ホンダPUがシンガポールGPで期待外れに終わった原因はターボラグ。折原エンジニア「制御に苦しみ、加速が不安定に」
アストンマーティン・ホンダにとって、F1シンガポールGPは期待外れの週末となった。その理由について、パワーユニット(PU)自体に問題があったわけではなく、ターボラグの制御に苦しんだことが原因だったようだ。
セパンで行なわれ、波乱のレースとなったバーレーンGPでフェルナンド・アロンソが8位入賞したこともあり、アストンマーティン・ホンダはシンガポールGPにも高い期待を抱いていた。
しかし、結果として予選ではQ2進出ならず。決勝でもアロンソが16位止まりだった。
決勝レースの前にはターボチャージャーを交換し、ピットレーンからレースをしていたアロンソ。レース後にはPUの奇妙な挙動に苦しんだとコメントしていた。
「PUに何か問題があると思う。今週末は、本来の性能を発揮できていなかった。原因を突き止める必要がある」
「ラップタイムを大幅にロスしているいくつかの要因がある。今週末はそれを痛感した」
「ターボそのものに関しては、それほど問題はなかったと思う。でもデプロイに多くの問題があった。サーキットのどこにいるのか、マシンが正確に把握できていなかったみたいだ」
「必要のない場所でデプロイしてしまったり、ストレートでデプロイがされなかったり。少しイライラした」
関連ニュース:ホンダは、7週間で6レースを戦うという厳しいスケジュールの合間にHRC Sakuraでの分析を実施。シンガポールGPで苦しんだ理由について、アメリカGPで次のように説明した。
「シンガポールGPでは、ターボラグを抑えるために新しいターボチャージャーを導入しました。それでも、サーキット特有のレイアウトとエネルギー回生量の多い状況が重なり、ターボラグの制御に苦戦しました」
「ターボラグを抑えようとしましたが、それでも難しい状況でした。その結果、ドライバーにとって加速が不安定になってしまいました。加速が良好な周回もあれば、ターボラグの影響で十分に加速できない周回もありました。それがドライバーにとって不快な感覚につながりました。私たちは予選後のドライバーからのフィードバックを重く受け止めました」
「そして、コースで何か異変が見られた場合は、PUを交換することに決めました。その後、エンジンをSakuraに送り返し、徹底的な点検を行ないました。現時点では、PUに大きな問題は見当たらないと思います」
「ただ、シンガポールでターボラグの制御に苦戦したことは理解しています。それがドライバーにとって不快なものになってしまったのだと思います」
アロンソが語っていたPUの奇妙な挙動は、ターボラグの制御がうまくいかず、加速が不安定となっていたことが原因だったのだ。
ただ、ハードウェアに問題がなかったのであれば、今後も近い条件のサーキットを走る場合、同じような問題が起きる可能性が否定しきれないということにもなる。
これについて折原エンジニアは、シンガポールGPから得られた学びによって、対策を検討しているという。
「シンガポールから多くのことを学びました。今後に向けて対策を準備しています。ターボラグを制御するためのコントロールを改善する必要があることは理解しています」
「現時点では、私たちの制御がドライバーの要求を満たせていません。しかし、シンガポールで新たな発見があり、そこから学んだことを踏まえて対策を再検討しています。ただ、それでパワーユニットが実際にどのように機能するかは、改めて確認する必要があります」
昨年までのレギュレーションでは、ターボチャージャーと同軸上に排気を利用して発電するMGU-Hが存在した。これをモーターとして使ってターボチャージャーを回転させることで、ターボラグを解消することができていた。
だが今季はMGU-Hが廃止。タイム向上に重要な区間ではターボエンジンが苦手な、過給圧が上がるまでの領域をMGU-Kによってサポートする必要がある。
シンガポールGPは1周あたりのエネルギー回生量が多いレイアウトとなっているが、だからといってその制御が簡単になるわけではないようだ。
「MGU-Kのエネルギー放出はターボラグの緩和に役立ちますが、それだけでターボラグを完全に補えるわけではありません」
そう折原エンジニアは説明した。
「エネルギー回生量の多いサーキットでは、通常、MGU-Kによるエネルギー回生を利用してターボラグを補います。十分なMGU-Kの回生電力を確保できれば、いわばスロットルオフ領域でもエンジンを高回転で走らせることができます」
「それがターボラグの緩和につながります。理想的な状況です。しかし、エネルギー回生量の多いサーキットでは、その状況自体が原因となり、十分なMGU-Kの回生量を確保するのが難しくなることがあります。そうなるとエンジンの、どう言えばいいでしょうか、ターボラグを制御するために必要なエンジンの作動負荷が不足します。これがシンガポールで苦戦した理由です。さらに、ストップ・アンド・ゴー型のコーナーが続くという独特のレイアウトも重なり、問題が生じました」
「今年は新しいレギュレーションの下で、この新しいパワーユニットを初めて運用する年です。そのため、サーキットで学ばなければならないことがまだ数多くあります」
「難しい点のひとつは、MGU-Kの出力が大きいことです。コーナリング中にはMGU-Kによるエネルギー回生量が大きくなりますが、その回生電力がコーナリング中に突然失われると、ドライバーにとって好ましくないフィーリングとなり、ドライバビリティにも悪影響が出ます」
「そのため、MGU-Kの回生電力を常に考慮しながら、エンジンの状況を管理しなければなりません。コーナリングと加速の局面で、これが私たちにとって難しい課題となっています」
シーズン序盤に起きたスタート手順の問題や、エネルギー回生量が全く足らないコースでのパワー不足など、様々な面で新PUの複雑さを目の当たりにしてきたが、我々が慣れ親しんできた、もはやF1では理解し尽くされているとも思ってしまうターボに関しても、その影響はおよんでいるのだ。
サーキットによって、コース特性とエネルギーの使い方は変わる。そこにコンディションの変化も加われば、その制御は計り知れないほど複雑になるのだろう。
「新しいサーキットに行くたびに、新たなことを学んでいます。新しいレギュレーションについても学び続けていますし、新しいサーキットを走ることで得られる知見もあります」
そう語った折原エンジニア。どのチームにとっても今季は学びの1年だが、大苦戦したアストンマーティン・ホンダは得られた教訓を活かし、来季の大きなジャンプアップにつなげたいところだ。
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