《第三次世界大戦はもう始まっている》エマニュエル・トッドが警告「イラン戦争とウクライナ戦争は一体化したひとつの戦争だ」(文春オンライン)

 米国とイスラエルによる大規模奇襲攻撃で始まったイラン戦争も、緒戦こそ、強大な軍事力を誇る米国とイスラエルが圧倒したが、その後はイランが、「ドローンなどの安価で大量の兵器」と「ホルムズ海峡封鎖」という「非対称戦略」でトランプ大統領を追い詰めて徐々に形勢を逆転させ、イランに圧倒的に有利な「14項目の覚書」の締結に至った。トッド氏はこの戦争をどう見ているのか。 【画像】トランプ大統領の横で笑顔を振りまく高市首相 ◆◆◆

 現在、起きているのは、「第三次世界大戦」の本格的な拡大です。今回のイラン戦争は、2022年2月24日に始まったウクライナ戦争と一体のものなのです。  この2つの戦争は別個の戦争ではなく、「第三次世界大戦」の「南部戦線(イラン戦争)」と「北部戦線(ウクライナ戦争)」という、同じ戦争の2つの「戦線」と捉えるべきだと私は考えます。2022年6月に『第三次世界大戦はもう始まっている』という本を上梓しましたが、今から4年前に概念として用いた「第三次世界大戦」が、より具体的な姿を現わしてきたということです。 「北部戦線」では、米国がウクライナ人とヨーロッパ人を使って、ロシアと間接的に対峙しています。「南部戦線」では、米国が同盟国であるイスラエルの助けを得て、イランと直接的に対峙しています。 「米国はイスラエル・ロビーに操られてイラン戦争を始めた」としばしば言われますが、こうしたナラティブに騙されてはいけません。すべてを決めているのは米国なのです。米国は、必要とあれば、イスラエルの意向を無視してイランとの交渉を進めています。

 トランプ大統領やヴァンス副大統領がイスラエルのネタニヤフ首相やその他の閣僚を激しく批判していますが、これは、「この敗北は、我々をこの戦争に巻き込んだイスラエルのせいだ」という責任転嫁です。  ニヒリズムに陥り、国家として方向喪失状態にあるイスラエルは、暴力の衝動に突き動かされ、戦争が自己目的化し、常に戦争の準備ができているのは確かですが、そうしたイスラエルを米国はいつでも敵に放つことができる“猛犬”のように利用してきました。つまり、最終的な決断はワシントンが下してきたのです。  そもそも、前線は膠着しつつも、互いの攻撃がエスカレート――ウクライナはロシア領内の石油施設などを攻撃し、ロシア側もキーウなどドンバス地方以外の都市部を攻撃――しているウクライナ戦争の現状を理解しようとしたことが、この2つの戦争を「第三次世界大戦」の2つの「戦線」として捉えるきっかけとなりました。今回の世界大戦は、過去の世界大戦と比較して、死者数は圧倒的に少ないながらも、複数の地域で起きている戦争が、互いに影響し合いながら同時進行しています。  第二次世界大戦で、米国は、「欧州戦線」でドイツと、「太平洋戦線」で日本と同時に戦いましたが、この2つの「戦線」はそれほど深く結びついていませんでした。  形式上、日本とドイツは当時、同盟関係にあり、たとえば、仏ブルターニュ地方の私の別荘近くにあるロリアン港(ナチス・ドイツが巨大な潜水艦基地を建設)には、戦時中に日本の潜水艦が運んだ魚雷が今も保存されていますが、これは“文化交流”の類で、日本とドイツの相互協力はそれほど強いものではなかったのです。  今回の戦争の2つの「戦線」は、これよりはるかに密接に結びついていて、さらに東アジア(ホルムズ海峡封鎖を考慮すれば全世界)にまで影響が及んでいます。 ※本記事の全文(約15000字)は、月刊「文藝春秋」8月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(エマニュエル・トッド「 日本の米追従は自殺行為だ 」)。 全文では、下記の内容をお読みいただけます。 ・イランの「離陸(テイクオフ)」の世界史的意味 ・「理性的な独裁」と「非合理的なリベラル」 ・戦争の継続そのものがウクライナ国家の存在理由に

エマニュエル・トッド/文藝春秋 2026年8月号

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