英30年債利回り、1998年以来の高水準に上昇-30年債は一時5.67%
英国の長期債利回りは2日、1998年以来の高水準に上昇した。スターマー首相率いる政府に対して、市場の信認を取り戻すための対策を講じるよう一層の圧力がかかっている。
英30年債の利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、5.69%。10年債利回りは4bp上昇して4.79%となった。長期債を中心に、国債は世界的に売られている。
英国の場合は供給面の圧迫もあり、2日にはシンジケート団を通じて2035年償還債の発行を控えている。
ポンドは対ドルで一時1.3%安の1.3376ドルとなり、主要通貨のうち下落率が最も大きい。英国株の代表的な指数であるFTSE100も下げている。
借り入れコストの上昇は、秋に予定されている予算案発表を前にリーブス財務相が直面する財政問題を悪化させる恐れがある。ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、財務相は歳出削減または増税で350億ポンド(約7兆円)の財政不足を埋める必要がある。与党議員の反対で政府は社会福祉改革の撤回を迫られた前例があるだけに、財政不足を埋める措置は政治的に困難を極める可能性がある。
アリアンツのルドビック・スブラン最高投資責任者(CIO)は「英国の状況は現時点で極めて危うい。『債券自警団』が戻ってきたからだ」と指摘。
「インフレ再来が英国債に織り込まれるまでにこれほど長い時間がかかったことの方が印象的だ。財政面のフォワードガイダンスが必要だろう」と続けた。
英国の超長期債の売りは、確定給付型年金ファンドなど伝統的な買い手の需要後退や、構造的なインフレ高止まりに対する懸念が背景にある。英債務管理庁(DMO)は既に超長期債の発行を過去最低に減らすと発表したが、一段の減少を求める声もある。
エコノミストは、英国が自ら課した財政規律を守るには、近く増税が必要になると予測している。
英30年債利回りは年内に6%を超えると、フランクリン・テンプルトンは予想。英国の厳しい財政見通しが同国債を圧迫し続けるだろうと指摘した。
同社の欧州債券責任者デービッド・ザーン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、スターマー首相が首相官邸内の人事変更を1日行ったことに触れ、「スターマー氏は官邸内に新たなスタッフを招き入れたが、財政を実際担当しているのは誰なのかという疑問を抱かせる」と述べた。
その上で、「政府はこれからも何とかやり過ごそうとし、問題に真正面から取り組むことはしないと思う。しかし、利回りが高くなり過ぎれば、最終的に歳出削減を含む、はるかにもっと抜本的な対応を強いられるだろう」と語った。
ポンドの下落
2日は英国債の取引開始時から、ポンドも売り圧力にさらされた。オプション市場の持ち高状況は、ポンドの1カ月先の対ドル相場が、7月以降で最も弱気に傾いている。
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「先進国全体の財政見通しに広範な懸念がある」との見方を示し、「ポンドは今一度、投資家の不安のはけ口と見なされている」と語った。
原題:UK Markets Slide as Debt Angst Drives 30-Year Yield to 1998 High(抜粋)