阿部巨人にヤンキース流メンタルコーチ導入プラン 誹謗中傷からも「選手を守る」
巨人の阿部慎之助監督(46)が15日、東京・大手町の読売新聞東京本社で山口寿一オーナー(68)にシーズン終了の報告を行った。対話の中で、米ヤンキースなどメジャー流のメンタルサポート体制導入を提案され「ジャッジとかも良くなったみたい」と前向きな意向を示した。貯金1でリーグ3位からの来季V奪回へ、投手部門では今季「2」だった完投数アップを目標に設定。心身ともに強化して巻き返すことを誓った。
逆襲への思いが一段と強くなった。阿部監督はスーツ姿で山口オーナーのもとを訪問。約1時間の対話で課題を共有した。終了後、取材に応じ「来年に対しての提案もしてくださったり、(業務)提携しているヤンキースの話もしてもらった。メンタル系の方を重視して入れている」と新たな発見があったと明かした。
ヤンキースは本拠地・ニューヨークの熱狂的なファンから厳しい視線を注がれる。極度の重圧の中で力を発揮するため、専門の心理カウンセラーが選手のケアに努めているという。山口オーナーからその事例を紹介され、導入に向けた提案を受けた。「ジャッジとかが、それがきっかけで良くなった、みたいな話を聞いて。今はSNSとか誹謗(ひぼう)中傷とか多い中で、選手を守るという球団の対策もある。日本も一緒。ひどいからね」。巨人でも取り入れる意向を示した。
今季は主力選手の故障や不振による離脱が続出。経験の浅い若手の出場機会も増えた。攻守でミスが多発し、SNSなどで心ない言葉もあった。批判的な投稿が嫌でも目に入る時代。気にしたり、落ち込んだりすることでプレー面に影響が出るのは避けたい。「プライベートなこと、誰にも言えないことを言えたりとか、すっきりしたりするケースもあるかもしれない。ジャッジはそういうのでちょっと晴れた感じがあったみたいです」と効果を説明。ヤンキースをはじめメジャーでは主流になっているカウンセリング制度。日本でも少しずつ広まっていて、ソフトバンク、DeNAでは専門の職を置いている。さらなるチーム力アップへ巨人も環境整備に手を尽くす構えだ。
もちろん技術、体力の強化にも全力を注ぐ。「今季の総括、悪かったところを全部洗い出して話をさせていただいた」とオーナーに報告。重要ポイントの一つが先発の整備だ。「完投(勝利)が1しかないと僕から言って。(勝利の方程式の)大勢、マルティネスとかいるから仕方ないけど、完投能力がある投手が少ない。そういう指導もしっかりしていきます」と掲げた。
今季チーム完投数はリーグ5位のわずか2。赤星の完投勝利、山崎の完投負けのみだった。今秋は宮崎でのキャンプは行わず、GタウンとG球場の室内での秋季練習で鍛錬する予定。強固な先発陣への土台を築く。野手もリーグ最多の78失策など改善点は山積みだ。
「セ・リーグワーストだとか12球団ワーストだとか、そんな数字ばっかだった。反省としてしっかり受け止めてやります」。V奪回へ悔しさを糧にして心身ともにパワフルに進化させる。(片岡 優帆)
◆ドジャース メンタルスキル・コーチ(常駐)メンタルコーチではなく、メンタル「スキル」のコーチ。一般的にいう「カウンセラー」「心理カウンセラー」「セラピスト」とは異なり、アスリートが自分の精神を自分でどのように扱うべきかを指導するコーチ。セラピストたちよりも守備範囲が広く、大学院を出て博士号を持っている人が担当
▽主な取り組み ・常駐のチームスタッフなので職員。春キャンプからポストシーズンまでチームに帯同 ・ユニホームを着て練習に参加する役割ではないが、練習中は選手を理解するために球拾いなど、手伝いを行う ・最も忙しいのは選手が練習も試合もない時間。午前中や午後の早い時間、夜など。時には深夜に対応することも
・選手に必要な仮眠室の設置を球団に進言