KDDI子会社、広告売上の99.7%が架空--社員2人が7年間仕組んだ循環取引の手口

 KDDIは3月31日、子会社ビッグローブとジー・プランの広告代理事業における架空循環取引の調査報告書を公表した。特別調査委員会の調査で、広告代理事業の売上のうち99.7%が架空であることが判明した。累計の売上高取り消し額は2461億円、外部流出額は329億円にのぼる。松田浩路社長は同日の説明会で広告代理事業を再開しない方針を明言した。

説明会で発言するKDDIの松田浩路社長
架空取引の会計影響は売上高2461億円、外部流出額329億円に達した

 架空循環取引を主導したのは、ジー・プランのソリューション営業ビジネス部長だったA氏だ。2017年頃に広告代理事業を立ち上げたものの業績が振るわず、2018年2月に数十万円の赤字が発生。売上目標の未達と合わせて事業撤退を迫られることを恐れ、遅くとも同年8月から架空の売上計上を始めた。

 手口はウェブ広告の成果報酬型取引を装ったものだった。本来であれば広告主からの出稿依頼を受けて上流代理店から仲介手数料を得るビジネスだが、実際には広告主は存在しない。広告の掲載物も一切なかった。A氏は上流・下流の代理店間で資金を循環させ、各社が手数料を差し引きながら回すことで、あたかも成果報酬型の収益が発生しているように見せかけていた。

 この循環を成立させていたのが、代理店ごとに異なる支払い期日の差だ。通常は広告主から上流代理店、ジー・プラン、下流代理店へと一方向に資金が流れる。だが架空取引では広告主が存在せず、回収よりも先に支払いが発生する構造となっていた。

ジー・プランは月末締め翌月15日に下流代理店へ支払い、上流代理店からの回収は翌々月15日だった。この1カ月のズレにより、次の取引で発生した資金を前の支払いに充てる形となり、資金循環が維持されていた。取引を重ねるごとに各社の手数料分が上乗せされ、規模は雪だるま式に膨張した。売上高取り消し額ベースでは、影響額の約85%が直近2年間に集中している。

支払い期日の差を利用して資金を循環させていた(KDDI特別調査委員会の調査報告書より)

 転機は2022年12月のビッグローブ参入だった。ビッグローブの資金力と信用力を活用するため、同社自身が商流の上流に加わった。KDDIのグループファイナンス(社内融資)を原資に、上流代理店から回収するより先に下流代理店への支払いを済ませることが可能になり、取引規模は急拡大した。ビッグローブへの融資極度額は2025年度に830億円まで引き上げられていたが、その管理は極度額を超えないかどうかに偏っており、資金の使途を逐一確認する仕組みはなかった。

 報告書では、A氏による隠蔽工作の巧妙さが詳述されている。各代理店にはA氏が個別に支払い先と金額を指示しており、代理店同士を直接やり取りさせなかった。下流代理店が上流代理店に資金を渡す場面でも、A氏は相手を「さらに下流の会社」と説明していたため、代理店側はお金が循環していることに気づけない仕組みだった。社内に対しては「代理店の先の商流を確認しないのが業界慣行」と虚偽の説明を重ねた。

特別調査委員会の名取俊也委員長

 成果レポートはA氏が自ら作成し、月ごとの成果件数や支払い金額を各代理店に指示していた。レポートには市場で人気の高額商品を対象商材として記載し、取引額が大きいことに説明がつくよう工夫していた。件数も毎月増やすのではなく、時期によって減少させ、その理由まで添えることで不自然さを消していた。上流代理店の1社から成果計測システム「クロスバリュー」での確認を求められた際には、ダミーの購入完了ページに遷移する広告コードを発行し、自動的にアクセスが発生する仕組みを作って成果計上を偽装していた。

 2020年4月に入社したB氏(チームリーダー)が協力者となり、2人で架空取引のやり取りを独占した。稟議から発注、支払いまでを同一担当者が行う属人的な体制も不正の温床だった。取引先218社のうち21社が架空循環取引に関与し、商流は最終的に28パターンにまで拡大した。

権限分離の不備や与信管理の不足が不正の温床だったと認定された

 発覚のきっかけは2025年2月の経営戦略会議だった。KDDIの高橋誠社長(当時、現会長)が広告代理事業の急成長に「コンプライアンス的に問題ないか」と懸念を示し、監査役主導の調査が始まった。同年10月に会計監査人が架空取引の可能性を指摘したが、A氏は一部代理店と口裏合わせを行い、11月の社内調査では「懸念事項は検出されなかった」との結論に至った。

 しかし、KDDIがビッグローブに取引金額の抑制を指示したことで資金の循環が滞り、12月に上流代理店からの入金が約107億円不足する事態が発生。A氏が架空取引を認めた。

 会計上の影響は、のれん減損646億円を含め営業利益ベースで累計1508億円にのぼる。2026年3月期の業績予想は営業利益を880億円下方修正し1兆900億円とした。ただし、主力の通信事業は増収増益で推移している。

 松田社長は質疑応答で、ビッグローブの通信事業には影響がなく、4月1日から社外取締役を含む新体制で事業を継続すると説明した。ジー・プランが運営するGポイント事業も広告代理事業とは別部門であり、継続する方針だ。関与した元社員2名は懲戒解雇とし、関係する代理店への民事訴訟と刑事告訴を検討している。すでに警視庁への相談を開始した。

説明会の中で謝罪するKDDIの松田浩路社長

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