開発スピード「驚異の10倍」…AIで「手戻り地獄」を消し去った衝撃アプローチ大公開(ビジネス+IT)

 従来のV字モデルの開発では、企画・要件定義の不備が本番稼働直前の評価フェーズで発覚しがちだった。  アジャイル開発でも、全体像が曖昧な初期にスコープやチームを分割して進めるため、統合する際に修正工数が膨らむことが多々発生する。  いずれも、「統合」や「評価・検証」といった後工程で問題が明らかになる。これにより、深刻なレベルの手戻りが発生してしまい、その対応が大きな負担となる点が共通の課題であった。  これは、要件定義の段階で「実際に目で見て触って試すことができる」水準のアウトプットを用意するのが難しかったからである。せいぜい、数ページのモックアップ、コンセプトの強調部分に絞ったプロトタイプが精一杯だ。周辺機能を加えていっても、「途中で思っていたのと違っていた」という顧客の期待とのずれが後から顕在化してしまうことは多い。  そこで神谷氏は、製造業や建築業で取り入れられてきた考え方にヒントを得て、AIエージェントを活用したソフトウェア開発の“工程前倒し”に着手。「AIエージェントを使えば、可視化や試行が格段にやりやすくなるのです」と強調する。その手法が、「フロントローディング」だ。

 フロントローディングとは、プロジェクトの初期段階で作業を前倒しして、問題点の早期発見や品質向上、後工程の手戻りを抑えるための開発アプローチである。2020年版の「ものづくり白書」でも取り上げられ、製造業や建築などで効果が認められてきた。 「この考え方をAIエージェントと組み合わせ、ソフトウェア開発プロジェクトの企画・要件定義のフェーズで、“統合したイメージを実際につくってみる”ことで、顧客の要望とのマッチ度合いを前倒しで確かめる取り組みを続けています」(神谷氏)  神谷氏が説くフロントローディングのアプローチでは、企画・要件定義の段階で「見た目がほぼ完成形の高品質なモックアップ」を作成することで、関係者と認識を合わせることを実現する。 「このプロジェクト最初期のフェーズで、ユーザーが画面を操作できるモックアップを用意します。これにより、想像や忖度、希望的観測が入り込む余地を省き、確度の高い要求や意見を引き出せるようになります。結果として、後工程で顕在化していた不確定要素を初期にあぶり出せるわけです」(神谷氏)


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 AIエージェントの普及は、組織と人の役割にも影響を与える。高品質なモックアップ制作は企画・要件定義フェーズの主要業務になり、外注に頼らず早く安価に作れるようになる。  結果として、プロジェクトの初期規模を小さくでき、これまで10人規模だった体制を2~3名に縮小することも可能になる。そのため、今後求められる人材像も変化してくる。神谷氏はこう予測する。 「ヒアリングもでき、営業力もあるような総合力の高い人材が活躍するでしょう。自分の専門領域にとどまらず、AIを活用して周辺領域へ業務範囲を広げられるような人材のニーズが高まっていくはずです。こうして職種の垣根が曖昧になり、組織の改編も進むはずです」  AIエージェントの活用により、開発が効率化され、大きな効果を得ることができる。だがその効果を享受するためには、組織や人材像の変化にも対応しなければならない。後編では、人材や組織面の観点でさらに話を聞いてみる。

聞き手・構成:編集部 井内 亨、執筆:フリーライター 井上 健語、撮影:大参 久人

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