所有者は「ゴミではない」“価値あるアート”と主張 住宅街に積み上げられたタイヤ 崩落・大量のムシ発生などで住環境“悪化” 撤去の費用は約9億6000万円 「行政代執行」視野も費用負担の現実
所有者は「ゴミではない」“価値あるアート”と主張 住宅街に積み上げられたタイヤ 崩落・大量のムシ発生などで住環境“悪化” 撤去の費用は約9億6000万円 「行政代執行」視野も費用負担の現実11月06日 21:53
日本各地で“放置問題”が発生しています。 群馬県には住宅街の一角に積み上げられたタイヤの山があり、県は撤去のために約9億6,400万円の予算を確保しました。 土地の所有者は「タイヤはゴミじゃない」と主張しており、行政代執行も視野に入っています。 ■約9年前は物がなかった土地に ゴミの山ができるまで 群馬県館林市の住宅街。ある土地の周囲をぐるりと取り囲むようにタイヤが置かれ、大量のタイヤの隙間を埋めるようにゴミ袋も確認できます。 約9年前の様子では、物があふれている状態ではありませんでした。 ところが、ここ数年の間に土砂やタイヤ、廃棄物などが運び込まれ、現在のような”ごみの山”ができたといいます。 館林市によると、こうした場所は市内に4カ所あります。 ■所有者は「タイヤアートガーデン」と主張
去年9月の現場取材では、土砂が積まれ、その上にさらにタイヤが載り、4~5メートルほどの丘のようになっていました。取材中には虫が飛んでくることも。 土地の所有者の男性は、次のように主張しました。 【土地所有者】「タイヤはゴミじゃなくて、はっきり言いますと、こういう使い方もタイヤはあるんだよと」 男性は、タイヤなどを置いているのは「“タイヤアートガーデン”という庭園を作っている途中だからだ」と説明。 “作品”の一つとして見せたのはオクラで、花が咲き、実がなっていました。一方で、すべてを自分で置いたわけではないとも主張しています。 【土地所有者】「集めたっていうよりも、捨てられたりするようなものもあるんですよ。(何者かの)不法投棄もある」 近隣住民への対応については、「早急に対応します。ガーデンになってくれば、虫は出ませんから」と話していました。 ■取材の翌月に改善命令 採取した土壌から基準値の3倍のフッ素検出 取材の翌月、群馬県は市内4カ所のうち3カ所に改善命令を出しました。 しかし状況は改善されず、ことし9月に県は撤去のための予算として約9億6,400万円を確保しました。 そして県が現地調査を行ったところ、採取した土壌から最大で基準値の約3倍のフッ素を検出。 ことし9月の会見で、害虫の発生や火災時の延焼リスク、土壌汚染による地下水への影響の恐れを挙げ、周辺住民の生活環境の観点から「著しく公益に反する」と指摘しました。 周辺では、井戸水の使用を控えるよう呼びかけていたといいます。 ■近隣住民と高齢者施設を悩ませる日々 住民からは「雨が降ると土砂が流れてくる」、「夏は蚊や虫が多く、一時はネズミも出た」、「窓はほとんど開けられない」といった声が相次いでいます。 市内の別の場所では、高齢者施設のすぐ隣にも土砂やタイヤが放置され、一面が緑に覆われています。 高齢者施設の職員によると、最初は木材が多かったものの、中には軽自動車も1台入っているとみられるといいます。夏場は蜂が巣を作ることもありました。 職員は崩落への不安も語ります。土砂の山の中腹の桜の木などが、すべて一番下まで滑り落ちてきたといいます。下の用水路にも、タイヤが落ちています。 ■1年後の現場 見えない改善 5日、取材班が同じ場所を訪れました。 去年9月に見えていたタイヤなどが積まれた山肌は、一面緑に覆われていましたが、たぬきの置物は同じ場所に放置されたままでした。ブルーシートの上のタイヤも、向きが変わっていません。 土地所有者の男性への取材は叶いませんでした。 館林市の聞き取りに対しては、「価値のあるものだ」と主張しており、改善命令に応じる様子はなかったといいます。 一方で、近隣住民からはこんな話も。 【近隣住民】「改善命令が出てから、所有者の男性は重機で掘り起こして、タイヤを出したり、プラスチックを袋に入れたりしていました。一時期は、家の半分ぐらいの高さまで来ていましたが、少し低くなった所もあります」 ■専門家が指摘する「誰が持ち込んだのか」 千葉県庁で6年間、産業廃棄物の不法投棄解消に取り組んだ石渡正佳氏は、現場について次のように述べています。 【石渡正佳氏】「大量に集まっているので、個人が処理できる量ではないので、それなりに大量に(産廃を)集められる方が関与している。 (土地所有者の男性が)知恵を付けられているとか、そういうこともありえる。誰が持ってきたのかっていうことを、突き止めるべき現場」 県は今後、改善が認められなければ行政代執行も視野に入れています。 ■費用負担は原則“本人” しかし現実は… 行政代執行は自治体が税金で撤去などを行い、かかった費用を所有者に請求することになります。ノンフィクションライターの石戸諭氏は、この“請求”について次のように指摘しました。 【石戸諭氏】「(費用を負担するのは)原則は本人なんですけど、土地所有者が返すのは、なかなか“無い袖は振れない”。個人で資産を持っているのだったら、先に片付けてるでしょという話になってくる。 住環境が著しく悪化し、放置のリスクが高く、所有者の説明に合理性がない場合は、ためらいなく代執行でよいと思っている。 原資は税金だけど、放置しておくことによって、住民の住環境が悪化したら税金どころじゃない」 ■各地で起きる行政代執行をめぐる問題 神奈川県川崎市では、遊覧船「アニバーサリークルーズ号」が約8年間放置されました。 運航会社などに繰り返し撤去を指導しましたが、期限までに応じず、行政代執行となりました。費用は当初、3300万円以上の見込みで、ことし6月から解体を開始し、すでに作業は終了しています。 実費は算出中です。最初から所有者が払えないため、費用が戻る可能性はかなり低いとみられています。 札幌市の旧ノースサファリサッポロは、去年9月に閉園しました。ことし3月、市は10月までに無許可建築物の完全撤去を命じましたが、期限を過ぎても園内には220匹の動物が残っていました。 11月2日の立入検査では、22棟の無許可建築物が残っていることを確認し、市は11月中にも再度撤去を求める方針です。 2005年の開園時から、開発を制限して市街地化を抑制する「市街化調整区域」に無許可で飼育小屋などを建てて営業していました。 札幌市は以前から行政指導を行っていましたが、20年以上にわたり建物が増え続けたといいます。 この行政の対応について石戸氏は、「やや遅い。20年間放置していると言われてもおかしくない」と指摘しました。 (関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年11月6日放送)- この記事をシェアする