェット囮無人機は確認されていない。

※バンデロール徘徊弾薬:事実上の低コスト巡航ミサイル。ジェット推進無人機と速度差があまり無いためレーダー観測で見分けが付かず、飛来報告と撃墜報告の数が合っていない。おそらく実際の飛来数・撃墜数は報告数よりも遥かに多く、無人機として数えられて混じっている割合が多いとみられる。

※9月の大規模な攻撃。なおドローン攻撃は毎日行われている。

高速ミサイル9月傾向:飛来数は不明

  • イスカンデルM×2飛来以上?撃墜
  • イスカンデルM/KN-23×?飛来?撃墜
  • イスカンデルM/S-400×2飛来以上7撃墜
  • イスカンデルM/S-400/KN-23×?飛来8撃墜以上
  • イスカンデルM/S-400/KN-23/オーニクス×?飛来2撃墜以上
  • ツィルコン×2飛来以上4撃墜以上2未到達
  • ツィルコン/オーニクス×1飛来以上1撃墜以上
  • オーニクス×?飛来?撃墜

〇合計:7飛来以上20撃墜以上2未到達(月間13回飛来) 

※高速ミサイル:超音速以上を発揮する弾道ミサイルと転用ミサイルを纏めて「高速ミサイル」と分類する。

※短距離弾道ミサイル:イスカンデルM、KN-23(北朝鮮製)

※極超音速対艦ミサイル:ツィルコン ※対地攻撃転用

※超音速対艦ミサイル:オーニクス ※対地攻撃転用

※地対空ミサイル:S-400 ※対地攻撃転用

※対レーダーミサイル:Kh-31P ※対レーダー攻撃用。9月1日に飛来報告があるが未到達。当記事では集計に入れない。

 弾道ミサイルを中心とする高速ミサイルは8月11日以降にウクライナ空軍司令部の発表情報が制限されているため、飛来数も撃墜数も不明です。ただし完全に情報が遮断されているえわけではなく、数が秘匿されており、飛来したことそのものと種類は報告が続いています。また撃墜成功時には従来通りに飛来数と撃墜数を報告している場合があります。

低速ミサイル9月傾向:先月に続き飛来数は低調

  • Kh-101/イスカンデルK/×32飛来31撃墜
  • カリブル×16飛来12撃墜
  • Kh-59/69×8飛来2撃墜

○合計:56飛来以上45撃墜 ※阻止率80%(月間6回飛来)

※低速ミサイル:亜音速巡航ミサイル。高速ミサイルとの比較の意味での低速。

※Kh-101:空中発射巡航ミサイル(戦略爆撃機)

※カリブル:艦船発射巡航ミサイル(水上艦と潜水艦)

※Kh-59:空対地ミサイル(戦術戦闘機)

※Kh-69:空対地ミサイル(戦術戦闘機)

 巡航ミサイル飛来数は9月(56発)と8月(暫定50発)でほぼ変わらず、年間を通した月間平均の約100発と比べて約半分の飛来数です。巡航ミサイルの生産能力が落ちていないとすれば冬季の電力インフラ攻撃に備えて使用を減らして、在庫の備蓄を増やす意図の可能性があります。あるいは単に7月(204発)の大量使用の反動が出ているだけかもしれません。最近三カ月間の7~9月(310発)で見ると年間を通した月間平均の約100発とほぼ変わりません。

 なお9月はKh-101巡航ミサイルの使用は僅か1回(9月8日記事)しか記録されておらず、巡航ミサイルの二桁以上の発射(Kh-101とイスカンデルKの混在報告で32飛来)もこの時だけでした。また9月29日にロシア極東アムール州でウクラインカ航空基地を飛び立ったばかりのTu-95MS爆撃機が墜落事故を起こしており、Kh-101巡航ミサイルを用いた攻撃にしばらく影響が出るかもしれません。

巡航ミサイルの飛来数(撃墜数+未到達+突破数)

筆者作成図:ロシア軍の巡航ミサイルの飛来数の推移。灰色:撃墜数、薄橙色:未到達、桃色:突破数:2025年10月~2026年9月

巡航ミサイル阻止率(%)の推移

筆者作成図:巡航ミサイル阻止率(%)の推移:2025年10月~2026年9月

 9月の巡航ミサイル迎撃では阻止率がやや落ちていますが、年間を通して見ると平均レベルの範囲に収まっています。なお亜音速で飛翔する巡航ミサイル(800~900km/h)は後述のジェット推進無人機(500~600km/h)よりも高速です。

各種ドローン9月傾向:飛来数増加で突破数過去最大

  • 各種ドローン:6305飛来5223排除 ※阻止率83%
  1. 自爆無人機と囮無人機:6287飛来5179排除(半数がジェット型)
  2. バンデロール徘徊弾薬:18飛来以上44撃墜以上(無人機と混在)

※プロペラ推進無人機:自爆無人機のシャヘド131(ゲラン1)とシャヘド136(ゲラン2)、囮無人機のガーベラとパロディ。

※ジェット推進無人機:既に飛来ドローンの半数はジェット型のゲラン4とゲラン5であり(ゲラン3は失敗作で量産停止)、特にゲラン5は細長い形状で事実上の低コスト巡航ミサイル。なおジェット型は全て自爆無人機で、今のところジェット囮無人機は確認されていない。

※バンデロール徘徊弾薬:事実上の低コスト巡航ミサイル。ジェット推進無人機と速度差があまり無いためレーダー観測で見分けが付かず、飛来報告と撃墜報告の数が合っていない。おそらく実際の飛来数・撃墜数は報告数よりも遥かに多く、無人機として数えられて混じっている割合が多いとみられる。

