「ロシア滅亡」は歴史が証明している…ウクライナ戦争で"世界一の無能"プーチンが犯した「最大のミス」【2026年9月BEST】
ウクライナ戦争が終結した後のロシアはどうなるのか。元河合塾世界史講師の神野正史さんは「たとえロシアが全面的に戦争に勝利しようとも、ロシアは数年で解体、プーチンはかならず失脚する。これは過去の歴史が証明している」という――。
※本稿は、神野正史『世界史の名将たちの「戦略と戦術」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
人類が繰り返してきた「愚」
人は、目の前の“小さな損失”を取り返そうとして引き際を誤り、どんどん傷口を広げて破滅していくことがよくあります。
博打で身を亡ぼす者などはその好例でしょう。
紀元前5世紀の「ペロポンネソス戦争」もその典型で、27年間も戦がつづけば、両陣営ともに民は疲弊し、経済は破綻し、社会は紊乱びんらんして、もはや戦えるような状況ではなくなっていましたが、「ここまでの犠牲を払って、今さら退くわけにはいかぬ!」とお互いに意地になって際限なくつづくことになったのでした。
しかし、これこそが破滅への一里塚。
前404年、ようやく戦が終わり、一応「スパルタの勝利」ということで幕引きとなりましたが、戦に敗けたアテネはもちろん、勝ったスパルタですら社会・経済・軍事ともにガタガタとなっており、彼らに覇権を維持する力はなく、ほどなく衰亡していくことになりました。
なんのための戦勝か。
たとえ目の前の戦争に勝った(戦術的勝利)ところで、それによって衰亡してしまった(戦略的敗北)のでは本末転倒なのですが、愚者というものはどうしても“目先”に囚われて“全体”を観る力なく、頻繁にこの愚を犯します。
戦後ロシアの「解体」は避けられない
直近の好例がV(ウラジーミル)・プーチンでしょう。
彼もまた歴史に学ぶことができず、同じ過ちを繰り返すことになりました。
2022年。
プーチンは「ウクライナ併呑へいどん」の野心に燃え、侵掠戦争を仕掛けます。所謂「露育ロシアウクライナ戦争」です。
開戦前、プーチンは「こたびの戦は最初の“一撃”で終わる」とタカを括り、兵站へいたんすらまともに準備していなかったといいます。
日中戦争前に「こたびの戦など南京を陥おとせば終わる」とナメてかかって泥沼戦争に落ち込んだ旧日本軍と同じ轍を踏んだわけです。
案の定、戦争は泥沼化、ロシアは外交的に孤立し、金融は封鎖され、経済は破綻し、社会は紊乱、多くの若者を死地に追いやっただけでなく、将校ですらつぎつぎと戦死していき、保有していた兵器・軍事設備は破壊し尽くされて軍部は解体寸前。
これでは、仮に(仮定法未来)ロシアがこの戦争に勝ったとして、「ペロポンネソス戦争」に勝ち抜いたあと滅亡したスパルタと何が違うのか。
もっとも、対するウクライナとて無傷でいられるはずもなく満身創痍、もはや“総力戦”の様相を呈してきたため、ロシアが「勝つ」のか「敗ける」のか、今や専門家の間ですら見解の分かれるところとなっていますが、ここに筆者は“予言”しておきましょう。
ロシアの敗けです。
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我々はすでにさんざん学んでまいりました。
兵法の基本は「戦を避ける」ことだということを。
①まずは「政略」を駆使して戦争自体を避けることに全集中する ②それでも勃おこってしまった場合は「戦略」を操って短期決戦に尽力する ③前線では「戦術」を活用し勝つことより損耗を少なくすることを心掛ける
そもそも「戦術」を駆使しなければならない状況に陥った時点ですでに政略に“失敗”しているのであって、これを挽回するのはかなり厄介なことだということも我々は学んでまいりました。
したがって、「露育戦争」の直前、「こたび戦争に至るや否や」の議論が湧いたとき、「勃発派」が大勢を占める中、筆者は「プーチンがまともであれば勃きない」と公言していました。
プーチンならそれくらいの兵法の基本はわかっていようと思っていたためですが、蓋を開けてみれば、彼は躊躇うことなく戦端せんたんを開きました。
どうやら筆者はプーチンを買い被りすぎていたようです。
あるいは、本来であればそれくらいの判断はできたのに、老害のためか、はたまた偏執病パラノイアが発症したかで、このときプーチンには“正常な判断”ができなくなっていただけかもしれませんが。
