元凶は「48」、理想的だった「98年」、唯一無二の「財産」の奮闘で偉大な大会に【日本代表が優勝を目指す「最大」「最高」2026年ワールドカップの大問題】(3)(サッカー批評Web)

 今大会の最大の問題は、「48」という出場チーム数にある。  当初は3チームずつ16グループに分け、各組上位2チーム、計32チームで「ノックアウトステージ」に入る予定だった。3チーム総当たりは、日程的に非常に不公平な形で、1試合目と3試合目で2試合を戦うチームが圧倒的に有利になる。他の2チームは2試合目が「連戦」となるのである。同時に、3チームのうち2チームが「ノックアウトステージ」に進むという「グループステージ」は、あまりにゆるく、緊張感に欠けることになると予想された。すなわち、「グループステージ」は「プレシーズンマッチ」のようなもので、「本当のワールドカップ」はノックアウトステージからということになる—。  しかし、2022年大会での熱戦を見て、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンチーノ会長が心変わりし、即座に2026年大会のフォーマットを変えて「グループステージ」を4チームずつ12グループとした。しかし、その結果、「ノックアウトステージ」に進むのは「各組上位2チーム+各組3位の12チームのうち8チーム」という、またまた「スポーツ的」ではない形になってしまった。  すべては「史上最大」の「48チーム」にしたせいなのである。

 ワールドカップは原則として16チームで始まり、1982年から1994年までの4大会が24チームで行われた。4チームずつ6グループである。1982年は各組上位2チーム、計12チームを4組に分け、「3チームの総当たり」という「不公平」な2次リーグを実施した。そして1986年からの3大会は、「各組上位2チーム+各組3位の6チームのうち4チーム」という形で16チームによる「ノックアウトステージ」の出場チームを決めた。  1998年大会に32チームとなった。8つの組の上位2チーム、計16チームで「ノックアウトステージ」を行うという、非常にシンプルで、スポーツとして申し分のない公平な大会フォーマットとなっていた。「32チームのワールドカップ」は美しく、理想的な形だった。それを強引に48チームの大会にしたのは、インファンチーノ会長である(2030年大会は64チームにするといううわさもある)。

 アメリカ、カナダ、メキシコを舞台にしたワールドカップ2026が「史上最大の大会」になるのは間違いない。しかし、長すぎる大会日程は、上位に進出する世界の強豪国の選手たちから完全に「オフ」の期間を奪い去り(その多くは、今年も「FIFAクラブ・ワールドカップ」という不必要な大会でオフを奪い取られる)、サッカーにとって唯一無二の「財産」である選手たちを消耗・疲弊させる。 「The Greatest World Cup」はただ「最も大きい」だけで終わってしまうのだろうか。それとも(祖国のために自らの明日を考えない選手たちの献身的奮闘によって)「最も偉大な」ワールドカップになるのだろうか。

大住良之

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