長距離ドローン攻撃の飛来数(排除数+突破数)

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン攻撃の飛来数(灰色:排除数、青色:突破数):2025年10月~2026年9月

ドローン阻止率(%)の推移

筆者作成図:長距離ドローン阻止率(%):2025年10月~2026年9月

長距離ドローン攻撃の突破数

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン攻撃の突破数:2025年10月~2026年9月
  • 2026年09月:1082突破:6305飛来5223排除 ※阻止率83%
  • 2026年08月:850突破:5084飛来4234排除 ※阻止率83%
  • 2026年07月:658突破:4956飛来4298排除 ※阻止率87%
  • 2026年06月:577突破:5750飛来5173排除 ※阻止率90%
  • 2026年05月:674突破:8073飛来7399排除 ※阻止率92%
  • 2026年04月:724突破:6585飛来5861排除 ※阻止率89%
  • 2026年03月:629突破:6462飛来5833排除 ※阻止率90%
  • 2026年02月:649突破:5059飛来4410排除 ※阻止率87%
  • 2026年01月:732突破:4452飛来3720排除 ※阻止率84%
  • 2025年12月:984突破:5131飛来4147排除 ※阻止率81%
  • 2025年11月:886突破:5446飛来4560排除 ※阻止率84%
  • 2025年10月:1077突破:5298飛来4221排除 ※阻止率80%

参考:囮無人機が混じっていない2024年6月以前(1年分)

○2023年7月~2024年6月:682突破:4433飛来3751撃墜

  • 1カ月分平均:約57突破:約369飛来約313撃墜 ※阻止率85%

※囮無人機は2024年7月から確認され始め、2024年10月から大規模投入が始まった。

※ジェット推進無人機はこれまで極小数の投入が続いていたが、2026年6月から増え始めて、8月に一挙に増加した。既にジェット推進無人機は全体のドローン飛来数の半分近くあるいはそれ以上を占めている可能性が高い。

 長距離ドローン攻撃については飛来数が5月(8073飛来)から減少傾向にありましたが、9月(6305飛来)にはっきりと増加に転じました。9月のドローン6305飛来はこの戦争の通算で4番目に多い数字です。そしてジェット推進無人機の増加によって突破数も増えており、9月のドローン1082突破はこの戦争で最大の数字です。

 ただしロシア軍は長距離ドローンによる昼間攻撃を多用するようになってきており、「集計報告時点で数機のドローンがまだ滞空中」と報告されるケースが増えています。この記事ではこの報告時点で滞空中のドローンを数が分からないので突破した扱いとしているので、実際の阻止率はもう少し高いものと考えられます。

 ロシア軍が長距離ドローンによる昼間攻撃を多用し始めたのは、ドローンがジェット化で高速化して目視照準の対空機銃を振り切れるようになると、夜間攻撃と昼間攻撃の突破率の差が縮まったからになります。以前の鈍足のプロペラ推進無人機では昼間攻撃の突破率が劇的に悪くなるので(目視照準の対空機銃が多数迎撃に参加できるため)、ほぼ夜間攻撃でした。

9月1日キーウ:S-400の不発弾頭を回収処分

ウクライナ国家警察キーウ本部より、ロシア製S-400ミサイルの不発弾頭を無力化した

9月2日オデーサ:MiG-29戦闘機がR-60空対空ミサイルでバンデロールを撃墜

9月2日オデーサ:携行地対空ミサイルでバンデロールを撃墜

9月8日キーウ:弾道ミサイルが着弾

※前日に米国使節団(ウィトコフとクシュナ―)がキーウを訪問して、帰ったら直ぐにロシア軍は大規模攻撃を開始。

9月8日キーウ:巡航ミサイルを撃墜

9月8日キーウ:「極超音速ミサイル」の残骸を回収

ウクライナ国家警察よりキーウで「極超音速ミサイル」の残骸を回収

2026年9月8日に「キーウのダルニツキー地区で、ロシア製の極超音速ミサイルの使用済みロケット部品を回収した」とウクライナ国家警察キーウ本部が報告している。しかし同日にウクライナ空軍司令部はツィルコン極超音速ミサイルの飛来報告をしていない。ただしイスカンデルM/KN-23/S-400/オーニクスの報告はある。そしてこの部品はどう見てもイスカンデルM/KN-23やオーニクスのものではない。すると残るのはS-400かツィルコンの可能性が高いが、S-400の48N6DMとは細部は異なっている。

※出典:ウクライナ国家警察キーウ本部

9月14日ポーランドのヤロスワヴィエツ:ガーベラ2囮無人機?

※ポーランドのバルト海沿岸のヤロスワヴィエツで発見されたドローンは、形状からロシア軍のガーベラ無人機の新しい改良型「仮称:ガーベラ2」の可能性が高い。ヴワディスワフ・コシニャク=カミシュ副首相兼国防大臣の投稿。

9月24日キーウ:イスカンデルM弾道ミサイルの不発弾を回収

イスカンデルM弾道ミサイルの不発弾を回収、写真は尾部の操舵ユニット。ウクライナ国家非常事態庁キーウ本部

9月24日キーウ:イスカンデルM弾道ミサイル発見場所は集合住宅の庭

※ミサイルの尾部ユニットだけでなく胴体のロケット推進部分(推進剤は使い切っている)も地面に食い込んでいることが分かる。おそらく弾頭は地中の奥深くに埋まっている。

9月30日:F-16戦闘機が空対空ミサイルでジェット無人機を撃墜

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