アングル:米がレアアースの中国覇権切り崩しへ、高値保証で投信促進
[ロンドン 14日 ロイター] - 米国は中国のレアアース(希土類)市場支配を打破して米産業による投資を促進するため、独立した高価格制度の創設に動き出した。
中国が設定する低価格が他地域における投資意欲を損なってきたこともあって、西側諸国は世界のレアアース供給量の90%を握る中国の支配を弱めるのに苦慮してきた。
西側の採掘業者は戦略的に重要な超強力磁石の製造に必要な17種類のレアアース金属の供給競争力を高めるため、独立した価格制度を長年求めてきた。こうした磁石はドローン(無人機)や戦闘機のような軍事製品で利用されており、また電気自動車(EV)と風力タービンのモーターを動かすためにも使われる。
ラスベガスに拠点を置くMPは既にレアアースの採掘と加工を実施しており、年末までにテキサス州の施設で商業用磁石の生産を開始する予定だとしている。
この価格保証制度はすぐに発効し、アナリストは世界的に影響が広がるとみている。この制度は生産者にとって好材料だが、自動車メーカーなどの消費者、ひいてはその顧客にとって負担増につながるかもしれないという。
コンサルタント会社アダマス・インテリジェンスのマネージングディレクター、ライアン・カスティリュー氏は「この価格基準は業界の新たな重心となって価格を引き上げるだろう」と語った。
米国防省は最も普及している2種類のレアアースについて、1キログラム当たり110ドルと、中国が現在設定する市場価格の差額をMPに支払う。価格が110ドルを超えれば追加利益の30%を受け取る。
<MPの段階的生産拡大>
MPマテリアルズは昨年、中国の低価格が理由で6540万ドルの純損失を計上したが、テキサス州の工場で磁石の年間生産量を当初1000トン、将来は3000トンまで拡大する予定だ。
米国防省は10日の契約によってMPの株式を15%保有する最大株主となり、MPは米国内に第2のレアアース磁石製造施設を建設し、最終的に年間生産量を7000トン追加する。レアアースの生産量の合計は年間1万トンとなり、2024年の米国の磁石消費量に相当する。
これには米国が既に仕上げられた完成品に組み込まれたレアアースにとして輸入している3万トンは含まれていない。
アダマスは今後10年間で世界のレアアース永久磁石の需要が約60万7000トンへと2倍以上に増え、米国需要が今後数年間で年間17%という最も高い伸び率を示すと予測している。
世界がレアアース需要の大半を中国に依存している状況は、米中間の貿易交渉が続く中で中国が輸出規制に動いたために注目を浴びた。
西側諸国の政府はこれまで、自国産業の競争力強化の支援を試みてきたが、ほとんど成功していない。
価格引き上げで一致しようとする試みは磁石に割増額を設定する個別契約にとどまっていた。
英元副首相で元外務大臣のドミニク・ラーブ氏は、トランプ米政権が税制優遇措置だけでは必要とされる投資水準を生み出せないと判断したことは驚きではないと語る。ラーブ氏は現在、鉱業プロジェクトに投資するプライベート・エクイティ企業アピアン・キャピタル・アドバイザリーのグローバルアフェアーズ責任者だ。
米国防省が保証するネオジムとプラセオジムの110ドルという価格は、コンサルタント会社プロジェクト・ブルーが今後数年間の需要に対応する生産を支える上で十分な75―105ドルの価格帯をわずかに上回る。現在の市場価格は約63ドルの水準だ。
プロジェクト・ブルーのデビッド・メリマン氏は製造業者らが価格上昇にどのように反応するか、供給源がより多様化している状況でレアアースに投資するかどうか分からないと述べた。
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