CLO保有のETFから4月以来最大の資金流出-信用の質への懸念反映
ローン担保証券(CLO)を保有する上場投資信託(ETF)は先週、4月以来最大となる資金流出に見舞われた。信用の質に対する投資家の懸念が高まっていることを示す最新の兆候と言えそうだ。
JPモルガン・チェースのリシャド・アフルワリア氏率いるアナリスが20日のリポートで指摘したところでは、CLOに特化したETFは先週、約5億1600万ドル(約778億円)と約半年ぶりの多額資金流出を記録した。同社アナリストによれば、過去1年間の週平均では約4億2100万ドルの資金流入が続いていた。
米自動車ローン会社トリカラー・ホールディングスと自動車部品サプライヤーのファースト・ブランズ・グループの経営破綻を受け、信用市場の投資家は慎重姿勢を強めている。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は14日、「ゴキブリを1匹見たら、恐らく他にもいる」と述べ、経済が悪化すれば信用市場の一部で損失が拡大する可能性があると警告した。さらに、米地方銀行2行が不正の疑いがある融資の問題を公表したことで、銀行株も打撃を受けた。
週間ベースの資金流出が最も大きかったのは、250億ドル規模の「ジャナス・ヘンダーソンAAA・CLO・ETF(ティッカーJAAA)」だった。最高格付けのCLO債に投資しているこのETFからは、約4億7600万ドルの資金が引き揚げられた。これは米関税措置を巡る4月の市場変動で記録的な資金流出が生じて以来、最大の償還となる。
信用市場の他の分野でも、信用の質や与信基準に対する不安が高まっている兆しが見られる。プライベートクレジット・ローンをまとめて公開市場で取引されるファンドに組み入れるビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC)が発行する債券は、スプレッド(利回り差)が拡大しており、4月の市場混乱以来最も広がった水準で取引されているものもある。
BDCの債券発行を追跡するJPモルガンのBDC指数は、160ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)から220bpへと、60bp拡大している。JPモルガンのアナリストは、この水準が持続すれば、CLO市場にも波及するリスクがあると指摘している。
シティグループのグローバル・クレジット戦略責任者、マイケル・アンダーソン氏はBDC債のスプレッドについて、「引き続き許容範囲内にあるが、もう一段の拡大があれば、一層深刻な懸念材料となる」と語った。
また、BDCが信用不安を反映する手段となっていることを示す別の兆候として、公開市場で取引されているBDCの株式は、過去数週間に数年ぶりの安値圏で推移している。
JPモルガンによると、信用リスクの高い借り手へのエクスポージャーにもかかわらず、プライベートクレジットCLOや広範にシンジケートされたCLOのAAAスプレッドは依然として極めてタイトな状態にある。
JPモルガンのアナリストは先週、「スプレッドがここまでタイトな状況では、成長の原動力は不透明と見受けられる」とし、新規CLO発行額は1400億-1500億ドルになるとの見通しを示した。これは今年の予想発行額から約20%の減少となる。
同社アナリストは16日のリポートで、「CLOの調達スプレッドは縮小し、スプレッドのばらつきも減少しているが、個別銘柄に対する信用不安や、担保格付け引き下げが格上げを4年連続で上回っている現状、不透明なマクロ経済見通しが、今後の発行活動に重くのしかかるとみている」とコメントした。
原題:Investors Pull Cash From CLO ETFs in Biggest Outflow Since April(抜粋)