プーチン氏、ウクライナ停戦に関しトランプ氏と協議の用意-ロイター

ロシアはトランプ次期米大統領とウクライナでの停戦の可能性を話し合う用意があると表明した。ただ、将来的な交渉の前に立場を強めようと、あらゆる戦線で戦闘は激化している。

  国営タス通信によると、ペスコフ報道官は20日、プーチン大統領は「一度だけではなく、より正確には常に、接触や交渉の用意はあると述べてきた」と発言した。

  このコメントに、西側当局者は即座に懐疑的な反応を示した。ロシアのウクライナ侵攻は1000日を超え、ロシア軍はウクライナ東部で前進。ここ数日はウクライナに対する攻撃が激しさを増し、ロシアは核ドクトリンを改定して核兵器の使用基準を緩和した。

  米国と欧州の一部は20日、大規模な空爆があるとみてキーウの大使館を閉鎖した。キーウを含むいくつかの地方でミサイル警報が鳴り響いた。

破壊された建物の前を自転車で通り過ぎる住民(19日、ウクライナ・ポクロウシク)

  ペスコフ氏は、ロシアがほぼ現在の戦闘ラインに沿って戦闘を停止する交渉に応じる用意があるとするロイター通信の報道について語った。ロイターは、匿名の現・元ロシア当局者5人の話を基に報じたとしている。

  北大西洋条約機構(NATO)加盟国の当局者らは、プーチン氏に真剣な交渉や譲歩の用意はないという分析に変わりはないと語った。ロシアは最終的な合意を結ぶ前に。ウクライナの支配地域拡大とクルスク州からのウクライナ軍駆逐に引き続き注力していると、ロシア大統領府に近い関係者2人がブルームバーグに対して述べた。

  フランスのマクロン大統領はブラジルで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議に向かう途中、「プーチン氏が何を言おうが、平和を望んではいない。和平交渉の用意もない」と記者団に述べ、「プーチン氏の意図は、戦闘を激化させることだ。われわれは何週間もそれを目にしてきた」と続けた。

4州

  ロイターの報道によると、プーチン氏はウクライナのドネツク、ルガンスク、ザポロジエ、ヘルソンの4州について分割の協議に同意する可能性がある。

  プーチン氏はこの4州を2022年に違法かつ一方的に併合し、「永遠に」ロシアの一部だと宣言したが、ブルームバーグが公開データに基づいて算定したところによると、ロシアの支配下にある4州の面積は約77%にとどまっている。

  ロイターが引用した当局者2人の話によると、ロシアはハリコフ州とミコライウ州で抑えている領土のわずかな部分からは軍を撤退させる用意があるもようだ。

  ペスコフ氏は「この戦争の凍結は、ロシアにとって有用ではない」とも述べたと、タスは報じた。

Vladimir Putin has said any cease-fire talks must take account of "realities" on the ground

Source: Institute for the Study of War and AEI's Critical Threats Project

  ロシア大統領府の顧問だった経歴を持つ政治コンサルタント、セルゲイ・マルコフ氏は、和平交渉のアプローチについて「プーチン氏はいかなる最終決定も下していない」と論じた。「戦争遂行に高い犠牲を支払いたいとは思わないだろうが、ロシアの利益にならない和平合意に高い犠牲を払うことには、いっそう消極的だろう」と語った。

  プーチン氏は以前に、協議に応じる用意はあるが、いかなる合意もロシアの安全保障上の利益と現地の「現実」を考慮したものでなければならないと述べていた。

  同氏は6月に、ロシアが併合を主張する4州からウクライナが停戦発効前に完全に撤退することや、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)への加盟を断念することなど、協議における自身の基本姿勢を明らかにした。

  プーチン氏は現在も、ウクライナがNATO加盟を断念することと、NATO軍のウクライナ領内への駐留を禁止することを主張しているが、ロイターによると、ウクライナの安全を保証することについては協議する用意があるという。

  バイデン米大統領がウクライナに、長射程の戦術弾道ミサイルシステム「ATACMS」をロシア国内で使用することを認めた決定は、いかなる解決策も複雑にし、遅らせる可能性があると、ロイターが引用した関係者2人は述べた。

  それでも、ミサイルをロシア国内で使用することを米国が承認したことで、ウクライナは強気の姿勢でロシアと交渉できるようになったと、ウクライナの欧州連合(EU)大使、チェンツォフ氏は20日、ブルームバーグテレビジョンに語った。

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原題:Putin’s Offer to Talk to Trump Is Unlikely to End Fighting Soon(抜粋)

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