【焦点】米雇用者数、3月は伸び鈍化も-関税政策で景気見通しに陰り
4月4日に発表される3月の米雇用統計では雇用の伸びが鈍化する見込みだ。米関税政策の影響を巡る懸念で経済の先行きが暗いことや、消費者の慎重姿勢の強まりが背景。
ブルームバーグがまとめたエコノミストの予想中央値によると、非農業部門雇用者数は13万8000人増と、前月の15万1000人増を下回る見通し。その場合、直近3カ月の雇用者増加数の平均は昨年10月以来の低水準になる。失業率は4.1%と、前月から横ばいの見込み。
発表済みの米経済データも1-3月(第1四半期)の顕著な景気鈍化を示している。2月のインフレ調整後の実質個人消費支出(PCE)は、約4年ぶりの大幅マイナスとなった1月からプラスに転じたが、可処分所得は引き続き低い伸びにとどまった。3月のミシガン大学消費者マインド指数(確報値)はインフレ圧力増大懸念から約2年ぶりの低水準となった。
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パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日の雇用統計発表直後に経済見通しについて講演を行う予定。FRBのクーグラー理事やジェファーソン副議長、クック理事、バー理事も今週講演を行う。
トランプ大統領の強硬な通商政策を巡り、国民や企業の不安は強まっている。トランプ氏は4月2日、貿易相手国の関税率と非関税障壁に応じて関税を課す「相互関税」を導入するとしている。
トランプ氏は3月29日のNBCニュースとのインタビューで、導入予定の自動車関税への対応で外国の自動車メーカーが値上げを行ったとしても自分は「全く気にしないだろう」と述べた。また4月2日の関税賦課をこれ以上遅らせるつもりはないとあらためて明言した。
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アナ・ウォン氏、スチュアート・ポール氏、エリザ・ウィンガー氏、エステル・オウ氏らブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミストは「われわれの基本シナリオでは、実際の関税率は最悪のシナリオよりも大幅に低くなる見通しだ。また多くの関税が発動するのは調査を実施した後になり、一部の国は適用除外となるとみている」と説明。
「それでも最終的に、実質関税率は来年に15%前後と、ほぼ1世紀ぶりの高水準となる可能性がある。インフレの明確な上振れリスクに直面することから、FRBは金利据え置きの方向になりそうだ。 労働市場が急変した場合、利下げが間に合わないという現実的リスクがある」と分析した。
個人消費と消費者信頼感が落ち込む中で雇用の伸びが著しく鈍化すれば、米経済見通しへの懸念は強まると予想される。エコノミストは、政策がより明確になるまで事業拡大計画を保留する企業が増えているとの兆候が企業調査データに見られないか注視している。
米供給管理協会(ISM)は4月1日に3月の製造業総合景況指数、3日に非製造業総合景況指数を発表する。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は1日に金融政策決定会合を開く。市場とエコノミストはいずれも金利据え置きを予想している。
原題:US Employers Tap Brakes as Tariff Policy Dims Outlook: Eco Week(抜粋)