【米国市況】S&P500種に選挙後の壁、ドルは上昇し一時155円に接近

12日の米金融市場では米国株が小幅安。過去最高値の更新を今年繰り返してきた勢いは失速した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5983.99 -17.36 -0.29% ダウ工業株30種平均 43910.98 -382.15 -0.86% ナスダック総合指数 19281.40 -17.36 -0.09%ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は0.2%下落。小型株で構成するラッセル2000指数は1.8%下げた。
S&P500種株価指数は前日までは5日続伸。5日間での上昇は今年最大となっていた。選挙後に大きく上げていた小型株と銀行株は守勢に転じた。選挙後に45%近く上げていたテスラは、この日は下落。アジア時間に続いて9万ドルに接近したビットコインは、方向が定まらない展開だった。
利益確定の始まりとともに選挙後の株買いは失速する可能性があると、クリス・モンタギュー氏率いるシティグループのストラテジストらは分析。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によると、米大統領選後の米国株に対する投資家のエクスポージャーは、経済成長の加速に対する楽観的な見通しから、2013年以来の高水準に急上昇した。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は「来年1-3月(第1四半期)に向けて米株式市場に利益確定や値固め、さらには調整が起きる可能性をわれわれは警戒している」と述べた。「上昇の勢いは依然強く、投資家のセンチメントも明るいが、株式相場は複数の時間枠において買われ過ぎ/伸長の領域に戻った」と分析した。
選挙結果を受けた相場の大幅上昇を経て、市場は消費者物価指数(CPI)に身構えている。10月の米CPIでは物価圧力緩和への道が平たんではないことが浮き彫りになりそうだ。
食品とエネルギーを除いたコア価格指数は前月比、前年同月比ともに9月と同じ数字が見込まれている。前月比の総合指数は4カ月連続となる0.2%上昇、前年比では3月以来となる上昇加速が予想されている。
CPIに対する市場の反応についてまとめた22Vリサーチの調査によれば、投資家の55%が「まちまち/極めて軽微」を予想。31%が「リスクオフ」を見込み、「リスクオン」を予想したのはわずか14%だった。
一方でコアCPIについては、48%の投資家が金融市場の大幅ひっ迫もリセッション(景気後退)も示唆しない、FOMCが好むであろう巡航速度の軌道を予想。しかし44%は金融の環境は引き締められる必要があると考えている。この数値は4月以来の高水準となった。
個別銘柄のニュースでは、クアルコムのクリスティアーノ・アモン最高経営責任者(CEO)が、AIブームが半導体不足につながることはないと述べた。アップルの「ジオブロッキング(地域制限)」は消費者保護規則に違反している可能性があると、欧州連合(EU)が通知。エリオット・インベストメント・マネジメントはハネウェル・インターナショナルの株式で50億ドル(約7700億円)余りのポジションを構築しており、会社分割を迫っている。
米国債
米国債利回りは上昇を再開。13日発表のCPIを控え、今後1年の利下げ見通しが後退する可能性が警戒されている。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.57% 9.7 2.17% 米10年債利回り 4.43% 12.3 2.86% 米2年債利回り 4.34% 8.8 2.08% 米東部時間 16時45分金融政策への感応度が高い2年債利回りは、7月以来の高水準に達した。利回り変動の一部は現物市場が休場だった前日の先物価格下落を反映しているものの、米国時間になってペースは速まった。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は12月に追加利下げを決定する是非について、最新のインフレデータに注意を払っていくと述べた。
FHNファイナンシャルのウィル・コンパノル氏は「強い消費者物価指数(CPI)あるいは好調な小売売上高、もしくはその両方が示され、12月の利下げは賢明ではないとの見方が広がる場合、2年債利回りは(現在の4.3%付近から)4.45%を超える可能性がある」と述べた。
「今週の米国債市場では支持線と抵抗線の両方が非常に弱いとみている。重要データが複数発表され、次期大統領の政策がより明確になるため、最近の取引レンジが有意に変わる可能性が出てくるからだ」と話した。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は経済が順調だとの見方を示し、これが利下げを可能にしたと述べた。
金利スワップ市場は12月18日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、約14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを織り込んでいる。つまり25bp利下げの確率は約55%ということになる。月初の時点ではほぼ100%の確率だった。
