「2歳の甥を“押しつぶして”殺してしまった」体重450キロの女性が自首→メディアは「死刑に値する」と報道も…全米を揺るがした“巨体容疑者”の衝撃告白《2008年・海外の事件》(文春オンライン)
2024年1月16日、マイラのFacebookページにこんな投稿が上がった。 〈「Facebookの友人の皆さん、こんにちは。私はマイラの夫です。マイラが2023年12月25日に入院したことをお知らせします。彼女は2024年1月3日に退院しました。 妻が病気になって以来、私自身、仕事をしていないため、GoFundMe(寄付を募るサイト)にアカウントを設定しました。寄付金はどんな形であれ、医療費や様々な支払いにあてられます。皆さんの愛と支援に感謝します」〉 Facebookには、目のパッチリした、髪の長いマイラの写真が掲載されている。ふくよかで大柄に見える。とは言っても、その姿からは、マイラが、かつて、1100ポンド(約500キログラム)もあるほど肥満体だったことは想像し難い。しかも、マイラはかつて、自身が甥を殺したと主張する殺人者でもあった。 “ハーフ・トン・キラー(体重500キロの殺人者)”。それが、マイラが与えられたニックネームだった。 マイラはなぜ“ハーフ・トン・キラー”と呼ばれるようになったのか?
マイラの名前が米メディアに登場したのは、2008年3月に遡る。3月18日、メキシコ国境に近いテキサス州南部の街ラホヤに住むエリセオ・ロザレス・ジュニア(当時2歳半)が、呼吸困難と頭部負傷のため病院に搬送され、その後、亡くなるという出来事が起きた。 警察が殺人罪の容疑で逮捕したのがマイラ(当時27歳)である。エリセオは、マイラの妹ジェイミー(当時20歳)の息子、つまり、マイラの甥だった。 事件当日、何が起きたのか? 供述書によると、その朝、ジェイミーはエリセオを姉マイラに預けて外出した。しかし、2時間も経たないうちに、マイラから「エリセオがベッドの下に挟まって、頭が腫れている」と知らせる電話が来たという。マイラは捜査官に「エリセオを床から抱き上げようとした際に、右手が滑り、転んで、誤って潰してしまった」と供述した。 幼児を押し潰して殺すという事件は全米に大きなショックを与えた。しかし、それ以上に人々を驚かせたのは、逮捕時に1000ポンド(約450キログラム)以上、ピーク時には1100ポンド(約500キログラム)近くあったというマイラの姿だった。 メディアは、マイラのことを「世界で最も体重が重たい女性」とセンセーショナルに書き立てた。
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2012年10月に米ケーブル局TLCで放送されたドキュメンタリー番組「Too Fat To Kill」によると、事件当時、その肥満体から身体を動かすことができなかったマイラは、2年間、ベッドの上で生活を送っていた。 身体は当然バスタブには収まらず、夫が、ベッドの上でマイラの身体を洗っていた。その時の様子について、マイラはこう語っている。 「2006年頃から、ベッドにいたままの状態になり、夫に身体を洗ってもらうようになりました。手にソープをつけて洗ってもらうのです。そうしないと、皮膚が裂けてしまうからです。 夫はたくさん助けてくれます。身体を洗ったり、ベッドをきれいにしてくれたり。他の人に任せると私を傷つけることになってしまうのではないかと心配し、進んで助けてくれるのです。彼は私の命です。私と彼は一心同体。彼を信じています」 事件発生から数週間後、女性医師がマイラの自宅を訪ねた。マイラが医師の診察を受けるのは1年半ぶりだった。その医師は当時のマイラの状態を「Too Fat To Kill」の中でこう回想している。 「マイラは死にそうでした。肺炎と肺水腫を患っていました。あの状態では1週間は生きられたかもしれませんが、医療介入しなかったら生きられなかったと思います」
ブラウンは胸のレントゲン検査のためにマイラを病院に搬送することにした。しかし、搬送するのは容易ではなかった。「膝が体重を支えられないので歩くことができない、寄りかかる椅子がいる」と訴えるマイラをいったいどう動かすのか? それが大きな課題となった。 彼女は、マイラを動かした時の様子についてこう話している。 「医師を続ける中で、マイラのような人を見たことがありませんでした。マイラを動かすには10人の男性が必要だったんです。 幅が広い救急車も必要になりました。ストレッチャーに乗せることもできなかったので、直接、救急車の床に滑り込ませるようにしてマイラを乗せたのです」 マイラは2008年8月、エリセオの死に対して殺人罪で刑事訴追された。しかし、刑務所にはマイラの身体を収容するのに十分な大きさの独房がなく、適切な医療ケアを与えることも困難なことから、マイラは裁判が始まるまでGPSを装着されて自宅軟禁された。 裁判にあたっても、特別な対応がされた。マイラを家の中から出すのに壁を壊し、引越し用の大型バンで彼女を運んだため、移送費用がかかった。 法廷の幅も測定され、審理中、マイラが過ごすためのキングサイズのマットレス探しも行われた。そんな前代未聞の状況が生じたことについて、メディアは「フリーク・ショー(見世物小屋)のようだ」と揶揄した。