「求められるなら、率先してマッドサイエンティストになる」米村でんじろう(70)が“ヤバい実験”を繰り返す理由(文春オンライン)
――断ったんですか? でんじろう いえ、まだ社会に出たくない気持ちが強くて「それもいいかな」と思って、大学院へ行くことにしたんです。一応、博士課程がある別の大学も受けたんですが、当然落ちました。ただ、学芸大学の大学院には受かったので、そちらに進学しました。 大学院で2年を過ごしたはいいものの、行き場もなくなって、今度は「研究生」として大学に残りました。研究生といっても名ばかりの立場で、学生証もなく、図書館や研究室を使えるくらい。週1〜2回は大学に顔を出すものの、何をやるわけでもなく「あいつ、何かずっといるな」みたいになっていって、だんだん邪魔者扱いされる空気も感じはじめて……。 先生から勧められて、企業面接も受けましたよ。でも、周りは新卒の学生ばっかりで。年を食った自分が採用されることもなさそうで、そのまま3年ほど大学に居続けました。 ――約9年間、大学で過ごしたことになりますね。 でんじろう そうなんです。そんな人、自分でも見たことありませんから終盤は「これはさすがにヤバいな」と思っていました。
――現在まで、サイエンスショーやテレビなどで数多くの実験を手がけてこられたと思います。いつもアイデアはどこから得ているんですか? でんじろう 昔は本が中心でした。書店でパラパラ見て「使えそうだ」と思った項目があると買い集めていましたね。専門的すぎる技術書は難しくて応用しにくいので、実験が載っているような本が中心です。子ども向けのものもたくさん買いました。 明治時代の教科書や戦前の科学書も、かなり参考にしましたよ。科学の内容自体は古びないし、昔だからこそ実験もシンプルでわかりやすいんです。 ――本から吸収した知識はどのように活用されていますか? でんじろう 新しいアイデアはゼロから生まれるものではなく、知識や情報の組み合わせから生まれます。本で読んだものが直接、すぐにネタになるわけでなくても、知識をストックしておけば、ふとしたときに突然つながってアイデアになる。それくらい気長に構えて、とにかくインプットしていました。 本は家じゅうに溢れるほどあって、一軒の古書店だけで数十万円分買うこともあります。1ページ、たった1文だけでも役立ちそうなら迷わず買う、というスタンスですね。