プーチンが犯した「真の失態」
たとえば、各方面から悪魔のごとく罵詈雑言を浴びせられているヒトラーですが、彼も若いころは優秀な政治家でした。
しかし、1930年代後半から偏執病の症状を発症、側近の諫言にも耳を貸さなくなり、めちゃくちゃな膨張戦争を始めて、そして破滅していきました。
プーチンもその轍を踏んでしまったようです。
ということは、プーチンを待ち受ける末路もまたヒトラーと同じものとなることでしょう。
しかし、開戦してしまったからには、つぎに彼が為すべきは「短期決戦」です。
そのあたりはプーチンもわかっていて、開戦より「早ければ数日、長くても10日前後で一気に終わらせる」つもりだったようですが、世の中、自分の頭の中で考えた通りに事は進まないもの。
それが大失態の引き金となったことはすでに触れました。しかし、専門家や分析家らの大方の予想も「開戦となれば、ウクライナなど2週間と保つまい」でしたので、プーチンが見誤ったとしても、そのこと自体は同情の余地がないでもありません。
彼の“真の”失態はそこではありません。
彼の“真の”失態は、万一計画通りにいかなかったときのための“保険”、すなわち「予備計画」を立てておかなかったことです。
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たとえここからロシアが盛り返して「戦術的勝利」を得、占領地を手に入れたところで、ここまで甚大な犠牲を払って得た地が自らが灼やき尽くした”焦土”とあっては目も当てられません。
孫子もこう諫いさめています。
国を全うするを上と為し、国を破るはこれに次ぐ。
戦争が泥沼化した時点ですでにロシアは詰んでおり、かの国に戦後待ち受ける運命は「戦略的敗北」一択です。
戦後のロシアは数年を経ずして解体するでしょう。
そもそも戦などというものは「敵国から攻め込まれて、政略も通用しなかったときに仕方なく応戦するもの」であって、こちらから吹っかけるものではありません。
19世紀から20世紀前半にかけての「帝国主義段階」であれば、そういうこともありましたが、現在はもうそういう時代ではありません。
開戦前、世界的に高名な専門家・学者・分析家はおろか、莫大な経費を投じて情報収集している研究機関ですら皆、口をそろえて「開戦となれば、ウクライナは2週間と保たずに降伏するだろう」と大合唱する中、筆者だけが「もし開戦となればかならずロシアが敗ける」と公言していました。
しかも、「可能性が高い」ではありません、「かならず」です。
トランプが何か言うたびに、局地戦でロシアの勝報が届くたびに、「やはりロシアの勝ちだ!」と喚く者が後を絶ちませんでしたが、筆者は微塵もブレることなく、トランプが何を言おうが、局地戦の勝敗がどうであろうが、「かならずロシアが敗ける」と主張しつづけてきました。
「道理に逆らえば破滅」は歴史の摂理
そして、歴史は筆者の“予言”通りに展開していきます。
なぜ筆者だけが確信的に「結果」が見えていたのでしょうか。
別段、筆者にオカルティックな予知能力があるわけではありません。
「道理に逆らう者は例外なくかならず破滅する」という歴史の“摂理”を理解していたからにすぎません。
「プーチンだって歴史を学んでいなかったはずがない」と思うかもしれませんが、「どんな至高ヴィンテージワインも、死蔵され誰の喉も潤わさないうちに朽ちゆくなら、それは存在しなかったと同義である」ように、歴史で得た知識も人生に活かせないならば「知らない」と同じです。
繰り返しになりますが、歴史知識は“実践”に活かされて初めて意味を持つのですから。
殷鑑いんかん遠からず、プーチンが自らの人生を破滅させてまで「悪手のお手本」のような覆轍ふくてつ(失敗の前例)を示してくれているのに、今まさに習近平は台湾でその轍をそのまま辿ろうとしています。
彼が歴史に永くその名を刻むほどの無能だということがわかります。
写真=iStock.com/Oleg Elkov
※写真はイメージです
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たとえば、バルチック艦隊を破った秋山真之さねゆき。
彼の立案した「丁字戦法」は「黄海海戦」で見事に破られました。
