北陸新幹線延伸、湖西ルートは再浮上するか。「維新8案」を検証する【1】

北陸新幹線新大阪延伸について、日本維新の会が8つのルート案について再検討する方針を明らかにしました。そのなかで注目は、湖西ルートです。2016年のルート決定時には検討対象から外れていましたが、今回、再浮上するのでしょうか。

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8案の再検討求める

日本維新の会は、2025年12月1日に整備新幹線のプロジェクトチーム(PT)の会合を開き、北陸新幹線敦賀~新大阪間の延伸ルートについて、合計8つの案を改めて提案し、再試算を求めることを決めました。

再検討を提案する8つのルートの概要は以下の通りです。

①小浜・京都ルート ※既定案 ②亀岡ルート ③米原ルート(一部直通) ④米原ルート(乗り換え) ⑤湖西ルート(新設) ⑥湖西ルート(改軌・中速) ⑦舞鶴ルート(京都経由)

⑧舞鶴ルート(亀岡経由)

※ルート表記は日本維新の会のSNSに示されたものに準じています。

画像:国土地理院地図を加工  

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2016年の3ルート調査

提示された8案うち、①小浜・京都ルート、③米原ルート乗り換え案、⑦舞鶴ルート京都案は、2016年に与党PTの検討委員会で調査されています。

そのときの費用便益比は、③米原ルートが2.2、①小浜・京都ルートが1.1となり、基準となる1をクリアしました。一方、⑦舞鶴ルートは0.7と、基準を満たせませんでした。

しかし、費用便益比で優位だった米原ルートが選ばれず、「総合的に勘案」した結果として、小浜・京都ルートに決定しています。

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2016年の検討委員会で、調査対象から漏れていたのが湖西ルートです。

実は、2015年8月に検討委員会が設けられた段階では、湖西ルートは調査対象に含まれていました。しかし、2016年4月に調査対象から外され、12月に公表された試算ではリストにも入っていませんでした。

2016年の段階では、「調査に及ばず」と退けられていたわけです。その点で、今回、湖西ルートが改めて調査対象に入ったことは、大きな注目点といえます。

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ただし、湖西ルートがこれまでに、まったく俎上に上らなかったわけではありません。

正式に調査された資料としては、2013年3月に関西経済連合会が公表した検討結果があります。このとき示された概算事業費を、他のルートとあわせてご紹介しましょう。

○小浜・亀岡ルート 9,500億円 ○湖西ルート 7,700億円 ○米原ルート(東海道新幹線直通)5,100億円

○米原ルート(東海道新幹線乗換)3,600億円

湖西ルートの事業費は、敦賀~京都間のみで、京都~新大阪間を含みません。

また、米原ルートの直通案と乗り換え案の差額1,500億円は、「車庫線・回送線整備費用」とされています。乗り入れる場合に東海道新幹線の過密ダイヤ対策として必要な費用とされていて、詳細はわかりませんが、新大阪駅から鳥飼車両基地への回送線整備などを想定していたのかもしれません。

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その後に行われた、先述の2016年与党PT調査の概算事業費は以下の通りです。このときは費用便益比(B/C)も公表されました。

○小浜・舞鶴・京都ルート 2兆5,000億円(B/C 0.7) ○小浜・京都ルート 2兆700億円(B/C 1.1)

○米原ルート 5,900億円(B/C 2.2)

これらの調査結果から推測すると、2016年に湖西ルートを調査していたら、敦賀~京都間の事業費が1兆円前後、B/Cは1.5程度になっていたのではないか、と思われます。つまり、採用されるだけの基礎的な条件を備えていたわけです。

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2025年10月には、石川県選出の自民党国会議員による自主研究会が、北陸新幹線延伸の独自の試算結果を公表しました。

○小浜・京都ルート(南北案)3兆9000億円(B/C 0.551) ○小浜・京都ルート(桂川案)3兆4000億円(B/C 0.522) ○米原ルート(乗換)9,000億円(B/C 1.777) ○米原ルート(直通)1兆4,000億円(B/C 2.024) ○湖西ルート(乗換)1兆3,000億円(B/C 1.537)

○湖西ルート(直通)1兆9,000億円(B/C 1.240)

この試算では、小浜・京都ルートについて、国土交通省が2024年に公表した事業費に基づき、公表されていなかったB/Cを推定しています。南北案、桂川案のいずれも、0.5程度にとどまることが示されました。

一方、湖西ルートは、京都駅乗り換えの場合で、事業費1兆3,000億円、B.Cが約1.5と試算されました。東海道新幹線に直通する場合は、6,000億円も余計にかかりますが、それでもB/Cは1以上を確保できます。

ここでも湖西ルートは、敦賀~京都間のみの試算です。少なくとも、敦賀~京都間だけで試算すれば、湖西ルートのB/Cが1を下回ることはなさそうです。

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北陸新幹線のルートについては、1973年に閣議決定された新幹線の整備計画で、「小浜市付近」と明記されています。小浜・京都ルートは、この条件をクリアでき、京都市内も経由するという点で、政治的に優れたルートです。だからこそ、正式決定に至ったわけです。

そのルートが財源や投資効果(費用便益比)の面から実現困難となっているのが現状です。小浜市を経由する実現可能な案が他にあればいいのですが、見当たらないのであれば、閣議決定を変更するか、無視するしかありません。

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日本維新の会PTの前原誠司座長は、ルート案公表時の記者会見で、「1973年の閣議決定を見直す。小浜市付近というものが、50年前の閣議決定で縛られているが、これについてはとらわれない。閣議決定を見直していくことで、与党PTに臨む」と宣言し、小浜経由にこだわらない姿勢を明確にしました。

これは、今回の維新の発表において、もっとも重要なポイントといえます。

先述したように、小浜・京都ルートは、「小浜市経由」という整備計画を尊重したうえで、京都市を経由する形で作られた、苦心のルートでした。

整備計画に縛られないのであれば、そもそも小浜・京都ルートである必要はなく、北陸と関西とを最短距離で結ぶ湖西ルートが、真っ先に検討されるべき案になります。

つまり、前原氏が「閣議決定にとらわれない」と宣言したことは、湖西ルートこそが、維新の考える最有力候補であることを示唆しているわけです。

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