米ロ首脳協議へ、ウクライナ抜きで進展も-トランプ氏が資産分割示唆
トランプ米大統領は、ロシアとウクライナとの停戦合意に向け、米ロが「資産」分割について既に協議していると明らかにした。プーチン大統領との18日の電話会談で、ウクライナの利益を犠牲にする構えを暗示する新たな兆しとも受け取れる。
トランプ大統領が提案し、ウクライナが受け入れた30日間停戦へのプーチン大統領の同意取り付けが、今回の電話会談の目的の一つと考えられる。プーチン氏はこれまでのところ、大筋では賛成としながらも、一定の条件を満たすことが条件と難色を示した。
トランプ氏は17日夜、「明朝、ウクライナでの戦争についてプーチン大統領と話をする。最終合意の多くの要素で合意しているが、やるべきこともたくさん残っている」とソーシャルメディアに投稿した。
16日夜には大統領専用機で記者団に対し、「特定の資産の分割」方法を両者が既に話し合っており、その中には発電所も含まれると語った。これはウクライナ南部ザポリージャ州でロシアが占拠する原子力発電所を指している。
「われわれは発電所について協議する。それは大きな問題だが、ウクライナとロシアとの間で、その多くが既に十分議論されたと思う」とトランプ氏は述べた。
これらを考え併せると、ウクライナが関与しようとしまいと、多くの決定が既に行われた可能性がうかがえる。
関連記事:トランプ氏、プーチン氏と18日に協議-ロシア側も会談確認
Over 10,000 Ukrainian soldiers in the Kursk region risk being surrounded
Sources: Institute for the Study of War and AEI’s Critical Threats Project; OpenStreetMap
ホワイトハウスは、クレムリン(ロシア大統領府)との関係再構築を目指しており、2期目のトランプ政権発足後で2回目となるプーチン氏との電話会談では、より幅広い商業的利益や両首脳の直接会談の可能性も話し合われることになりそうだ。
先週の米国との高官協議でウクライナが受け入れた30日間停戦の提案にプーチン大統領は公に同意していないが、トランプ氏と政権チームは、1200マイル(約1930キロ)に及ぶ国境沿いの戦闘を終わらせる停戦の実現に楽観的だ。
ホワイトハウス復帰前の選挙戦で、短期間で戦争を終わらせると公約してきたトランプ氏が、ウクライナの同意なしにロシアに譲歩案を提示し、ウクライナのゼレンスキー大統領を危険な立場に追い込むのではないかと、これまでの状況から判断し、トランプ氏に批判的な人々は不安を募らせる。
ランド研究所のロシア・軍事問題の政策研究員アン・マリー・デイリー氏は「ウクライナにとって最悪のシナリオは、トランプ氏がプーチン大統領に説得される形で、ロシア側の主張が正当かつ容認できると納得し、ウクライナに受け入れを迫る圧力をかけることだろう」と分析した。
デイリー氏は「第一の目標は戦闘を終わらせることだけであり、和平実現のためウクライナに領土や経済・産業施設へのアクセスを一部断念するよう働き掛けることは大いにあり得ると思う」と見解を示した。
関連記事:トランプ政権、クリミアをロシア領と認めることを検討-セマフォー
ウクライナと欧州の同盟国は、トランプ政権がロシア側の条件での合意を強要する結果、ウクライナが弱体化し、将来的にロシアに対し脆弱(ぜいじゃく)になるのではないかと危惧している。
欧州の指導者らは、トランプ氏がプーチン氏との1対1のやりとりで、ウクライナと欧州の安全保障を無力化しかねない譲歩を行わないか不安を隠さない。
ウクライナでのロシア軍占領地の確保、ウクライナ軍の規模の制限、西側諸国からの軍事支援の抑制などをロシアは要求。さらにウクライナが北大西洋条約機構(NATO)への最終的な加盟を望むことはレッドライン(超えてはならない一線)との立場を示唆し、トランプ大統領もそれを支持している。そのような要求をどのように合意に盛り込めるか見通せない。
原題:Trump Talk of Dividing Assets Prompts Concern Before Putin Call(抜粋)