しかし、彼はこの失態から学びます。
まず「次(日本海海戦)」に備えて「丁字戦法」に修正を加える。
のみならず、前回のように事がうまく運ばなかったときのための“予備計画”を準備万端に調ととのえる。
①敵艦を発見したらまずは第一段の奇襲攻撃で機先を制す ②万一それが失敗しても、第二段で「丁字戦法」をしかけて本戦を戦う ③もし陽が落ちるまでに決着が付かなかった場合は、第三・第四段で夜襲 ④それでも決着が付かなければ翌日も第五・第六段と追撃
⑤最後は第七段で掃討戦モップアップ
……と「七段構え」の予定計画でバルチック艦隊を迎えます。
実際、第一段の「駆逐艦・水雷艇による奇襲」は、当日波が高く実行できずいきなり出鼻を挫かれる形となりました。
しかし、「予備計画」で第二段、第三段とつづけることで、無事、バルチック艦隊を撃滅することができたのでした。
戦争が泥沼化した時点で勝ちはなくなった
このように「予備計画」を立てておくことが如何に重要かがわかりますが、プーチンは「短期決戦」とだけ決め付けて、それが失敗したときの「予備計画」をまったく立てていませんでした。
そのため、「短期決戦」に失敗してそこから先は行き当たりばったり。
日中戦争・太平洋戦争で泥沼に嵌った戦前の日本の二の舞いです。
「歴史から学ばぬ者はかならず亡びる」とは、かのチャーチルの言葉ですが、我々はすでに学んでまいりました。
――短期決戦のつもりで始めた戦が長期化すればそれはすでに負け戦。
居合の命は抜き付けの一刀、これを躱かわされしとき勝機は細む。
居合は刀が鞘離れした瞬間に勝負を決める一閃必殺の剣です。
したがって、その初太刀しょだちを躱され長丁場となると勝機は一気に減じます。
現在のロシアも、戦争が泥沼化した時点で、もはや勝ちはなくなりました。
それでもプーチンは頑として白旗を振ろうとしません。
独裁者にとって大戦での敗北は失脚に直結してしまうためです。
しかし、そうした彼の“エゴ”によって、ロシアは甚大な国家的損耗を被ることとなりました。
孫子は説きます。
――自国の損耗を最小限に抑えることが最重要項目であって、目の前の敵を打ち破ることなど二の次である。
しかし、プーチンはこの理を理解できず、「ロシア」という国家そのものも道連れにすることになりました。
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ロシアはこたびの戦争により、
◆国内の工場・発電所・油田を破壊された――戦後の日常生活もままならない ◆働き盛りの若者をごっそり失った――戦後復興のための労働力不足 ◆凍結された海外資産を失った――復興資金もない
◆戦後も多くの外交制約・孤立は避けられない――復興活動への足枷
戦後のロシアとて戦後復興に努力はするでしょうが、これでは思うように身動きできず、その先に待っている末路はほぼ“体制崩壊”一択でしょう。
どんなに口先だけで「戦勝」を演出しようが、国自体が亡びたのでは、これを「敗戦まけいくさ」と言わずして何を「敗戦」と言うのでしょう。
目に見えるもの(戦術的勝利)ばかりを見て、隠れているもの(戦略的勝利)に気づかないならば、永久に物事の真理に気づくことはできません。
こうして、プーチンの失敗原因を突き詰めていくと、畢竟ひっきょう「歴史と兵法への無理解」にすべてが収斂しゅうれんしていくことがわかります。
プーチンは自らを犠牲に「歴史の大切さ」を教えてくれた
プーチンがもし『孫子』を読んでいれば。
神野正史『世界史の名将たちの「戦略と戦術」』(KADOKAWA)
そしてそれを実践していたならば、今回の失態はなく、死ぬまで独裁者として君臨し、ベッドの上で大往生を遂げたのち、死後も優れた為政者として(少なくともロシア国内では)語り継がれたでしょうに。
――人のフリ見て我がフリ直せ。 ――他者の失敗は人生の教科書。
プーチンは自らの破滅を以て、歴史の大切さが理解できたでしょうか。
人生は“決断”の連続で、これに「間違い」ばかり選択していると、たちまち没落していき、「正解」を引きつづけるならば、立身出世・大成・成功が保証されることになります。
そして、兵法こそ「正解の選び方ノウハウ集」と言えます。
(初公開日:2026年9月10日)
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