雨のベルギーGP遅延、FIA判断に2人のF1王者が反発―“クラシックレース消滅”の危機に警鐘
悪天候によるレース遅延とスタート方式をめぐり、2人合わせて通算11度のF1ワールドチャンピオンに輝くマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とルイス・ハミルトン(フェラーリ)が、「慎重すぎる」としてレースコントロールの判断に疑問を呈した。
路面は濡れつつも雨はほとんど降っていなかったが、2025年F1第13戦ベルギーGPでは、フォーメーションラップ中にスタート手順が中断された。その後、雨脚が強まり、レースコントロールは約1時間20分の中断を決定した。
国際自動車連盟(FIA)は、「大多数のドライバーが視界不良を危険と感じた」と説明し、安全性を最優先した判断であったことを強調した。
だが、フェルスタッペンは無線を通じてこの判断に激しく反発。「ちょっとバカげてる。やるべきなのに、落ち着いてさ。クソっ。あまりにも慎重すぎる。この後、大雨が来るんでしょ? で、それで3時間遅れになるってわけだ」と不満をぶちまけた。
最終的に、レースはセーフティーカー先導ラップを経てローリングスタートで開始された。大幅な遅延の結果、レースの3分の2はドライコンディションで行われた。
Courtesy Of McLaren
セーフティーカー(SC)の後方を走行するマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2025年7月27日F1ベルギーGP決勝レース(スパ・フランコルシャン)
レース後のインタビューでも、フェルスタッペンは「雨なんて降ってなかったんだから、すぐに始められたのに」「結局、ほとんどウェットで走れなかった」と改めて苦言を呈した。
スパ・フランコルシャンでは過去に、雨天時の重大事故が幾度となく発生しており、FIAが慎重さを見せた背景に、そうした悲劇の記憶があることは疑いない。実際、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は「過去に起きた出来事を忘れてはならないと思う」と述べた。
だが、フェルスタッペンはその点に理解を示しつつも、「クラシックなウェットレースはもう見られなくなるかもしれない」と語り、F1の歴史あるダイナミズムが失われつつある現状に警鐘を鳴らした。
フェルスタッペンはまた、レース後半のシャルル・ルクレール(フェラーリ)への追走について、コンディションに合わないセットアップがオーバーテイクの機会を奪う要因になったと振り返った。レッドブルは週末序盤に低ダウンフォース仕様を採用していたが、日曜の雨を見越し、予選に向けて高ダウンフォースのセットアップへと変更していた。
一方、7位でフィニッシュしたハミルトンは、中断後のスタート方式に対して異議を唱えた。
「ローリングスタートである必要はなかったと思う。どうしてそうしたのか分からない。路面はかなり乾いていたし、水しぶきだって、そんなに酷くなかった」と述べ、スタンディングスタートでも問題なかったとの見解を示した。
フェルスタッペンとハミルトンが指摘するのは、近年のF1におけるリスク回避傾向が競技の本質を損なっているのではないかという懸念だ。かつては豪雨の中でも行われていたウェットレースが、現在では主に安全上の理由により、容易に中断・制限される傾向が強まっている。
無論、安全確保が最優先されるべきであるのは言うまでもなく、車両の安全性が飛躍的に向上している現代においても、スパにおける雨天時の死亡事故が記憶に新しい以上、その慎重さは正当化されるべきだ。
ただ一方で、フェルスタッペンやハミルトンという経験豊富なドライバーが現場の感覚として「走れた」と語る以上、FIAの裁量が過度に保守的になっていないかどうか、検証そのものは避けるべきではないだろう。
2025年F1第13戦ベルギーGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)が2番グリッドかの逆転勝利を飾った。2位にランド・ノリス(マクラーレン)、3位にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続いた。
ハンガロリンクを舞台とする次戦ハンガリーGPは、シリーズ第14戦として8月1日のフリー走行1で幕を開ける。