焦点:マスク氏の「独断専行」、トランプ氏側近の不満増幅

 2月14日、米実業家イーロン・マスク氏が「政府効率化省(DOGE)」トップとしての権限を拡大し続ける中で、トランプ米大統領側近の一部からはマスク氏の「独断専行」ぶりに不満が高まりつつある。事情に詳しい4人の関係者が明らかにした。写真は11日、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団の取材に応じるトランプ氏(右)とマスク氏(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

[14日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏が「政府効率化省(DOGE)」トップとしての権限を拡大し続ける中で、トランプ米大統領側近の一部からはマスク氏の「独断専行」ぶりに不満が高まりつつある。事情に詳しい4人の関係者が明らかにした。

マスク氏のDOGEは連邦政府職員数千人の解雇を目指し、重要データにアクセスしながら、同時に政府機関の業務遂行に混乱をもたらしている。これらの動きに対して、スージー・ワイルズ大統領首席補佐官や彼女のスタッフらは、時折「蚊帳の外」に置かれているとの感触を持っているようだ。関係者の1人は、ワイルズ氏と何人かの補佐役が最近、この問題でマスク氏と話をしたと述べた。

11日にホワイトハウス執務室で、4歳の息子を連れて記者団の取材に応じたマスク氏は、自身とDOGE職員、トランプ氏の間で何事にも足並みをそろえる意向を示した。だがマスク氏がホワイトハウス高官の一部と緊張関係にあることは、議会の権限に踏み込み、一連の訴訟に直面しながらも政府組織の抜本的リストラを進めようとしているトランプ氏にとって、中核的な側近団とマスク氏が率いるDOGEの折り合いをつけるのがいかに難しいかを浮き彫りにしている。

事情に詳しい関係者によると、ワイルズ氏と補佐役らはDOGEの取り組みについてマスク氏に「われわれが全てに口を挟み、関与する必要がある」と通告した。ロイターは、この会話がいつ行われたのか、まだマスク氏がその後何か軌道修正したのかは確認できていない。

この関係者は、トランプ氏自身が献金者などと顔を合わせた際に言及するマスク氏の評価は引き続き好意的だと付け加えた。

マスク氏はコメント要請に回答せず、ホワイトハウスはコメントを拒否した。事情を知る政権高官の1人は、ワイルズ氏らとマスク氏の関係を緊張状態と見なすのを否定するとともに、当初の「業務上のちょっとした支障」は解消されていると主張。マスク氏が1日の終わりにワイルズ氏へ報告書を送り、ほぼ毎日互いに電話で会話をしていると説明した。

トランプ氏は11日、人員削減や採用抑制を通じて政府の規模を大幅に縮小するためにDOGEと協力するよう各省庁に指示する大統領令に署名した。

レビット大統領報道官は12日の会見で「これは1つの団結したチームだ」と語り、マスク氏はこのチームの誰もと同じく大統領の意向に沿うよう努め、大統領から直接指示を受けていると強調した。

またロイターが関係者の話としてトランプ氏側近の一部がマスク氏に不満を持っていると14日に伝えたことについては「自分で何を話しているのか分かっていない正体不明の関係者による完全なデタラメの話」と切り捨てた。

マスク氏は11日の会見で、選挙を経ていない自らの役割は、政府組織の一部を解体するためにトランプ氏による前例のない権限で認められたものだと正当化した上で、トランプ氏とはほぼ毎日話をしており、自分の取り組みは公共の利益と民主主義に資すると発言。「国民は大規模な政府改革に賛成票を投じ、それをこれから得ようとしている。われわれの行動全ては最大限透明化されている」と胸を張った。

しかしDOGEの活動は幾重もの秘密のベールに包まれている。どんな人々を採用しているのか、どこで仕事をしているのか、各省庁内でどんな措置を講じているのか、ほとんど情報は提供されていない。表に出てくるのは、特定省庁で削減するとされる予算の金額だけで、それ以上の詳細は不明。一方で少なくとも15の省庁に人員を派遣し、重要データにアクセスしている。マスク氏自身は「特別政府職員」という位置づけで、個人的な財務状況の開示もされない。

関係者の1人は、ワイルズ氏は幾つかの省庁解体と職員削減を目指すマスク氏の取り組み自体ではなく、そのやり方に気分を害していると指摘し、マスク氏とDOGEにはワイルズ氏側へ情報共有を続け、より秩序立って仕事をしてほしいと要望していると解説した。

この関係者は「ある程度の不満がある。ただし『亀裂』と言うのは大げさ過ぎる」と述べた。

これに対してホワイトハウス高官の側近を務めるある人物は、マスク氏とワイルズ氏のあつれきはより深刻で、ワイルズ氏の部下はマスク氏がホワイトハウス幹部の審査を受ける前に情報をXに投稿したことに公然と不快感を示したと話す。

<対照的な2人>

問題になった事案の1つはマスク氏の側近らが政府職員に送った一連の電子メールで、その中には1月28日付の政府職員200万人に対する早期退職勧告も含まれている。ワイルズ氏とスタッフはこれらのメールの一部を承認していなかったとされる。

確かにトランプ氏の側近の多くは、妥協を排したマスク氏の仕事ぶりを痛快に思っているが、ロイターが取材した限りでは、全員がそうだと言うにはほど遠い。

そもそもワイルズ氏とマスク氏の人物像は好対照と言える。

ワイルズ氏は、2024年大統領選でトランプ氏にこれまでで最も規律を保つ振る舞いをさせたその「手綱さばき」が高く評価されているものの、自分自身は決して表舞台に出ようとしない。トランプ氏に勝利集会でスピーチを振られても固辞し、常に大統領の傍らに寄り添いながらもカメラを向けられると映るのを避けるように移動する場面も見られた。

逆にマスク氏の仕事ぶりは自由奔放で強烈な印象を与えることで知られ、注目を浴びることへの熱意は並大抵ではない。Xに1日何十件も投稿し、ユーザーからの意見や提案を採用するほか、週末まで仕事漬けの姿勢を自慢している。

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Alexandra covers the 2024 U.S. presidential race, with a focus on Republicans, donors and AI. Previously, she spent four years in Venezuela reporting on the humanitarian crisis and investigating corruption. She has also worked in India, Chile and Argentina. Alexandra was Reuters' Reporter of the Year and has won an Overseas Press Club award.

Gram Slattery is a White House correspondent in Washington, focusing on national security, intelligence and foreign affairs. He was previously a national political correspondent, covering the 2024 presidential campaign. From 2015 to 2022, he held postings in Rio de Janeiro, Sao Paulo and Santiago, Chile, and he has reported extensively throughout Latin America.

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