オープンラベルプラセボで片頭痛のQOL改善

 プラセボ(偽薬)であることを被験者に明示した上で投与するオープンラベルプラセボ(OLP)は、多様な疾患、特に急性および慢性疼痛において臨床的に意義のある改善が報告されている(関連記事「オープンラベルプラセボで腰痛にベネフィット」)。ドイツ・University Hospital EssenのJulian Kleine-Borgmann氏らは、片頭痛患者を対象に通常治療へのOLPの上乗せ効果を検証する並行群間ランダム化比較試験(RCT)を実施。片頭痛日数、疼痛強度、レスキュー薬使用日数などに両群で差はなかったものの、通常治療単独の対照群と比べOLP群ではQOLおよび疼痛関連障害度が有意に改善し、全体的な改善度が高かったJAMA Netw Open2025; 8: e2535739)に報告した。

月4日以上の片頭痛発作がある120例を3カ月治療

 片頭痛は、世界人口の約15%に機能障害と社会経済的負担などの悪影響を及ぼしている。予防には、抗うつ薬、β遮断薬、抗てんかん薬、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連薬などが用いられるが、副作用により制限されるケースが少なくない。

 他方、急性片頭痛治療に関する複数の研究で著明なプラセボ効果が示されており、試験におけるプラセボ反応率は最大46%に達する。CGRP関連薬の研究21件のメタ解析では、治療効果の改善の最大66%がプラセボ効果による可能性が示唆されている(Headache 2020; 60: 1542-1557)。プラセボ効果の臨床的重要性は認められるものの、欺瞞回避など倫理的懸念から治療への応用は制限されている。

 そこでKleine-Borgmann氏らは、2020年11月9日~22年11月1日にドイツの三次頭痛治療センター2施設で18歳以上の片頭痛患者120例(中央値年齢34.2歳、女性103例、急性片頭痛102例、慢性片頭痛18例)を登録し、通常治療へのOLP上乗せ効果を検証するRCTを実施。組み入れ基準は、急性/慢性片頭痛の既往歴があり、神経科専門医により国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に基づき12カ月以上診断され、スクリーニング前の3カ月間に月4日以上の片頭痛発作日数を有する者とした。

 対象を通常治療にOLPを1日2回上乗せするOLP群(58例)または対照群(62例)にランダムに割り付け、3カ月治療した。

 主要評価項目は中等度~重度の月間頭痛日数(MHD)とし、副次評価項目は月間片頭痛日数(MMD)、平均疼痛強度(0:無痛~10:耐え難い痛みの11段階)、レスキュー薬使用日数、疼痛関連障害度〔疼痛障害指標(PDI)、頭痛インパクトテスト(HIT-6)〕、患者による全般的印象評価(PGIC)、QOL(SF-12スコア)、忍容性、片頭痛が50%以上減少した割合(50%反応率)などとした。

SF-12の身体的側面サマリースコア、PDIスコア、HIT-6スコアが有意に改善

 通常治療(重複あり)の内訳は、薬物療法がOLP群18例、対照群23例、非薬物療法がそれぞれ54例、57例だった。全例が3カ月の試験を完遂した。

 検討の結果、3カ月時におけるMHD中央値は対照群の7.0日(95%CI 5.0~8.0日)に対し、OLP群では6.0日(同5.0~7.0日)と有意差はなかった〔群間差-1.0日、95%CI -2.5~1.0日、発生率比(IRR)0.89、95%CI 0.75~1.07、P=0.34、〕。

表. 結果:主要評価項目および副次評価項目

JAMA Netw Open 2025; 8: e2535739)

 副次評価項目を見ると、3カ月時には両群ともMMDが有意に減少し、平均疼痛強度は有意に増強したがいずれも群間差はなかった。レスキュー薬の使用日数にベースラインからの有意な変化、群間差はなかった。50%反応率にも差はなかった()。

 一方、PGICは対照群と比べ、OLP群で有意に高い陽性反応(「非常に改善」「かなり改善」「改善」)を示した(χ2 =14.16、P=0.01)。QOLについては、SF-12の精神的側面サマリースコアの変化に両群で差はなかったが(P=0.12)、身体的側面サマリースコアはOLP群で有意に改善した(β=4.25、95%CI 1.33~7.17、P=0.01、)。

 3カ月時における疼痛関連障害度は、対照群と比べてOLP群ではPDIスコア(β=−5.96、95%CI −9.01~−2.92、P<0.001)、HIT-6スコア(β=−1.88、同−3.28~−0.48、P=0.02)の有意な改善が示された)。

 忍容性を見ると、薬剤有害反応はOLP群で多かったものの報告数は少なかった(1例 vs. 8例)。

 以上を踏まえ、Kleine-Borgmann氏らは「3カ月の通常治療へのOLP上乗せは、MHDやMMDの減少にはつながらなかったものの、疼痛関連障害度やQOLの有意な改善と関連し、PGICの改善度が大きかった」と結論。「OLP群では40例が薬物療法を併用しなかったことから、OLPは片頭痛予防の標準治療を最適化する補助療法として、特に非薬物療法を好む患者において安全かつ適切な補完的選択肢となりうる」と付言している。

編集部・関根雄人

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