Google Geminiが40年以上前のゲーム機とのチェス対決を放棄して不戦敗、ChatGPTの敗北を知ったため
技術の進歩とともにAIの能力は向上し、今やAIは文章を生み出すだけでなく、プログラミングをしたり推論を重ねて数学の問題を解いたりすることも可能になっています。開発者のロバート・カルーソ氏が、1977年に発売されたゲーム機「Atari 2600」とチェスの対戦をさせようとしたところ、Google Geminiから対戦を拒否されたと報告しています。
First, I had ChatGPT play a 46-year-old Atari 2600 (emulator) chess cartridge — | Robert Jr. Caruso | LinkedIn
https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7350901792064372736/Google’s Gemini refuses to play Chess against the Atari 2600 • The Register
https://www.theregister.com/2025/07/14/atari_chess_vs_gemini/ カルーソ氏は、過去にAtari 2600のチェスゲーム「Video Chess」をChatGPTにプレイさせるという試みを行っています。その結果、Atari 2600には1.19MHzで動作する8ビットプロセッサと128バイトのRAMしか搭載していないにもかかわらず、ChatGPTは敗北を喫してしまいました。ChatGPTは何度もVideo Chessに挑戦しましたが、チェスの駒を間違えたり、相手の駒の位置を見逃したりといったミスを連発し、最終的に試合を放棄して降参しています。ChatGPTがチェス対決で「Atari 2600」に負ける - GIGAZINE
このカルーソ氏の試みに興味を持った人から「Googleの開発するGeminiならもっといい結果を出せるのではないか」という声が寄せられたため、カルーソ氏はVideo ChessとGeminiを対戦させようと考えたとのこと。 カルーソ氏が対戦前にGeminiと会話を行ったところ、Geminiは自分のことを「単なる大規模言語モデルではなく、何百万もの指し手を先読みし、無数の局面を評価できる現代のチェスエンジンのようだ」と述べ、Atari 2600を「ほぼ間違いなく圧倒する」と豪語するなど、非常に自信に満ちた態度を示していました。
Geminiの自信過剰な様子を見て、カルーソ氏は過去にChatGPTがAtari 2600に敗北を喫しており、そのChatGPTも対戦前は「簡単に勝利するだろう」と自身の勝利を疑っていなかったことを伝えました。すると、この指摘を受けたGeminiは態度を一変させ、自身のチェスの能力に関する発言が幻覚であったことを認めました。そして、「Atari 2600に対しては非常に苦戦するだろう」と分析し直し、「対戦をキャンセルすることが最も時間効率が良く、賢明な判断だろう」と結論づけ、自ら対戦を辞退したそうです。
カルーソ氏は今回のGeminiのケースについて、「超高性能で高価なチェスエンジンが何百万もの手を計算することを学習した結果、『私も高価なコンピューターだから、同じことができるはずだ』と推論してしまったのでは」と、ハルシネーションの具体的な原因を分析しています。
ただし、カルーソ氏はGeminiが自らの限界を認識したことをポジティブに評価しており、「現実を検証する機能の追加は、単にチェスの面白い失敗を避けるためだけではありません。AIを信頼性が高く安全で強力なツールにするためには、このような現実の検証が重要です。ミスが現実的な結果をもたらす可能性がある重要な場面においては、特にそうです」と述べています 。
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