外為
外国為替市場のブルームバーグ・ドル指数は2年ぶりの高水準に達した。トランプ次期政権下での経済とインフレの軌道が意識され、米国債利回りが上昇した。円は心理的な節目の155円をうかがう展開となった。ユーロは昨年11月以来の安値。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1279.96 5.90 0.46% ドル/円 ¥154.63 ¥0.91 0.59% ユーロ/ドル $1.0626 -$0.0029 -0.27% 米東部時間 16時44分ドルは対円で続伸。石破茂首相は11日、2030年度までにAI(人工知能)・半導体分野に10兆円以上の公的支援を行う方針を明らかにした。先進テクノロジーへの支出拡大は世界的に広がっている。
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主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時0.6%上昇し、2022年11月の高値を付けた。
ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏は「今のところ誰もが共通して強い確信を持てるのはドルのようだ」と述べた。ブルームバーグ・ドル指数がここ2年のレンジを持続的に上抜けるには、トランプ氏就任後の政策がもっと明確になる必要があるだろうと続けた。
トレーダーの注目は13日の米CPIに集中。ブルームバーグがまとめた予想コンセンサスでは前月比でのコア指数が0.3%上昇。
トレーダーらによれば、レバレッジファンド勢がトランプ氏の当選後、ユーロやオフショア人民元などに対してドルのコールオプションを買っている。
ブルームバーグ・ドル指数の3カ月物リスクリバーサルは小幅上昇し、6月以来の強気を示唆した。
原油
ニューヨーク原油先物は小反発。ただ、今月の安値からそう遠くない水準にある。需給面で弱気な兆候が出ており、上値を抑えた。
石油輸出国機構(OPEC)は、今年と来年の石油需要の伸びについて、4カ月連続で見通しを下方修正した。ドル高の進行も相場の重しとなった。
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ストラテガス・セキュリティーズのアナリスト、ジョン・バーン氏は「相場を動かす材料が一段と明確になるまで、60ドル半ばから70ドル半ばにかけての取引は不安定な展開となるだろう」と述べた。
市場は引き続き、中東情勢やトランプ第2次政権の見通し、OPECと非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による生産量の決定に注目している。来年は世界的に供給が需要を上回ると予想されており、見通しは依然として弱い。中国が経済のてこ入れに向けて講じた措置も直接的な景気刺激策には至っていない。
一方、トランプ氏が次期国務長官にマルコ・ルビオ上院議員を指名するとみられていることは、強気派に明るい材料となる。ルビオ氏は対イラン強硬派として知られ、OPEC加盟国のイランに対して最大限の圧力をかける方針を支持してきた。
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ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比8セント(0.1%)高の1バレル=68.12ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限はほぼ変わらずの71.89ドルで引けた。
金
金スポット相場は約7週間ぶり安値に沈んだ。トランプ前大統領の返り咲きを受けたドル高進行が重しとなった。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数が約2年ぶりの高値に上昇し、ドル建てで取引される金の割高感が意識された。
金相場は先週の大統領選以降、5%余り下落。ヘッジファンドが金に対する強気な姿勢を後退させたほか、米国株への広範なローテーションを背景に、上場投資信託(ETF)の資金フローによる追い風が弱まったことが背景にある。
ペッパーストーン・グループの調査部門責任者、クリス・ウェストン氏は、金相場が50日移動平均を割り込んだことでファンド勢が買い持ち高の解消に動いたと指摘。売りは「テクニカルな面もある」と述べた。
金スポット価格は、ニューヨーク時間午後2時41分現在、前日比19ドル安の1オンス=2599.82ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は11.40ドル(0.4%)下落し2606.30ドルで引けた。
原題:S&P 500 Rally Hits a Wall as Treasury Yields Spike: Markets Wrap(抜粋)
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